しばらく、溜まりに溜まった原稿執筆のためにブログの更新をしていませんでした。
先日、COVID-19流行に伴って、薬剤耐性菌がどのように変化したのか?という研究報告結果がでました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34562548/
その研究内容の中で、肺炎球菌は激減し、MRSAは減少、3世代セフェム耐性の大腸菌とKlebsiellaは増加していたという報告です。COVID-19の流行により、どの施設でも微生物検査の検査数が減っていると思いますがどうですか? 検査数が減ると、それに併せて耐性菌の検出数は減ったが、耐性菌は少し増えています。
ユニバーサルマスクにより、飛沫感染防止が進み肺炎球菌がそれで減少している可能性があり、肺炎球菌の菌血症も減少しています。
また、手洗いの励行とアルコールによる手指衛生が習慣化してきましたが、そうすると接触感染対策の耐性菌が減るはずです。MRSAは皮膚に常在するので、表皮を清潔に保つことで減少したかもしれませんが、大腸菌やKlebsiellaは皮膚より内臓(特に腸管や泌尿器)に常在するために、皮膚を清潔に保持しても大きく減る訳ではないかもしれません。この文献に考察として記載がありますが、Klebsiellaの増加は大腸菌に比べて高いのは、Klebsiellaの方が莢膜を有するので病原性が高いことに起因しているかもしれないとのことです。
同じことが腸管感染症でも影響がでてきているように思います。先日、小児感染症学会で2019年〜2021年の小児患者から分離された、主な細菌やウイルスの検出状況について報告させて頂いた内容ですが、ウイルス性腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスによる食中毒も発生数も減少しました。ロタウイルスは2020年にワクチンの定期接種が開始されたタイミングもありますが、COVID-19による生活様式の変化も関与しているのでは無いかと思います。
IASRのデータを加工し掲載
当院の検出状況
細菌性腸炎では、EHECの分離頻度は減っていますが、Salmonellaは減っていないし、Campylobacterはむしろ増加しています。外食が減って食中毒は減少したのですが、EHECは手洗いの励行が進んだことも影響しているのか減少しています。Campylobacterは巣ごもりする機会が増えたのが原因で家庭内での感染が増えたのでしょうか? 皆さんの施設では如何でしょうか。仕事をしていると、CampylobacterはCOVID-19の発生数が減ってくると、外来で検出数が増加するような気がします(気のせい?)。
当院の検出状況
注)大腸菌が病原性大腸菌血清検査が陽性になったもので、病原因子の確認は十分にできていないため、腸管内の常在している大腸菌も含まれます。
感染症が世界的に大流行した後には、何らかの影響がでています。スペイン風邪の時は、経済の停滞や労働者の確保が難しくなったり、教育や所得、健康にも影響がでていたと報告があります。小学校では、ここ2年プールは無くなり、運動会などのスポーツイベントは減り、授業や宿題はリリモートへと移行しています。学校教育も変化したので学生の状態も今後変化すると思われます。
COVID-19の流行は我々に何をもたらすのでしょうか。微生物検査の運用も大きく変わろうとしていますし、そもそも感染症の流行状況が変われば検出される菌も変わるのでしょうね。今後の動向に注意が必要です。
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