全集中!グラム染色 壱の型
本日は兵庫県臨床検査技師会でグラム染色のお話しをさせて頂きました。
いつもそうですが、時間経過に沿ってグラム染色の結果をどのように解釈して診断・治療に役立てているのか考えながら勧めていきます。
血液培養でグラム陽性球菌ってどうしていますか?
・GPCで報告
・GPC clusterで報告
・GPC clusterで黄色ブドウ球菌(またはCNS)を疑うで報告
報告基準には特に規定は無いので、どのように報告しているのか施設で異なると思います。
黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)は、本当に神経の使う報告です。「全集中してますか?」
なぜなら原因不明の菌血症で遭遇することが多い疾患なので介入も早くしないといけません。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28873140/)。
SABはこんな特徴を持っています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11784216/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18522502/
①病院内感染での感染症は血管内留置カテーテル関連菌血症や術後創部感染が多い。
②市中感染では皮膚感染症が最も多いが、侵入門戸が分かりにくいものが多い。
③市中感染では感染性心内膜炎や骨髄炎の合併症例が多くなる。
④死亡リスクが高いものは、感染巣のコントロール不良、60歳以上、敗血症例である。
⑤感染リスクは、人工透析導入をしている患者、糖尿病が持病にある患者、がん患者、HIV陽性者など。
SABと分かれば、合併症がないかどうかの検索が必要です。
特に③の感染性心内膜炎や骨髄炎があれば、菌血症だけの症例と違い治療期間も大幅に変わります。
・感染性心内膜炎を疑う場合は、一先ず経胸壁心エコーの実施を勧めましょう。持続する発熱があったり、心雑音、心不全、Olser結節のような抹消サインがあるどうかカルテ記載から情報収集することが必要です。
・骨髄炎を疑う場合はMRIを勧めましょう。背部痛や発熱があるかどうか情報収集が必要です。
経胸壁心エコーで何も見つからない場合は、経食道心エコーは実施しないといけないのか?
SABはしっかりとした病態把握が必要なことは皆さん理解されていると思いますが、経食道心エコーまで実施となると循環器内科からクレームが出ないか心配と思います。経食道心エコーをしなくても良いかもしれない条件はJAMAに記載がありました。
以下の1)〜5)の全てがない場合は経食道心エコーは省略ができるかもしれない(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25268440/)。
1)院内発症の菌血症であること(発症日が把握できている)
2)最初の血液培養陽性から4日以内に血液培養が陰性となった。
3)心臓デバイスがない(PM感染はない)
4)人工透析でない(シャント感染はない)
5)臨床的に心内膜炎、または心内膜炎の二次性病変が確認されない。
ひとりの意見ではなく、チームとして統一したコメントをしていくのが本当に大切です。
あとはMRSAかどうかを急ぐため、PBP-2'の検出したり、mecA遺伝子検査をしたり検査室も一歩先に踏み出さないといけないと思います。機械を買ったりするのは大変だと思う施設では迅速セフォキシチン感受性検査というのがあるので検討してみてはどうでしょうか。
迅速PBP-2'の検討はこちら:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/2/70_20-90/_article/-char/ja/
mecA遺伝子検査の検討はこちら:http://www.jscm.org/journal/full/03101/031010005.pdf
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