推定菌が外れた時どうする?
グラム染色所見から菌種推定をする場面も多いと思います。菌の色や形などを主観的に見て判断して菌種推定は行います。
それは、教科書に載っている画像や過去の経験とのマッチングであり、形態が似ている場合は外れることもあります。
グラム染色ではあくまでも「菌種推定」であって、同定ではないので一定の割合で外れるかもしれないということを念頭に所見確認を行わないといけません。
先日の兵庫県臨床検査技師会でも出題した下記の症例です。
患者:80代,男性
主訴:排尿時痛、頻尿
既往歴:十二指腸潰瘍、膀胱がん
現病歴: X-2週間:排尿時痛を自覚していた。近医でMINOやLVFXを処方してもらっていた。X日:内服をしているが症状の改善に乏しいため外来受診。
さあ、何菌を推定しますか?難しいですよね。
神様は乗り越えられられない試練は与えない。1つのことを習得しても、また新たな試練がやってきます。GNRの菌種推定なんかはその代表的な試練のように感じます。
尿でGNRだから腸内細菌かもしれないと思い、推定菌を腸内細菌科として報告しましたが皆さんどうでしょうか?
翌日、残念ながらこんな菌が発育しました。マッコンキー寒天培地に半透明のコロニーでオキシダーゼ陽性です。そう緑膿菌でした。
も一回見返してみましょう。少し小さくて細いかもしれません。
尿の緑膿菌と大腸菌です。やはり大腸菌の方が少し大きくて太くないでしょうか。
間違えた時は検証です。グラム染色所見が培養結果と一致しない時は以下のカテゴリーのどれに該当するか考えます。今回はカテゴリー2になります。
塗抹と培養の不一致にあたるので、標本作成時の問題か判読方法に問題があるかになります。
標本作成時の問題については、十分に乾燥できていない標本、染色方法が悪い、染色液の劣化などが原因になります。判読方法の問題では、力量不足や菌種推定を系統別に考えていないなど教育不足が原因となります。新人は間違えることは多いですが、その後に間違った本人が萎縮しないような周囲の働きかけが必要でしょう。グラム染色の限界領域に達してしまったのだから。
ただ、患者背景や他の検査結果を紐解いていけば緑膿菌へ辿り着いたかもしれません。
・亜硝酸塩還元試験;陰性(偽陰性になる要因も含めて考える)→亜硝酸塩還元能が弱い。
・抗菌薬が多用された後のため耐性菌のキャリアになりやすい。
・過去にガンが既往歴にあり、緑膿菌キャリアとなるリスクあり。
結局は、間違った理由についてゆっくり考察すること、先輩と一緒に鏡検を繰り返すなど技術の伝承が大切です。
誰しも最初はヒヨッコです。頑張って立派なニワトリに育ててあげましょう。
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