久々の更新です。
先日、地元で看護師向けに耐性菌と抗菌薬適正使用について話しする機会を頂きました。
抗菌薬適正使用は今年から加算が取れるなど診療報酬も含めて医療についての大きな目標の一つになっています。院内外の活動やセミナー、学会などは薬剤師や医師がこのASPについて話題に取り上げることが多いようです。
AMR、耐性菌の管理については、元々看護師の接触対策や微生物検査技師の検出方法が中心の話題であったのですが、最近では発生させないために抗菌薬の処方コントロールがポイントとなってきたし、現場において、耐性菌=消毒薬しか話題のなかった薬剤師にとっては、これほど重要なポジションなので薬剤師のないAMRは語れなくなってきたことも影響していると思います。昔から関わりを持っている方々も多かったのですが、マイノリティーなのか話題に上がることが少なかったように思います。
組織作りが大事です
さて、先日お話しした内容ですが、ポイントは何個かあります。
1.手指衛生を徹底することで耐性菌を広げない
2.適切な感染予防策の実施で耐性菌を広げない
3.適切な材料採取で無駄な抗菌薬を減らす
4.ワクチンプログラムを組んで感染症を減らす
5.バイタルサインをきっちりと記録する(診断や治療経過に必要)
6.デバイス管理やサーベイランスを行う(医療関連感染を減らす)
別に、処方がどうのこうの、投与量がどうのこうのは次の段階だと思います。
何回か分けて話していこうと思います。
その1:手指衛生の推進
永遠のテーマだと思う手洗いですが、耐性菌を少なくする活動の中には接触感染予防があります。耐性菌をいち早く見つけ、それを適切に管理をするより、耐性菌がわかる前にも予防を行うことが重要です。
やっぱり5つのタイミングが大事
ある実験で細菌の伝播がどこまで拡がるのか実験をしたことがあります。手に大腸菌を塗って、1人に握手をする、その握手された人はまた別の人に握手をする、それを繰り返し行っていくとどうなるのか?という実験です。写真にもありますが、8人目まででもべったりと菌が付着していきます。
驚異の伝播力(大腸菌)
まあ、こんなのは実験レベルだからと思うでしょうが、機材や器具に付着した細菌であればどうでしょうか?細菌が目に見えるほど大きければ”ばっちい”とわかりますが、相手は目に見えないので、適当にしていると直ぐに伝播してしまいます。
環境中に細菌は結構生きる。アシネトバクターなんかは引っ付いたら中々除去できないので、出てほしくないですね。
手指衛生を行うことで減ってきたのがMRSAや多剤耐性緑膿菌の発生です。接触予防策を強化することで院内の感染対策は上達していきます。それに応じて他の感染対策も向上し耐性菌が減ることが分かっています。感染管理加算ができてからあMRSAの数は減ってきています。これは、耐性菌の保菌圧をコントロールすることに成功しているためで、今更ながらMRSAが減らない、多剤耐性緑膿菌が良く出るという医療機関は感染対策のシステムがどこかおかしいというメッセージが含まれます。自分の施設は大丈夫かどうかもう一度見直しませんか。
保菌圧の高いB病院の方がアウトブレイクのリスクが高いです。
手洗いは永遠のテーマだと言いますが、まさにその通りです。ある研究ですが、トイレをした後にどのくらい手洗いをするか?という結果があります。なんと、15%も手を洗わないという衝撃の結果でした。なんせ、う○こをした後でも5%も手を洗わないのは、運が落ちるからなのでしょうか?
さらに衝撃なのが、男性が洋式トイレで小便をする時に狙う点によって飛沫の数が異なるというものです。男性諸君、小便は座ってしますか?立ってしますか?小便は手前もしくは両端を狙うのがオススメです。
手前なんか、技術が高すぎて無理だと思う人は、両側に逸らしましょう。
そもそも、手洗いが習慣付いている人は85%しか無いんだから、手洗いの遵守率って85%以上上がらないんじゃ無いかと思います。遵守率は高いのが良いですが、一番大事なのが高い水準を維持すること、さらに欲を言えば遵守率をどう上げるか、下がればどう是正するかです。そういう意味で手洗いの遵守率を調べるのは良いことですし、アルコール擦式消毒薬の使用量を調べるのは良いと思います。この結果をモニタリングして、耐性菌の発生率が減ったかどうか比較することは簡単な成果目標になると思います。
我々はこういう相手(患者や医療従事者)に、手洗い手洗いと言っているわけで、何回も何回も言うことは本当に大切なんだと思います。
ESBL産生菌は外来で多く分離されます。何の既往歴もない子供からも出るくらいだし、感染対策をいくらしても減らない細菌の制御は抗菌薬の使用量を減らす以外ないんでしょうね。
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