カテゴリー「背景など病態把握」の記事

2017年4月18日 (火)

そうです、ただ見るだけでは無いんです

臨床検査技師養成校(指定校)の病院実習担当を毎年しております。臨床検査技師になるためには病院実習で単位の取得が必要で、医学科のように学校自前で病院を確保してない学校も多いこともあり、色々な学校から学生がやってきます。

学生の特色も様々で、

・都市部の国公立大は半分以上大学院に進むので、病院検査には殆ど興味を持たない学生が来ます。母校は1/4しか病院に行きません(とほほ)。活躍する範囲が拡がるのは良いことなんですがね。

・郊外の国公立大や私立大は病院検査に興味を持つ学生が多いです。

・短期大学や専門学校は病院検査に興味を持つ学生が多いです。
当院には幸い、微生物検査について学びたい学生が来るので、グラム染色のことや最新の薬剤耐性菌検査について教える機会が多いです。

学生のレポートを見ていると、グラム染色の重要性について書いていることがあります
・学校では菌を染めて見ることしか習わないが、染色像や形態を詰めて鏡検すると菌種推定ができて面白い。

・抗生剤の選択を希望する医師に重要な情報を、培養結果が出る前に伝えることができて、抗生剤の適正使用に繋げている。

・培養で検出される菌を予測して、培地の組み合わせを考えることで検査の合理化が図れる。

などなど。

確かに、学校では各検査内容についての教育が主体で、検査結果の組み立てについては殆どありません。ましてや、感染症治療に重要な抗生剤との繋ぎ合わせについては殆ど無く、自分の検査がどこでどのように使われているのか考える時間があまりないと思います。私も学生時代にはローマ字を書いて、細かい難しい名前の試験の何が大切か良く分からないなと思っていました。

先日のレポートでは、「グラム染色はただ単に菌を形態付けて報告するだけでは無く、治療薬の選択まで応用するために、菌を細かく分類して報告することに意義付けがある。検査結果についての臨床的意義付けをしっかり行い、医療に役に立つ検査結果の報告に努めたい。(要約)」と書いていました。良いこと書きますね。

そうです、ただ単に見るだけではないのです。

・菌種が推定できれば情報を伝える。

・材料が不適切なものであれば伝え、可能であれば再採取して貰う。

・抗生剤を分類して、起炎菌の場合は感受性率を参考に抗生剤についての情報も伝える。

グラム陽性球菌(1+)は肺炎球菌なのか?、腸球菌なのか?黄色ブドウ球菌なのか?これは診断を及び抗生剤の選択時には重要です。肺炎球菌はβラクタマーゼを出さないので阻害剤配合は不要ですし、腸球菌ならセフェムは耐性である、黄色ブドウ球菌であればMRSAかもしれない、などなど。

Photo 是非、推定して報告して欲しい喀痰の肺炎球菌(大葉性肺炎)

3 複数菌が見えるのも重要な情報です(肺膿瘍)

23 予期せぬ菌の場合は非常に有用です(肺ノカルジア症)

今年の医師国家試験でも肺炎球菌性肺炎時の抗生剤の選択と、溶連菌菌血症時のde-escalationについて出題があり、グラム染色も幅が広がっています。

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普段、何気なくしていることですが、学生にとっては大変刺激的な内容なのでしょう。
基本を忘れず、また応用例についても加えながら楽しく実習を続けさせたいと思います。
教員の方々も学生教育は非常に大切で、大変だと思いますが、1人でも良い臨床検査技師を世の中に送り出したいですね。

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2017年3月 1日 (水)

喀痰グラム染色を斬る その2 肺膿瘍とグラム染色像

既に月刊誌のようになっています。更新が大変遅くなり申し訳ありません。

さて、喀痰グラム染色を斬るシリーズの第二弾で、今回は肺膿瘍とグラム染色の話をします。

肺膿瘍も肺炎の診断同様に喀痰培養を行うことが診断には必要になります。
ただし、肺炎と肺膿瘍の違いについて理解しながらグラム染色所見を見ていく必要があるのですが、そんなこと教科書に載っていないし、学校や卒後教育でも教えてくれません。

そういった規格外の説明を今回させて頂きますので、「それはちゃうやろ」という方はどんどん意見をください。

【病気の説明】
①肺炎:本来は肺実質(肺胞)の炎症ですが、小葉間や気管支周囲の結合組織が炎症を起こしている状態を指します。

②肺膿瘍:肺実質が炎症で破壊され膿瘍形成を起こしている状態。多くが空洞形成を起こし中心部に膿が溜った状態である。

③膿胸:肺実質以外(主に胸腔内)で膿瘍形成を起こしている状態。

①~③とも呼吸器症状を呈するため喀痰が診断のために必要な検査になるが、②や③は嫌気性菌が多く絡むために嫌気培養を行う必要がある。

【肺膿瘍の成因】
肺膿瘍の成因はいくつかある。

①肺炎が長期化したり、壊死を伴う微生物(黄色ブドウ球菌など)による感染することで起こる。

②慢性の誤嚥性肺炎、気管支拡張症があり壊死を伴う微生物がある場合や異物や気道分泌物による閉塞が起こる場合、肺がんなど悪性腫瘍に伴う閉塞が起こる場合(閉塞性肺炎)。

③肺嚢胞や肺がん、肺抗酸菌症に続発する病巣への重感染の場合。

④消化管や口腔などに原病巣が存在し、そこから血行播種し、肺に膿瘍形成を起こす場合。

Klebsiella、S. aureusのように嫌気性菌で無くても、壊死を起こし感染する場合は単一菌で成立するが、肺膿瘍は口腔内細菌が関与した複数菌感染が多くなる、
嫌気性菌が繁殖する場合は、肺は通常酸素を交換する臓器のため酸素も多い臓器であるが、壊死や膿瘍形成により酸素需要が悪くなる場合は嫌気性菌が数的優位になったり、②については閉塞によりドレナージ機能が低下するために、菌が繁殖しやすい条件が整い膿瘍化が促進する。そのため通常の肺炎に比べて重症化し、難治性のことがある。

つまり、肺膿瘍の成因によって原因微生物も異なるのでグラム染色所見で確認する菌種も異なる。

例1)Klebsiellaの肝膿瘍後に肺膿瘍を起こすと喀痰グラム染色ではKlebsiellaが多く見える
3 喀痰グラム染色のKlebsiella pneumoniae

例2)誤嚥性肺炎に続発した肺膿瘍の場合は喀痰グラム染色所見では多菌種確認されることが多い
3_2 喀痰グラム染色の多菌種貪食(嫌気性菌含む)

例3)咽頭炎に続いて起こる肺膿瘍にはFusobacteriumがあり、喀痰グラム染色ではFusobacteriumが確認される

4 喀痰グラム染色のFusobacterium

つまり、喀痰が診断のために検査に出てくるが、喀痰は直接感染部位に行き採取していないし、出口は一つなので、どういう病態が起こっているのか情報が無ければ、喀痰グラム染色所見から推測するしかない。

【肺膿瘍の病理】
肺膿瘍内には好中球とマクロファージが混在し、フィブリンと炎症性変化を起こした周囲組織が混在する。特に好中球は新旧のものが存在し、核が明瞭なも(上記の例3)のから不明瞭がもの(上記の例1)まで混在するものがある。膿瘍が多くなると壊死物質や滲出液が増大し、空洞形成がある場合は内部に鏡面構造(ニボー)が確認できる。

【肺膿瘍のグラム染色所見】
肺炎と肺膿瘍のグラム染色像で区別できるか?という疑問がある。
肺膿瘍は肺炎より重篤な病態であるため、胸部画像で判断できない場合でも喀痰グラム染色像で区別が出来れば、それはそれとして良いに違いない。

こういうのは肺膿瘍の可能性があるので当院では肺膿瘍疑うとコメントすることある。

①フィブリン物質が多く見える(背景は赤みの強い像である)
②嫌気性菌(特にGPCならS. anginosus groupを想起させる小さい不染性菌、GNRならFusobacteriumを想起させる紡錘状の染色性の悪い桿菌)が多数あり、貪食像もある。
③複数菌の貪食が多く確認される。
④扁平上皮が殆ど見当たらない。

②③はand/or条件である。

2 ②の条件(S. anginosus group)

Photo ③の条件(複数菌の貪食あり)

最終的には肺膿瘍の成因や画像で疾病の分類をすることが前提であるが、肺の異常陰影の原因が肺膿瘍を疑うのであれば付加価値の高い情報であると思う。


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2017年1月25日 (水)

喀痰グラム染色を斬る その1

第28回臨床微生物学会総会・学術集会に参加された皆様お疲れ様でした。
最新の知見が一同に集まる学会ですので、そろそろ帰って聞いてきたことを実践に向けて動き出したのでは無いでしょうか。

学会では、ロビー活動でグラム染色論について色々な方に話をさせて頂きました。病態をどう捉えてグラム染色像をどう考えるのか。また、それを医師にどう報告するのか。

やはり、微生物検査技師ですので単純にグラム陽性球菌が見えましたでは無く、
グラム陽性球菌でクラスター形成が強く黄色ブドウ球菌を疑います。周囲には白血球も多く炎症の原因となっている可能性があります

というようにしたいものです。

Mssa5 組織からのS. aureus

喀痰グラム染色は本当に奥が深く、ボリュームが多いため色々な場所で話をさせて頂きますが時間切れで伝わらないことが多いので、少し書いていきます。

1.肺炎とは?

肺炎は肺の炎症を表した病態であり、症状や画像所見から臨床診断により行われます。大きく細菌性肺炎と非定型肺炎があり、細菌性肺炎の多くはグラム染色所見で確認ができます。また、肺炎は起きた場所により市中肺炎と院内肺炎とに分かれ、発生要因や微生物の種類も特徴があります。そのため、どこで発生した肺炎で、どういった微生物による感染を示唆するのかを想定しながらグラム染色のオーダーをする必要があります

Vapctrx2 緑膿菌の肺炎は院内肺炎に多いですが、稀に市中肺炎を起こします。

2.肺炎の類型分類と喀痰グラム染色

肺炎は肺胞腔に感染するものと、間質に感染するものがあります。肺胞腔に感染するものは大葉性肺炎のように葉単位の肺炎と、気管支走行に沿って起こる気管支肺炎があります。

大葉性肺炎の起炎菌は肺炎球菌が最も有名ですが、クレブシエラやレジオネラも大葉性肺炎を起こす菌の一つです。気管支肺炎が悪化して深部にまで進むと大葉性肺炎に見えることもあり、緑膿菌で大葉性肺炎を起こすこともあります。

肺胞腔に感染を起こした場合には腔内にフィブリンが充満し、コーン孔やランバート管を通じて炎症が波及し、フィブリン塊べっとりのスメアが確認できます。そのため、血液培養でも容易に検出されることになります。

2 フィブリン塊が増える肺炎球菌のグラム染色像

気管支肺炎はインフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌などが有名です。市中感染ではインフルエンザ菌が有名で、COPDではインフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリス、院内肺炎や気管支拡張症では緑膿菌、インフルエンザ罹患後や敗血症、慢性誤嚥に関連して黄色ブドウ球菌による肺炎が問題になります。

Photo インフルエンザ菌の場合は周囲は赤みが弱く菌が散在します。

気管支肺炎の場合は組織傷害の程度にもよりますが、通常はフィブリン形成は少なく、スリガラスのようなスメアが確認できます。

気管支は気管支壁が肺胞に比べて分厚いために大きな傷害が起きない限り、血液が混在した喀痰は出ないので、黄白色の膿性痰であることが多い。ただし、緑膿菌は長期間気管支壁に傷害を起こすためフィブリン形成が多くなり、黄色ブドウ球菌は壊死を伴うのでフィブリン形成が多くなることがあります。

Vapmssa 黄色ブドウ球菌の肺炎は背景が赤くなる

喀痰グラム染色を見る場合には、主治医からのコメントもそうですが、肺炎の類型や起きた場所、起炎菌、および背景の滲出物や白血球の多さなど類推しながら見始めると良いでしょう。出来れば、胸部X線像との照合や症状をカルテから読み取り、主治医の考えを取り込むと良いでしょう。

次回は肺膿瘍とグラム染色について取り上げます。

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2017年1月 3日 (火)

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

これはfacebookの焼き直しなのでご了承ください。

病院勤務の場合には、年末年始が唯一長期休暇を頂ける機会になります。そうは言っても患者には休日は無く、病院は当番制で診療を続けることになります。

検査室は日中も夜間休日体制となり、微生物検査が出せない施設も多いと思いますが、最近では土日祝日全て対応できる微生物検査室も増えてきましたが十分な体制が取れる状況ではありません。

グラム染色は検体管理加算の関係で昼夜を問わず出来る体制作りしなければなりません。きっと皆さんの病院も加算を申請している場合は救急部門でグラム染色が出来るようになっていると思います。

とは言っても微生物検査室が稼働していない場合は培養ができないので感染症診療においては不安材料が残ると思います。

特に肺炎については肺炎の機序や起炎菌も1患者毎に異なり、選択される抗生剤もその都度細かく検討しなければ良い診療を続けることができません。グラム染色はその不安を少しでも取り除くための大きなアイテムになるに違いありません。

年末年始のみならず1年365日グラム染色による感染症の初期診療を上手に行えるような診療体制を何処の施設でもできれば良いと思います。

今年も感染症ブログ:グラム染色道場とFBページ:グラム染色道場を宜しくお願いします。

写真はNHCAPの一例です。

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グラム染色解釈は以下のとおりです。
・多核白血球が優位に出現し、扁平上皮は少ない。
・グラム陽性菌から陰性菌まで多彩であり、それぞれの貪食像がある。
・確認できる菌のうちグラム陰性桿菌の菌量が多く、グラム陰性桿菌は大型でクレブシエラ、グラム陰性球桿菌はアシネトバクターを違う。

上記より、誤嚥がベースでありグラム陰性桿菌を十分カバーし得る抗生剤で、アシネトバクター属もカバー可能な抗生剤選択が妥当である。必要であれば嫌気性菌カバーも検討する。

患者は誤嚥性肺炎が重症化し呼吸状態が悪くなっています。
肺炎を疑い抗生剤の投与が開始します。さて、どの抗生剤を選択すれば良いのか?本当に悩みます。

グラム染色を見ると少しは起炎菌を絞ることができ、それに応じた抗生剤選択を検討する機会が持てます。胸部X線像では起炎菌は絞れません。やっぱり肺炎で喀痰が出る場合は積極的にグラム染色をしましょう。

今年も初染めをしました。1年間頑張っていきましょう。

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2016年12月 6日 (火)

中四国学会終わりました

先日、平成28年度日臨技中四国支部学会でお話する機会を頂きました。

高知は1年ぶり。前回は院内感染対策の話をさせて頂いたので、グラム染色の話をするのは久しぶりです。また、中四国支部では先月の始めに研修会をしたこともあり、グラム染色の話は沢山させて頂きました。
今回はダイジェストで中四国支部学会の内容をご紹介します。
古くて新しい検査として注目度の高いグラム染色は不適切な抗菌薬使用を出来る限り少なくしようという人は欠かすことのできない検査と思います。もうグラム染色無しでは怖くて抗菌薬を選べないという人も多いと思います。しかし、グラム染色なんて感度が鈍いし、感受性はわからないし、そもそも菌種推定なんかできやしないしと考えている人もあるかもしれませんが、髄膜炎の場合は感度がどうあればグラム染色所見は重宝する検査の一つです。


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このブログを始めたころは菌種推定なんかは危険だからしない方が良いという人も居ましたが、今はそういう時代ではありません。数々の迅速検査が出てきましたが、まだピンポイントに抗原が当たらないと検出できないものが多いのですが、グラム染色はそうではありません。抗原、つまり菌種が複数でも一度に確認ができるので、混合感染の場合は有用なことがあります。

また、白血球や滲出液の確認を通じて病態との繋ぎ合わせも出来るので、出てきた菌の臨床的意義について考えることができるのです。
一般的に細菌検査報告書は文字や数値の羅列が多く、書いていることを深読みしない限り内容が十分把握できません。いわば、「萌えない」のである。
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前述したようにグラム染色所見は菌と白血球、滲出液、細胞を通じてスライドガラス表面で病態を表現しいるので、顕微鏡越しに患者さんと会話をすることができます。これが「萌える」検査です。萌える報告書は内容を詳しく書いた方が良いですが、今の検査システムのインフラの影響も大きくそういうスペースは全くないのが現状です。なのでカルテに書くしかありません。カルテに書く場合は複数人が閲覧することもあり恥ずかしい文章は書けないし、皆が分かるような内容で無いといけません。報告書の例は以下の通りですが、書かなくても医師からグラム染色所見の問い合わせを貰った場合には少し病態と合わせて丁寧に話をすることが必要です。

1 染色所見
3喀痰で肺炎球菌が確認された場合の報告例

肺炎の場合は胸部X線を撮影し診療情報としますが、部位の特定はできるが菌種の推定は困難です。また、グラム染色は菌種推定はできますが、部位の特定は困難です。要は胸部X線所見とグラム染色所見の融合を図れば良いのですが、微生物検査技師には胸部X線所見の読影は困難なことがあります。では、病態との繋ぎ合わせができないのか? ではなく、繋げてあげれば良いわけです。

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例えば、肺炎の起炎菌は感染する細胞が異なります。そのため大葉性肺炎や気管支肺炎といった肺炎のパターンが異なります。大葉性肺炎は肺胞腔内に感染を起こし細胞の障害度が強く、フィブリンが多量に産生します。そのため、喀痰グラム染色所見は赤みが強いものが増えます。赤みが強い場合は組織の障害度との関連性があり、大葉性肺炎以外でも組織破壊が強い壊死性肺炎(黄色ブドウ球菌の気管支肺炎に続発します)、緑膿菌肺炎、肺結核、肺真菌症なども同様の赤みが見えますので、見えるだろう菌種を予め想定しながら見ていくことができます。肺真菌症や肺結核では菌があまり見えませんので、主に赤い場合は肺炎球菌か黄色ブドウ球菌、緑膿菌を中心に見ていくことになります。緑膿菌については市中肺炎は少ないので患者背景を絞り込むことで更に絞り込むことが可能です。

一方、気管支は分厚い臓器なのでそうそう組織障害はなく、ムコ多糖類と白血球中心の喀痰となるので膿性痰の割にはグラム染色所見の背景は桃色でスリガラス状に見えてくることが多いです。この場合はインフルエンザ菌を探します。マイコプラズマ肺炎も気管支肺炎ですが、菌は染まらないので確認は出来ません。逆に言えば菌が見えない気管支肺炎はマイコプラズマ肺炎を疑えるのかもしれません。
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出来ないのであれば可能にする。診断に近い有用な情報提供を心掛ける。
特に、グラム染色所見の解釈は難解です。毎日見ている検査室はその解釈を診断に繋げる必要があります。
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今後、微生物検査も自動化が進みますので時間に余裕ができると思います。
グラム染色の鏡検時間を多くしていきプライマリーケアの充実に寄与したいところですね。
時代を切り開いてくれたこの方々のようにこれから考えていきたいです。

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2016年8月11日 (木)

喀痰グラム染色はここまで分かることがある

当院でグラム染色至急と言えば、喀痰と尿と関節液。

それぞれ採取してから30分以内を目処に報告をしています。

喀痰グラム染色所見は抗生剤の選択をする上で重要ですが、当院では病態も含めてコメントをすることがあります。

例えば、2週間ほど咳が止まらないという主訴で来院する患者ですが、痰切れが悪いということがわかり喀痰グラム染色のオーダーがあります。

「喀痰グラム染色所見を見て頂きたいのですが・・・」という依頼でやってきますが、所見として見る点は以下のとおりです。

①喀痰として適切に採取されているものかどうかの判断。
②①であれば多核白血球が多いかどうか。
③②の時には白血球の種類と量(どれが多いか)、核が明瞭か否か(不明瞭な場合は古いことを示します)。
④多核白血球優位の場合は微生物が居るかいないか確認する。微生物の確認があれば優位な微生物についてコメントをする。

例えば下記の場合はこのように言います。
「多核白血球が優位にあり、グラム陽性双球菌があり肺炎球菌を疑います。一部莢膜形成もありますので間違い無いと思います。貪食像は少なめですが見られます。」

→肺炎球菌性肺炎を示唆する所見としてコメントします。

4 喀痰1000倍

オーソドックスですが、的確なコメント内容だと思います。
しかし、菌が見えない場合はどうしましょう?

咳や痰が出るので出す場合がありますが、下記の場合はどうしましょう?

2 3 喀痰1000倍

このスメアから分かるのは、多核白血球は少ないが存在すること、フィブリン糸のような線状うの物質に絡みあうようにすりガラス状の粘液糸が確認される。上皮でも線毛上皮が多く見られ、マイコプラズマ肺炎のような異型肺炎を疑います。多くがマクロライドやテトラサイクリンの投与が検討されます。

CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Oct. 2004, p. 697–728

この場合は粘液糸とフィブリン糸の交錯がポイントになります。
また、このようなスメアはどうしましょう?

今度は白血球はありますし、線毛上皮や粘液糸はありますが、フィブリン糸はありません。

これは気管支喘息の悪化に伴う像です。慢性炎症に出てくるマクロファージも見えます。少しマイコプラズマ肺炎とは異なる像です。

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また、気管支喘息の場合は肺実質に炎症所見が無いことがあり、胸部X線はキレイなことが多いと思いますので、マイコプラズマ肺炎じゃないと予想は付きます。こういう場合は抗生剤処方を一時見合わせて経過をみていくようです。

このようにグラム染色で病態把握をすることでより診断に近いものになります。

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2015年10月 5日 (月)

喀痰中の血液由来細胞報告の臨床的意義

 皆さんお久ぶりです。更新が遅延しております。

 秋の学会シーズンですね。また、感染症関連の抄録締め切りの嵐が来ております。
皆さんは如何でしょうか。

 さて、先日ある遺伝子検査機器メーカーの勉強会に参加してきました。色々と技術革新があり、最近は前処理が自動であるものや増幅にかかる時間短縮したものまで揃ってきましたね。まだ、一般病院の検査室の導入率は低いですが、感染症診断のためのツールが増えることは非常い良いことだと思います。発展させて導入実績を上げて機器や試薬コストを下げて、もっと患者のためになりたいと思いました。

中で呼吸器感染症の遺伝子診断の話がありまして興味深く聞かせて頂きました。丁度、質疑応答の中でコメントをさせて頂く機会もありましたので、その内容について今回は書かせて頂こうかと思います。

 「喀痰中の白血球の種類を分けることで肺炎の原因微生物の推測にどう活用するのか?」という命題を頂いたのでコメントさせて頂きました。今回はその内容+αです。
結果的にみれば、ある程度可能と思います。

1.細菌性肺炎

 細菌性肺炎の場合は多核白血球(主に好中球)が多数確認されることが多くなります。なので好中球が多数確認される場合には原因微生物は一般細菌と推測できることが多いです。

①肺炎球菌性肺炎

Photo S. pneumoniaeの大葉性肺炎

 肺炎球菌の場合は特にフィブリンの析出が多くなり、背景は赤味の強いグラム染色像であることが多い。

②インフルエンザ菌による肺炎

2_2 H, influenzaeの気管支肺炎

 インフルエンザ菌の肺炎は気管支肺炎が主体になるので、炎症細胞としての多核白血球(主に好中球)が多く見られますが、粘液主体であり、背景は刷りガラス様のピンク色のグラム染色像になることが多い。

③黄色ブドウ球菌による肺炎

Mrsavap2S. aureusの気管支肺炎

 黄色ブドウ球菌の場合は毒素によるフィブリン析出が多く、また化膿性病変が強いため、肺炎球菌性肺炎の様な赤味の強い背景になることが多い。
黄色ブドウ球菌による肺炎の場合は血行性か経気管的な肺炎かで少し像も変わりますので注意が必要です。

2.非定形肺炎

 主に細胞内寄生性微生物(レジオネラ菌、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルス)による感染になるために多核白血球(主に好中球)の出現は少なく、リンパ球やマクロファージの数が多くなる。
3 M. pneumoniaeの気管支肺炎

 マイコプラズマ肺炎では気管支繊毛上皮が多く見られることがあり、細菌性の気管支肺炎との鑑別に役立つことがある。グラム染色では血球由来細胞か上皮かの鑑別が難しいこともあり、ギムザ染色(ディフクイックもあり)を使うことで鑑別しやすくなる。

5 L. pneumophilaの大葉性肺炎

 大葉性肺炎でもマクロファージ優位であるのと、フィブリンの析出が少ない。レジオネラ肺炎の場合はリンパ球の動員も少なくなり空洞形成をしにくいのもこれが理由です。

③番外編
以下のような解釈もできます。感染か非感染かの鑑別に役立つこともあります。

3 好中球減少時のP. aeruginosaによる肺炎

 好中球減少時に急性炎症が起きると白血球が殆ど見えないが、菌が沢山見えることがあります。日和見感染の菌が見えることが多くグラム陰性桿菌を探すようにします。あまりに急激で好中球の動員が遅れる時もこのような像になります。

2 心不全性で出現したマクロファージ

 心不全ではマクロファージが増えることがあります。菌が見えなくマクロファージが沢山ある場合は心臓の機能も参考にしてグラム染色を確認することが必要です。

Photo 肺結核で出現した白血球の色々

 細胞内寄生性微生物と慢性の肺疾患のためマクロファージも多く見られます。また多核白血球(主に好中球)も散在しているため、抗生剤未投与にも関わらず白血球が多い場合は抗酸菌やノカルジアをを探しましょう。

 当然ながら見えた菌を推測することも併せて必要です。グラム染色は修練を積むことで色々なことが分かりますね。

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2015年9月16日 (水)

血液培養2セットで別々の菌種

平成26年度の診療報酬改定で血液培養の複数セット採血で2セット分保険請求できるようになりました。採血部位を変えることで算定が可能です。どの施設もそうですが、この保険点数の設定により2セット採取率が更に高くなっていると思います。

2セット採取のメリットは色々あると思います。

・採血量増加による検出感度アップしかこと
・複数セット採血による検出菌の臨床的意義づけが高くなったこと

が目的の一つではないでしょうか。

また、2セット採取率の増加に伴い、陽性率が高くなり陽性症例数が増加すること、症例数増加により臨床的意義が高くなったと認識されるようになり採取件数も増加することがあると思います。当院でも年間6000件に対応できるように血液培養機器も増設しております。皆さんの施設でも採取件数は増加していますか?
また、抗菌薬適正使用の考えもあり、結果的に不必要と思われる抗菌薬(特にコンタミネーションを疑う場合の抗菌薬投与回数の減少など)を投与する機会の減少など、感染症診療支援に加えて感染防止対策としての検査になっています。

現在、殆どの施設では自動機器により血液培養を実施していると思います。陽性になると画面や音で陽性になったよと教えてくれますが、菌の発育をモニタリングしているのでは無く、菌が発育する時にCO2が発生するのでそれをモニタリングしています。つまり菌の増殖とCO2の増殖が相関する原理となっています。血液培養が陽性になれば、培養液を抜いてグラム染色をし、場合によってはMALDI-TOFで同定を行ったりしますが、その大きな目的は診療方針の修正を行ったり、微生物検査の方向性を決める(培地選択など)ことでしょう。

ではこういう事例はどうでしょう。

上腕の静脈採血左右2セット、それぞれ好気ボトルのみ同時に陽性になりました。グラム染色をしてみます。おや?

Mds2 1セット目

Mds 2セット目

1セット目と2セット目はともにグラム陰性桿菌です。

良く観察すると1セット目はやや染色性も良く太めの桿菌ですが、2セット目は染色性は薄く細めの桿菌で両端がやや丸みがあります。

「同じ菌?、違う菌?」 悩みますよね。

こういう場合は複数人で確認をすることをお勧めします。複数人で確認しても解決しないこともあるでしょうが、1人で悩んでも仕方ありません。読み違え防止にも役立ちます。

2セット目は好気のみで形状から緑膿菌またはその類縁菌を疑う所見ということは分かりますね。1セット目は少し菌も延びていますので抗菌薬投与歴が無ければ形状変化の一つかもしれません。良く見ると辺縁は四角い感じがしますので腸内細菌科の可能性が高まります。

1セット目から腸内細菌科、2セット目から緑膿菌   あれあれ。

別々の菌が発育してきています。

とりあえず報告です。

「2セットの血液培養が陽性になり、それぞれ別の菌が発育しています。1つは腸内細菌科、1つは緑膿菌を疑います。」

血液培養液のグラム染色液を見て気付いている人はいると思いますが、白血球が全然ないですよね。そうです、これは抗ガン化学療法中で発熱性好中球減少症の患者のものです。少し前の記事にしていますが、複数菌血液培養から検出される場合はがん患者に多く見られます。そうすると、複数菌生えてきてもそれほど珍しいものでもありません。

こういった事例はどの程度発生するのでしょうか?
当院の集計では、2015年4月から半年間で2セット陽性となった84症例のうち、別々の菌種が発育したのは6症例(約8%)もありました。殆どが口内炎や消化器障害など粘膜障害が原因であると思われる症例でした。グラム陰性桿菌が2菌種、グラム陽性菌とグラム陰性菌の混合など色々あります。

血液培養液のグラム染色で複数菌が確認される場合の対応


翌日下記のコロニーが発育してきました。

1セット目:E. coli(後にESBLと判明)
2セット目:P. aeruginosa
2
感染症を専門にしている医師が不在の場合は難しいことかもしれませんが、当院では血液培養陽性例報告前にグラム染色像と患者の今の状態を刷り合わせています(当院の感染症を専門にしている医師は不在です)。

さて、カルテ上で見る項目は、身体所見や主治医の診療方針、臨床検査値では末梢の白血球数と血小板数、血清CRP値、血清クレアチニン値、BUN、微生物検査では同一日に採取された検査材料とその結果、それにバイタルサイン(体温、血圧、脈拍数など)です。全て網羅することは出来ませんが、それらを見てから報告を行うことで、主治医とのコミュニケーションをスムーズすることができます。医師からは自分の診断が合っているのか、抗菌薬は今のもので問題は無いのかなどを良く相談されるので、個々の患者に見合った結果報告を行うように努力しています。特に血液培養陽性事例はそれ自体で重症例である可能性が高いのでしっかり伝えるように心掛けています。

2セットともグラム陰性桿菌なので同定・感受性は1つだけしかしないという考えもあります。2セット採取の保険点数には培養に加えて同定の点数も含まれています。

つまり、1セットのみの結果コピペということは保険請求上問題になるかもしれませんので、同定は最低限行う必要が出てきます。このように培地上で明らかに異なる菌であることが分かる場合もありますが、グラム染色も用いながら患者ケアに当たることは我々微生物検査に必要なポリシーであることは言うまでもありませんね。

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2015年8月29日 (土)

肺炎球菌性肺炎の喀痰グラム染色で肺炎球菌は見えるのか?

先日、新人さんにこういう質問を頂きました。

「肺炎球菌性肺炎の場合に、喀痰グラム染色では全て肺炎球菌は見えるのか?」

中々、高度な質問ですね。 皆様ならどう答えますか?

その時に説明をした内容は以下です。

1.良い喀痰が採れないと確認しにくい

色々な研究者が肺炎球菌性肺炎時の喀痰グラム染色像について報告をしていますが、喀痰の品質が悪い場合は見えなくなる可能性が高くなる(感度が低くなる)。
多核白血球が優勢に確認できた場合でグラム陽性双球菌であれば肺炎球菌と推定可能である。つまり肺炎球菌性肺炎の場合は病巣への好中球浸潤が強く、好中球が多く確認されることが多い。
質の良い痰であれば70-90%程度確認はできるが、質が悪い場合は50%以下となり、抗菌薬前投与がある場合は20%以下にもなり得る。

Photo_2 こんなの出たらそりゃ皆さん肺炎球菌と言えますよね。

2.グラム陽性双球菌は全て肺炎球菌ではない

口腔内には常在するグラム陽性連鎖状球菌が多数存在する。多くがViridans group Streptococcusであるのだが、この菌種の特徴が楕円形である。つまり1つの菌体は肺炎球菌と類似しているという特徴がある。意地悪なViridans group Streptococcusではペア状のものが出現し、肺炎球菌と見間違えることが多々ある。そのため材料の品質管理が悪い喀痰では、肺炎球菌かどうかは言いきれない。

3.材料の品質が悪ければどうするか

原則、喀痰の採り直しをお願いする。外観上で白色だからとか、唾液様の色だからは通用しないことがあります。出来れば顕微鏡下で好中球が無いか、明らかに肺炎球菌様の菌が居ないか確認はする方が良い。そのためには喀痰は頂いたら直ぐにスメアを見ることで、極力、検査室の都合で検査を行わないように心掛ける。

多くの場合は指示出しした医師は喀痰の性状についてなど見て無いので、喀痰の採り直しについては看護師さんの努力無くして成り立ちません。再度採取をお願いするに当たり、採取時の苦労を労う言葉を忘れずに、患者さんの立場になりコメント(ちゃんと採取しないと肺炎の診断と治療に苦慮します・・・など)をする。

4.熟練すると心眼で見ることもある

とりあえず提出したもので所見を返さないといけない場合もあるかもしれない。
「ああ、これじゃアカンよな・・」と思った場合はしっかりと、材料の質が悪過ぎて判断がしにくい、培養の結果を待ってほしいなど、医師側に結果解釈が非常に困難なことをしっかり理解して貰えるような簡単にコメントを伝えたり、コメント付記したりする。

熟練をしてくると材料が悪い場合でも肺炎球菌と分かることもあるが、そこは仙人の世界かもしれません。

2 熟練の技は莢膜が無くても肺炎球菌を推測できる

Photo 翌日発育した肺炎球菌

5.見ないのはだめ、出さないのはもっとだめ

軽症で無い肺炎の場合、グラム染色見ないで初期治療薬を選択するのは極力避ける。cracklesあるのに痰が出ないという患者さんの主張を尊重して痰を出さないのはもっとだめ。細菌性肺炎である限り原因菌を特定して、それに見合った抗菌薬を処方するのは基本だと思う。痰が少量だから捨てましたなどはもう具の骨頂です。

とりあえず、肝心なのは患者さんのためになるような検査結果を返すように心掛けることでしょうかね。

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2015年8月12日 (水)

血液培養液のグラム染色で複数菌が確認される場合の対応

血液培養ネタが続きます。悪しからず。

血液培養は菌血症を証明するために最も重要な培養です。

当院は約500床の病院で、血液培養は年間約6000件(2セットは1件とみなします)対応しています。年間で約500件陽性者が出て対応をしておりますので毎日1人は陽性者の対応をしています。

血液培養に関して色々なインジケータを算出しておりますが、30日後の粗死亡率は約5%とかなり低い値を推移しており、血液培養陽性者への介入が良好なのが何となく自慢です。

血液培養陽性者の中でも重症度が高い患者の傾向として、S. aureusやS. pyogenesのようなフォーカスが掴みづらい外毒素産生菌、グラム陰性桿菌による薬剤耐性菌と複数菌検出者があります。皆さんの病院は如何でしょうか?

複数菌が検出される患者には悪性腫瘍患者が多く含まれますが、抗ガン化学療法中に発生する患者に多く見られます。中でも血液悪性腫瘍の抗ガン化学療法患者(多くが発熱性好中球減少症患者)の検出菌は腸内細菌科細菌+グラム陽性球菌の組み合わせが多く、グラム陽性球菌はViridans group Streptococcus、Streptococcus bovisやEnterococcusといったCFPMの抗菌力がやや劣る菌種が混じります。もちろん、発熱性好中球減少症患者だから複数菌というのもありますが、大腸菌やViridans group Streptococcusによる単一菌が検出される患者も多い状況です。

(J Antimicrob Chemother 2013; 68: 1881–1888)
(MEDICINE 65:4:218-225)

Photo 発熱性好中球減少症患者の血液培養からの複数菌検出例(KlebsiellaとEnterococcus疑いと報告しまし、その通り培養で出てきました)

この検出菌から把握できる患者の病態は、好中球減少が著しいことに加えて、口腔や消化管粘膜障害があり、そこから菌が侵入している可能性が非常に高いことです。こう、複数菌がグラム染色所見で確認されて報告する場合は口内炎が無いか、下痢が起こっていないかをカルテ上で確認しコメントをすると良いと思います。

「血液培養から複数菌が検出されています。グラム陽性球菌は連鎖状で長く、形態的にViridans group Streptococcusを疑います。カルテ上で口内炎と記載がありますが、そこから侵入した可能性はございますか?、またグラム陰性桿菌が確認され、形態より腸内細菌科細菌が疑われ・・・」というコメントを当院ではしています。抗生剤について聞かれることもありますので、その場合は感受性結果の予測値(MICの分布や感受性率など)や起こしやすい合併症、時には用法用量なども加えてコメントし、今後の治療方針を決定する上での検討材料として加えたりしています。

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血液腫瘍を基礎疾患に持つ患者で複数菌の検出率は4.4%(2001~2014年のデータ)と非常に少数ではありますが、30日後の粗死亡率は42.8%と、トータルの血液腫瘍患者での30日後の粗死亡率の28.4%に比べるとかなり高率になっています。やはりコントロールが難しい血流感染の一つになりますので、結果報告のスピードはかなり気にしながら行うことになります。当院では血液培養陽性例は提出後にできるだけ早く報告をするようにしてますが、現在のところ感受性までの報告を3日以内に達成できているのは約90%となっています。どうしても分離が難しい菌や複数菌の分離に手間取っている場合には時間がかかりますので、その場合はグラム染色所見で推定菌情報を多く流すように心がけています。

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当院でグラム染色結果で抗生剤を変更または追加する症例はどれくらいあるのか調べましたが、全体の34.2%と、質量分析機器を用いた報告の13.38%(Clin Microbiol Infect 2013; 19: E568–E581)に比べるとかなり高い数値になっており、当院ではグラム染色による迅速な結果報告は重要な検査情報となっています。質量分析機器は未だありませんが、導入するとなれば更なる成果が期待できるのでは無いかと思っています(ちなみに当院のグラム染色での推定菌正審率は93.1%)。少しでも適切な治療に貢献したいと思います。

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