神経疾患と誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎を疑う場合には、嚥下機能が低下する神経疾患が併存していないか考えることが大切です。
神経疾患の随伴症状では、嚥下障害やムセが急速に進行し、次いで歩行障害や脱力、麻痺などが症状として現れます。肺炎を起こしている本人が気づくこともありますが、認知症があったり、主訴が上手く聞き取れない場合は、近くで観察している家族とかの証言がキーワードとなることがあります。
そして、嚥下障害がいつ頃から、どの程度認めるのかタイムラインを整理していくことも必要です。例えば、以下の神経疾患が原因で嚥下障害から誤嚥性肺炎に発展する。
①突然発症した場合:脳卒中やてんかん発作
②急性発症した場合:脳炎や多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症(MG)、ギラン・バレー症候群(GBS)
③慢性の場合:脳腫瘍や慢性硬膜下血腫、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、ALS、MG
神経疾患の中でパーキンソン病は比較的誤嚥性肺炎に遭遇しやすい病気で、舌や咽頭など嚥下時に使う筋肉が固くなるため誤嚥を起こしやすい状態である。そのため、未だ診断されていないパーキンソン病が誤嚥性肺炎を契機に見つかることがあります。
写真はパーキンソン病が基礎疾患にある患者で発症した誤嚥性肺炎のグラム染色所見です。
多核白血球多数で非常に雑多な細菌が確認されます。「グラム染色所見で誤嚥性肺炎を疑う所見を認めます。」と報告し、胸部X線では両側の気管支肺炎像が確認され誤嚥性肺炎と診断されました。糖尿病が基礎疾患にあるため、莢膜が確認されるグラム陰性桿菌(S/O Klebsiella)が多数確認されています。
本当に誤嚥性肺炎の診断のみならず主たる細菌の種類も素早くわかる喀痰グラム染色は有意義な検査ですね。
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