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2021年7月 2日 (金)

Campylobacterのグラム染色像

コロナの新規発生数が減ってきています。緊急事態宣言も終わり、今は蔓延防止措置です。お店も空き始め、自粛していた人たちも、ここぞとばかり外食する機会が増えていくと思います。コロナも収束していないので、まだ当分がまんが続くと思います。緊急事態宣言解除後もありますが、例年この時期は食中毒が増えます。Campylobacterは食中毒の原因微生物でも上位に入ります。主にCampylobacterに汚染されている鶏肉の調理不十分な料理を喫食し感染します。自覚症状として下痢、嘔吐、頭痛と発熱です。ここでは鶏肉の喫食がキーポイントかもしれませんね。
コロナの発生数が少ないと思いますが、外食して友人と騒いだ後に発熱となれば、コロナを疑わずに居られないと思います。周囲や医療スタッフも不安な気持ちが続くのではないでしょうか。
Campylobacter腸炎の便グラム染色についてですが、通常は便のグラム染色は実施していないと思います。
Campylobacter腸炎を疑う場合は別です。gull wing(かもめ翼)と言われる螺旋桿菌が特徴的です。螺旋の回数は2〜4回のものが多いので、螺旋回数を少し念頭に置き鏡検するのが良いかと思います。
この2枚は別々の患者ですが、Campylobacter腸炎患者の便のグラム染色像です。さて、Campylobacterはどこに居るのか探してみてください。
ヒントは細く、小さい、グラム陰性の螺旋桿菌です。
3_20210702215801その1
1_20210702215801その2
わかるでしょうか? 慣れている方はわかると思いますが、ここに居ます。
4_20210702215801その1(答え)
2_20210702215801その2(答え)
その1では典型的ですが、うんちの固形部分の周囲に沿ってCampylobacterが観察されます。gull wingだけに水辺が大好きです。
その2は白血球多数観察される、これまた典型的な像です。これもgull wingだけに白血球(膿:うみ)と共生しています。
Campylobacterの便は粘液が出やすいおで、粘性固形物の近くに沿って鏡検をしていくと早く見つかります。
Campylobacterはスキロー培地やCCDA培地など専用の選択培地で、しかも微好気状態が培養条件になります。発育は遅く2日はかかるので、結果判明まで時間がかかります。予後は良いので急がなくて良いのですが、他の病原性の高い微生物との鑑別のために培養結果は大切かもしれません。しかしグラム染色は所要時間が10分程度あれば解決します。手を掛けて10分待つか、手を掛けないで2日間待つかは、皆さんの接し方次第と思います。もちろんAMR対策としてはグラム染色が推奨されるのは間違いないしょうね。

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