カテゴリー「その他」の記事

2019年1月 1日 (火)

先日書いた記事の解釈について

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

もう直ぐ本が出版され、売れ行きが非常に気になって毎日ランキングを見るようになりました。せっかく作ったのに売れ残りがあると良くないですので。
さて、先日の記事についてです。
COPDと心不全を基礎疾患に持つ患者が誤嚥性肺炎を疑われ入院となった症例ですが、経過も良く初期治療の評価を行い抗菌薬の処方内容について検討を行うというものです。
培養結果としてPantoea agglomeransが検出されていましたが、このPantoeaはもともとEnterobacterに属した菌で医療関連感染(特にデバイス関連の感染)を起こすことがあります。3世代セフェム耐性は稀です。肺炎は比較的まれですので、この菌で肺炎を起こす患者かどうか考えることが大事です。全く起こさないわけではないですが、元々自宅で過ごしていた患者なので肺炎の原因菌としてが下位にきます。ここを念頭に置いてグラム染色と合わせて考えます。
入院当日の喀痰グラム染色はどうでしょうか?
まずは弱拡大(100倍)ですが、この倍率では材料評価を行うと同時に、どのようなものが混在しているか確認をします。
20181214_183616_2
材料評価はGeckler分類で行いますが、この材料はGrade2になります。
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四角い上皮が扁平上皮で1視野に25個以上あり、扁平上皮と比べて半分以下の丸みを帯びたものが白血球で10〜25個になるからです。
つまり材料として良くありません。これは採取条件が悪い(唾液が大量に混入してしまった)のか、元々膿性痰がでない患者なのかの確認が必要です。そのため、入院時の喀痰がどういったものなのかの確認が必要です。もしくは検査室では洗浄喀痰をしっかりとグラム染色に使っているのか確認も大切です。
確認したところ洗浄喀痰ではないことが判明しました。また、画像の中央部には抜けて見える物質があります。これは脂肪やグリコーゲンでありご縁を示唆する物質の一つです。つまり唾液を多く含んだ検体であることがわかります。
次に強拡大(1000倍)です。
20181214_184156_2
多核白血球がほとんどなく、Viridans group Streptococcusと思われる口腔内常在菌が多数ある。
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多核白血球も散見されるがpolymicrobial patternもなく誤嚥性肺炎を伺う所見が無い。ただし白血球は多く認めるので炎症所見として捉えることはできます。
グラム染色所見では上記の解釈になります。培養でも優位な菌はなく、肺炎治療のために抗菌薬継続が必要なのか疑問が残ります。合わせて心不全の状態も良くなりつつある。心不全による肺水腫では心不全細胞も出現することがありますが、今回は認めませんでしたので慢性的に心不全がひどい状態ではないと考えることもできます。
以上の結果よりTAZ/PIPCはどうするのかですが
①緑膿菌などの広域抗菌薬耐性菌の検出は無いこと。
②誤嚥性肺炎と思われたが心不全が原因の呼吸不全の可能性が高い
③口腔内常在菌が多量に混在しているだけで痰ではなかった可能性あり。もしくは喀痰は主訴ではなかった。

これらを考慮して抗菌薬は終了するか、de-escalationを行いSBT/ABPCへと変更して、しばらく経過を見ていくことになると思います。どちらにしても呼吸器症状の休息な改善が行われていれば現在の治療方針を継続することになるのですが、抗菌薬適正化に向けてグラム染色を駆使することはAMR対策として重要と考えます。

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2018年12月14日 (金)

グラム染色はどこまで使えるのか?

師走ですね。

4月に新入職した皆さんは、もうグラム染色は自由にできますか?
一体、グラム染色なんて菌が見えてりゃ抗生剤は広域で始めたら良いんだろう?って安易に思っていませんか?
グラム染色は菌や背景から考える病態まで行える優れものです。また、菌が見えても感染症じゃないよなって思う場合は抗菌薬を積極的に使わないで良い場面はあると思います。
こういうのはどうでしょうか?
心不全、COPDを既往に持つ90代の男性。5日前から全身倦怠感を自覚していたが徐々に悪化。本日、呼吸困難感を主訴に救急搬送された。喀痰の貯留を認め、胸部Xpで両下肺野の浸潤影、両側胸水を認め、同部位にwheezeも認めた為、肺炎と診断され入院となった。
両側下肺野は誤嚥性肺炎を疑う。
両側胸水は心陰影拡大あり、BNP高値もあり心不全性の可能性。
医療曝露も多いのでTAZ/PIPCで加療開始となった。
4日後の状態は利尿も進み、心不全については経過良好。 喀痰培養からPantoea agglomerans(1+)、Nomal flora(3+)。
解熱も測れ、呼吸症状も改善を認めた。
もともと、誤嚥性肺炎を疑っていたが経過から心不全に伴う両側胸水と無気肺の疑いが強くなったためde-escalationを図ることとなった。
入院時の喀痰グラム染色は以下のような内容、あなたならこのスメアをどう解釈しますか?そして抗菌薬はどうしましょう?そもそも必要でしょうか?
Dsc_2798 100倍
Dsc_2802 1000倍
Dsc_2801 1000倍
What's your diagnosis?

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2018年12月10日 (月)

ブログを書籍化します

更新がほとんどできませんですいません。

長年の時を超えてブログが書籍化します。
まずは喀痰だけにフォーカスを絞っています。
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書籍は非常にコンパクトで、白衣のポケットにもすっぽり、ハンドバックにもすっぽり、満員電車で読んでも迷惑にならない、乗り換え時間を気にしなくても大丈夫
などなど。 1単元が5分程度で読めると思います。
一番の魅力は菌種推定とその菌が見えた時にどう考えるのか?病態把握まで含まれた内容です。
誤嚥性肺炎かどうかわかるのか?
肺膿瘍と誤嚥性肺炎は像が違うのか?
貪食って結局どうよ?
などなど。11年間の中で呼吸器感染症を中心にまとめています。
少し高めですが、電子版もついてこの値段なのでお得だと思います。
年末のボーナスで1冊どうですか?
発売は1月23日を予定しています。
翌週の微生物学会でも販売があるようですのでよろしくお願いします。
既にサインの申し込みもあります。学会場で見かけたら声を掛けてください。

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2018年11月 6日 (火)

看護師がAMRにどう関係しているのか その1;手指衛生

久々の更新です。

先日、地元で看護師向けに耐性菌と抗菌薬適正使用について話しする機会を頂きました。
抗菌薬適正使用は今年から加算が取れるなど診療報酬も含めて医療についての大きな目標の一つになっています。院内外の活動やセミナー、学会などは薬剤師や医師がこのASPについて話題に取り上げることが多いようです。
AMR、耐性菌の管理については、元々看護師の接触対策や微生物検査技師の検出方法が中心の話題であったのですが、最近では発生させないために抗菌薬の処方コントロールがポイントとなってきたし、現場において、耐性菌=消毒薬しか話題のなかった薬剤師にとっては、これほど重要なポジションなので薬剤師のないAMRは語れなくなってきたことも影響していると思います。昔から関わりを持っている方々も多かったのですが、マイノリティーなのか話題に上がることが少なかったように思います。
1 組織作りが大事です
さて、先日お話しした内容ですが、ポイントは何個かあります。
1.手指衛生を徹底することで耐性菌を広げない
2.適切な感染予防策の実施で耐性菌を広げない
3.適切な材料採取で無駄な抗菌薬を減らす
4.ワクチンプログラムを組んで感染症を減らす
5.バイタルサインをきっちりと記録する(診断や治療経過に必要)
6.デバイス管理やサーベイランスを行う(医療関連感染を減らす)
別に、処方がどうのこうの、投与量がどうのこうのは次の段階だと思います。
何回か分けて話していこうと思います。
その1:手指衛生の推進
永遠のテーマだと思う手洗いですが、耐性菌を少なくする活動の中には接触感染予防があります。耐性菌をいち早く見つけ、それを適切に管理をするより、耐性菌がわかる前にも予防を行うことが重要です。
6 やっぱり5つのタイミングが大事
ある実験で細菌の伝播がどこまで拡がるのか実験をしたことがあります。手に大腸菌を塗って、1人に握手をする、その握手された人はまた別の人に握手をする、それを繰り返し行っていくとどうなるのか?という実験です。写真にもありますが、8人目まででもべったりと菌が付着していきます。
2 驚異の伝播力(大腸菌)
まあ、こんなのは実験レベルだからと思うでしょうが、機材や器具に付着した細菌であればどうでしょうか?細菌が目に見えるほど大きければ”ばっちい”とわかりますが、相手は目に見えないので、適当にしていると直ぐに伝播してしまいます。
4 環境中に細菌は結構生きる。アシネトバクターなんかは引っ付いたら中々除去できないので、出てほしくないですね。
 手指衛生を行うことで減ってきたのがMRSAや多剤耐性緑膿菌の発生です。接触予防策を強化することで院内の感染対策は上達していきます。それに応じて他の感染対策も向上し耐性菌が減ることが分かっています。感染管理加算ができてからあMRSAの数は減ってきています。これは、耐性菌の保菌圧をコントロールすることに成功しているためで、今更ながらMRSAが減らない、多剤耐性緑膿菌が良く出るという医療機関は感染対策のシステムがどこかおかしいというメッセージが含まれます。自分の施設は大丈夫かどうかもう一度見直しませんか。
5 保菌圧の高いB病院の方がアウトブレイクのリスクが高いです。
手洗いは永遠のテーマだと言いますが、まさにその通りです。ある研究ですが、トイレをした後にどのくらい手洗いをするか?という結果があります。なんと、15%も手を洗わないという衝撃の結果でした。なんせ、う○こをした後でも5%も手を洗わないのは、運が落ちるからなのでしょうか?
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さらに衝撃なのが、男性が洋式トイレで小便をする時に狙う点によって飛沫の数が異なるというものです。男性諸君、小便は座ってしますか?立ってしますか?小便は手前もしくは両端を狙うのがオススメです。
8手前なんか、技術が高すぎて無理だと思う人は、両側に逸らしましょう。
そもそも、手洗いが習慣付いている人は85%しか無いんだから、手洗いの遵守率って85%以上上がらないんじゃ無いかと思います。遵守率は高いのが良いですが、一番大事なのが高い水準を維持すること、さらに欲を言えば遵守率をどう上げるか、下がればどう是正するかです。そういう意味で手洗いの遵守率を調べるのは良いことですし、アルコール擦式消毒薬の使用量を調べるのは良いと思います。この結果をモニタリングして、耐性菌の発生率が減ったかどうか比較することは簡単な成果目標になると思います。
我々はこういう相手(患者や医療従事者)に、手洗い手洗いと言っているわけで、何回も何回も言うことは本当に大切なんだと思います。
ESBL産生菌は外来で多く分離されます。何の既往歴もない子供からも出るくらいだし、感染対策をいくらしても減らない細菌の制御は抗菌薬の使用量を減らす以外ないんでしょうね。
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2018年5月16日 (水)

がん患者の微生物検査とは

患者情報をどう微生物検査に活かすのか?という命題は昔から言われていますが、あまり具体的な話はありません。理由の一つとして検体種別で分類し検査内容を決めている、分離された菌はどれを取るか決めているなど検査側に変化がないからである。

近年のがん治療は、肺がんを例に取ると「切らずに治す」というスタイルが主流になりつつあります。がん患者には感染症がつきものですが、がん患者だからといって特別な菌ばかりではありません。
治療する上で、細胞性免疫が下がる病態であれば、結核菌やノカルジア、リステリア菌が分離されやすくなり、液性免疫が下がる病態であれば肺炎球菌が分離されやすくなります。がん患者は、治療によるバリア破綻が増えることもあり、コモンな菌も侵入しやすい状況があります。つまり、ノカルジアやリステリア菌だけでなく、肺炎球菌や大腸菌、クレブシエラなども分離する機会が増えます。
そうすると抗生剤を投与する機会が増えるので、耐性菌が出現しやすい環境ができます。耐性菌といってもESBLやCREといった獲得耐性だけでなく、腸球菌やエンテロバクターなどの自然耐性を持つ菌が増えます。
写真は腸球菌ですが、腸球菌はもともとセフェム耐性ですが、ペニシリンが第一選択になると参考書には書かれています。セフェムが効かなくて、ペニシリンが効くのは細胞壁の構成がStreptococcusと異なるからです。
また、ペニシリンが効くのは、腸球菌の中でも分離頻度が一番高いE. faecalisのことであり、2番めに高いE. faeciumはペニシリン耐性のことが多いですため、腸球菌と言ってしまうと、「あれ、腸球菌なのにペニシリン耐性じゃん」とい結果が待っています。
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がんでENBDの閉塞を繰り返す患者の胆汁。

E. faeciumはE. faecalisより少し丸みのある短連鎖が特徴です。
これが微生物検査のアウトプットをどのように考えるかです。
インプットでがん患者の情報を得る、がん患者がどのような菌がでてきやすい。
そのためにベストの結果をだせるように微生物検査は頑張る。そういう微生物検査にしたいと思います。
来週の大臨技ではそのような話をしたいと思いますので宜しくお願いします。

http://www.osaka-amt.or.jp/cgi-bin/sche/sche35.cgi?cm=1

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2018年5月15日 (火)

【ご案内】第30回臨床微生物迅速診断研究会総会開催のお知らせ

グラム染色とググったらトップに出てきた、本ブログですが今や2ページ目になってしまいました。管理人の私は4月に異動となり別の病院で働き始めました。

いや、異動すると3ヶ月は落ち着かないよと言われますが、周囲の人は変わり、物品を購入したり、あらゆる申請など様式も異なるので、今までのようにいきませんね。
とは言え、グラム染色のお話は続けていきますので宜しくお願いします。
さて、6月に第30回臨床微生物迅速診断研究会総会が天理医療技術大学の小松先生が総会長で、奈良県の天理市で開催されます。
今回は感染症の診断や診断検査とその向こう側に拘った内容になっています。私もグラム染色のお話をしますので宜しくお願いします。
第 30 回臨床微生物迅速診断研究会総会開催のお知らせ
テーマ「迅速診断を再考する」
第 30 回「臨床微生物迅速診断研究会」総会を下記の予定で開催致しますので、ご案内申し上げます。
会 期:2018 年 6 月 30 日(土)9:00〜17:30
会 場:天理医療大学(〒632-0018 奈良県天理市別所町 80-1)
【会場へのアクセス方法】天理総合駅(JR・近鉄)より徒歩 15 分(約 1km)
総会長:小松 方(天理医療大学 医療学部 臨床検査学科)
参加費:3,000 円(意見交換会 3,000 円)
内 容:
特別講演 「AST 活動に貢献する迅速診断とは」
金光敬二 先生(福島県立医科大学 感染制御学講座)
招請講演 「感染症診療における微生物検査の活用〜臨床医から検査室への要望〜」
笠原 敬 先生(奈良県立医科大学 感染症センター)
教育講演 「第一回 AMR 対策普及啓発活動表彰:グラム染色と感染症診療の活用」
前田雅子 先生(まえだ耳鼻咽喉科クリニック)
ワークショップ「臨床微生物学的検査におけるインプット・アウトプット工程を再考する」
1.塗抹検査:山本 剛 先生(神戸市立医療センター中央市民病院 臨床検査技術部)
2.培養同定検査:口広智一 先生(公立那賀病院 臨床検査科)
3.薬剤感受性検査:中村彰宏 (天理医療大学 医療学部 臨床検査学科)
4.遺伝子検査:木村圭吾 先生(大阪大学医学部附属病院 臨床検査部)
ランチョンセミナー「臨床微生物学検査の随想 忘れてはいけないもの〜人、絆、心〜」
山中喜代治 先生(エスアールエル学術顧問/前・大手前病院)
総会長講演「迅速診断を再考する」
小松 方 (天理医療大学 医療学部 臨床検査学科)
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2018年3月23日 (金)

培地物語(血液寒天培地 後編)  溶血反応

しばらく培地の話が続きます。

前回は 培地物語(血液寒天培地 前編)  血液は何でも良いのか?について書きました。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-5443.html

血液寒天培地 私の後編は血液寒天培地の拘りです。
【そもそも、何で血液寒天培地ができたのか?】
寒天培地はロベルト・コッホが発案した(と言われる)培地ですが、最初はジャガイモ培地( Löwenstein–Jensen medium )で実施していたようですが、さすがに発育は今より悪かったと思います。

血液寒天培地の溶血性を調べたのはBrownがかなり研究(1919年)していています。かなりのボリュームで読むことができませんが興味があれば読んでください。
引用文献を見ていると食品から分離される細菌や咽頭炎から分離される菌を中心でS. anginosuやS. pyogenes、Staphylococcusの溶血性の研究が多いようです。今もそうですが、血液寒天培地に期待されているのは溶血性だったようです。さらに、血液寒天培地の歴史を調べていると結核菌培地として検討した結果が多く出てきます。L-J培地と血液寒天培地との比較では血液寒天培地の方が早く生えましたという論文がいくつか出てきます。
1J Bacterial.1953,Oct.66,448-452.

血液寒天培地に結核菌が生えるのか?と思われますが普通に生えてきます。感染性も考えたら危ないし、今は液体培地もあるのでやらないと思いますが生えます。

Photo_8血液寒天培地に生える結核菌

【溶血へのこだわり】
溶血性が見れるのが血液寒天培地に課せられた最大のミッションです。溶血と言っても緑色になるα溶血、コロニー周囲が抜けて見えるβ溶血がありますが、β溶血が血液寒天培地に求められる条件と思います。β溶血でも溶血性が強いS. aureusやS. pyogenes、S. dysgalactiae subsp. equilimilis(SDSE)から、S. agalactiaeやL. monocytogenesなどのような溶血が弱いもの、S. anginosusのようなβ溶血するがコロニーが小さいものまであります。

皆さんはどの溶血性を重視して血液寒天を選びますか?

Photo_9 α溶血の代表格。肺炎球菌。

Ggsmrsa_2 β溶血の代表格。S. aureus(大きい方)とSDSE(小さい方)。

Gbs 溶連菌でも弱いβ溶血のS. agalactiae

【溶血性と酸素】
我々は通常大気の条件で溶血性を見ますが、ストレプトリジン(厳密にはストレプトリジンO)は酸素条件で溶血性が失われるので、本来の溶血性を確認するためには嫌気条件で確認をします。

しかし、嫌気条件になれば生えるものも生えないので、検査室で炭酸ガス濃度をコントロールすることで溶血性を確認しやすくしています。昔はロウソク瓶培養をしていたわけですが、恐らく炭酸ガス濃度は10%程度になっていたかと思います。
炭酸ガス濃度は低くて5%は必要ですが、孵卵器のドアは開け締めが多いので、当院は7%濃度で対応しています。

【CAMP試験】

昔、ビリーザブートキャンプというのがありましたが、皆さんはしましたか?
かなりのカロリーを消費する運動だと思います。
さて、CAMPはβリジンという毒素が作用する際に、cAMPを産生する菌であれば溶血性が増強する相乗作用を確認するための検査です。
培養検査をしているとたまにCAMPが見られることがあり感動します。

Gbss_aureus_camp 培地上に発育したGBSとS. aureus。CAMPテスト陽性になっている。

次回は寒天物語(寒天培地の発明と内助の功 前編)です。

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2018年3月16日 (金)

培地物語(血液寒天培地 前編)  血液は何でも良いのか?

個人的に培地に拘りを持ちながら仕事をしています。

・培地には寒天が含まれますが、その辺のお店で売っている寒天とは一味も二味も違います。
・血液寒天にはヒツジ血液を使うことが多いですが、六甲山牧場のヒツジから採取された血液では菌の発育は良くありません。
・グラム陰性桿菌の分離培地ですが、関西はマッコンキー寒天培地、関東はBTB乳糖加寒天培地の流通が多いと言われます。
余談ですが、BTB白糖培地というものがあるので、BTB培地もしくはBTB寒天培地というのは厳密には誤りで、ドリガルスキー変法とか加えるのが良いです。

E_aerogenes 関西に多いマッコンキー寒天培地(E. aerogenes)
E_cloacae 関東に多いBTB乳糖加寒天培地(ドリガルスキー変法培地)(E. aerogenes)
要するに寒天培地は、患者にベストなものを使用してこその寒天培地であり、価格も大切ですが成分や製造方法に加えて、寒天や血液など基礎培地の組成が大切です。
例えば、上述しましたが血液寒天の血液にはヒツジの血液を多く用います。寒天培地用の血液にはヒツジの他にはウマやウサギを使いますが、ウサギは少量しか採取できないこと、心臓から直接血液採取を行い培地にすることなど手間が掛かります。ウマは飼育代が高いので培地も高いのでしょうね。


2

有名なものに、Haemophilusの発育性がありますが、Haemophilusは栄養要求も厳しい細菌で、一般的にはヒツジ血液寒天には生えません。ヒツジは生えませんが、ウマやウサギの血液には発育します。そのため、ヒツジ血液寒天を使うっている施設では、Haemophilusの検出目的に、血液を加温して変色させたチョコレート寒天培地を用いることになります。茶色なのは加温により溶血しヘモグロビンが変色するためで、溶血によりNADやヘミンといった産物が培地中に含まれるようになるためHaemophilusは発育します。チョコレートのような色ですが、カカオやチョコレートが入っているものではありません。

20170819_220259 去年の研修会で作ったチョコレートで作った培地。S. aureusっぽいです。

Haemophilusと同じく、Nutritionally variant streptococci(NVS)も通常血液寒天培地に生えないので、確認用にS.aureusを植えて、周囲に発育する様を確認します。周囲に生えるので衛星現象と言います。Haemophilusでも同様の現象が見られます。
2 NVSは真ん中にS. aureusを塗ると周囲に微小コロニーが発育します。

チョコレート寒天培地はHaemphilus以外では使わないのか?と思われるでしょうが、Neisseria gonorrhoaeやNeisseria meningitisはチョコレート寒天培地がキーになるので、材料ごとに使う培地を検査室で分けています。通常、泌尿器材料には用いないところも多いので、oral sexに起因するHaemophilusによる尿道炎や精巣上体炎の検出目的で尿を出しますが、目的菌を伝えないと永久に菌の検出はできなくなります。
20130820_1743472 20130820_174428

血液寒天培地とチョコレート寒天培地上の髄膜炎菌のコロニー。莢膜産生するのでキレイなムコイド様(光沢あり)になりますが、両者は微妙に違います。
同定が難しい菌種(質量分析装置でも間違えます)であり、結果を急ぐ菌になるので是非コロニーを覚えてください。
さて、ヒツジ血液を用いる理由は安くて大量に採取できるからですが、日本で使用しているヒツジ血液寒天培地の多くは、オーストラリアやニュージーランドで血液寒天培地専用の牧場で飼われたヒツジから採取され輸入してきます。日本にもヒツジがいると思いますが、六甲山牧場牧場のような栄養要求が高い食餌をしているヒツジの場合は血液中のコレステロール値が高いため発育が悪くなり、微生物検査には向きません。
専用の牧場で飼われたヒツジであるがこそ、安定した血液が供給されるわけです。そのため食餌の影響を大きく受けるので、日本では冬に輸入する血液は発育性が良く、夏に輸入する血液は発育性が落ちることがあります。南半球は日本と逆の気候なので、日本が冬でも向こうは夏になるので、牧草の状態も良く元気な血液が多く輸入されています。枯れ草を多く食べている日本が夏のヒツジ血液は少し元気が無いようです。

血液の質が少し落ちた場合は、培地の製法をコントロールして発育性が落ちないようにメーカーでは対応してくれています。ユーザーの皆様が不自由が無いようにメーカーで製品管理をしてくれているので、冷蔵輸送されますが1枚1枚温かみを感じて欲しいと思います。
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Photo B社の拘り抜いた主な血液寒天培地

血液寒天培地の基礎培地にペプトンを使いますが、コストの安いトリプトソイ(マメ科のペプトン)なのか、本来のペプトンであるブレインハートインフュージョン(ウシ心臓浸出液由来のペプトン)で発育性やコロニーの色なども大きく違います。ミューラーヒントン血液培地はブレインハートインフュージョンが基礎培地になりますが、たまに間違ってミューラーヒントン血液寒天培地に塗ってしまうと翌日のコロニーは大きく違うことになっています。

そのため、血液寒天培地はメーカー間差があり、発育しないで良い菌が発育するようになっていたり、逆に発育できなかったりするので、適当には決めてはいけません。何を目的にして、どの培地にするのかは微生物検査技師の手腕に関わってきます。
次回は寒天培地がどうしてできたかの話をします。

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2018年3月14日 (水)

第30回日本臨床微生物学会総会・学術集会のお知らせ

長らく更新が出来ていません。もはや月刊誌となっております。

FB版はショートのコメントを多くしていますので、また見てください。

https://www.facebook.com/GramStainGym/

時たま、くだらないポスターなども作成していますのでご覧ください。

手洗いの励行
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抗菌薬を絞るためにグラム染色をしましょう
Photo_2

ところで、総会の話ですが、
来年の2月1日(金)~3日(日)に、ヒルトン東京お台場とホテル日航東京台場で第30回日本臨床微生物学会総会・学術集会が東邦大学医学部微生物・感染症学講座の舘田一博教授が総会長で開催されます。

学会ホームページが出来ましたので皆様にお知らせします。

https://www.societyinfo.jp/jscm2019/

スマホ版もあるようですね。

今回のテーマは「求められる責任とプライド -日本臨床微生物学会30年の歩みの中で-」としています。

今回で第30回になり、30年前の学会設立当時を知っている方が少なくなっている中で、もう一度あの時の思いを振り返り次の30年のさらなる発展に繋げたいという思いがテーマです。

特別講演としては、米国インディアナ大学のKaren Bush先生をお招きして、「β-lactamase: Past, Present and Future(仮題)」としてご講演をいただく予定です。あのβ-ラクタマーゼの研究で有名な先生です。

他にも
・「30周年特別企画 “日本臨床微生物学会 30年の思い、30年への期待」
・「地域対抗一般演題賞争奪戦」
・「臨床微生物学アトラス 臨床微生物学の軌跡/奇跡 ―真実を見逃さない目・経験―」をCD版として配布

など企画が目白押しです。

会員の方は勿論のこと、非会員の方にも魅力のある企画となると思いますのでご参加ください。

私も色々とお手伝いさせて頂く予定ですので、どうぞ宜しくお願いします。

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2018年2月14日 (水)

AMR対策におけるグラム染色の位置づけ

先日の学会は皆様お疲れ様でした。

3日間のプログラムは盛り沢山であっと言う間に終わりましたね。
グラム染色カンファレンスはプラチナ化したチケットを獲得した参加者が大勢参加してくれました。いつも準備してくれている東京・神奈川の実務委員の方ありがとうございました。来年は100名以上入るお店を予定しております。宜しくお願いします。

20180210_000928 今年のTシャツはAspergillusの菌糸です。

学会は空き時間を利用して色々と聞いていましたが、やはり話題に上るのは抗菌薬適正使用チームの加算要件が公開された影響もあり、グラム染色をどのように使うのか?とい話題が多かったように思います。
個人的に8地区ワークショップでグラム染色とAMR対策についてポスター掲示させて頂きました。

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近畿地区のポスターはここからダウンロード可能です。
グラム染色は微生物を確認して、診断を行い、起炎微生物であればそれに見合った抗生剤投与を行うというのが標準的な使い方ですが、別に微生物が見えなくても、それが診断に寄与することも大きな役割の一つです。

例えば、喀痰検査は肺に異常陰影があったり、呼吸器症状とともに気道分泌物が出るので色々な疾患の鑑別のため検査を行います。当然、間質性肺炎や肺水腫といった感染症以外の鑑別診断のため提出されることがあります。

その場合は質の悪い喀痰であれば、過剰な抗生剤投与がなされる訳ですので、真の細菌性肺炎より良質な喀痰提出が求められる訳です。

ただし、微生物の確認が無いのは

①見えない微生物は存在しないか(レジオネラ肺炎やマイコプラズマ肺炎など)
②見えるはずが見えなくなったのか(抗生剤の投与歴があり消失した)
③感染症以外なので見える筈がないのか(肺水腫、間質性肺炎、心不全、癌性リンパ管症など)

ということを考えていかないといけません。
感染症以外であれば早期に抗生剤投与は中止できるし、そもそも初期治療薬が不要かもしれません。

微生物検査ばかりしていると、喀痰が出てくるとあたかも起炎微生物を検出しないといけないのか?という錯覚に陥ることがありますが、実はそうで無いことが混じります。
医師が何を期待して喀痰検査を出すのか?考えて報告コメントに残すことも今後必要かもしれません。

いくつか、聞いていてそう思いました。

そのためには、胸部X線を読む力や身体所見を見る力も必要です。医師に教えて貰い、それをきっかけに自ら学び、喀痰グラム染色に必要な情報を加えていってほしいですね。

写真は菌が見えない特集です。

4①心不全

3 ②癌性リンパ管症

Photo ③レジオネラ肺炎

2 ④マイコプラズマ肺炎

4_2 ⑤抗生剤投与後で菌消失

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