誤嚥性肺炎の喀痰は質が悪いのか?
先日はグラム染色で誤嚥性肺炎をどう考えるか?について書きました。
http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-1bc9d4.html
SNSで紹介したところ、いくつか質問を頂きました。
1. 喀痰ではなく吸引痰ではどうなるのか?
吸引痰の場合では、喀痰を自分で排出できない患者(ADLが少し落ちている)から採取する場合が多いことから扁平上皮が多く混在すると思われます。
自験例ですが以下のような結果となりました。
やっぱり、多核白血球が多く確認されることが誤嚥性肺炎の診断には重要な所見と思います。白血球がなければrejectですね。
喀痰は患者の協力があり口から痰(膿)が出てきたもので、外観評価は全然当てになりません。
喀痰は患者本位に採取された痰ということになります。吸引痰はどうでしょうか?
吸引痰は医療スタッフが口からチューブを入れて(言い方が悪いですが)強引に分泌物を採取したものです。採取したものが喀痰なのか?、鼻汁なのか?、唾液なのか?、食べ物なのか?は採取する本人しか分かりません。吸引するとズルズルという音とともに唾液と共に分泌物が引けます。分泌物の中には痰や食べ物、唾液、鼻汁が多数混じり合います。そのため、どうしても扁平上皮が多くなります。喀痰と同じですが痰は良質なところを採取できるように生理食塩水で洗浄をして膿性部分をしっかり採取したいものです。
そのため、採取された痰は洗浄をしてグラム染色像を確認することが大切です。
2.誤嚥性肺炎は材料評価が悪い
誤嚥性肺炎は上皮がそのまま下気道に落ち込みますので、痰の中には上皮が多く含まれます。そのため、Geckler分類は悪くなります。
そもそも、Geckler分類は成人市中肺炎の原因菌を喀痰グラム染色で評価するために検討された研究です。評価対象には高齢者や肺結核、異型肺炎は含まれませんので、誤嚥性肺炎は当然含まれた結果にはなっていません。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/334796/
自験例ですが以下の通りです。
結論
誤嚥性肺炎の時は質が悪い評価に繋がるが、痰は洗浄して膿性部分のみ採取することで誤嚥性肺炎をより正確に診断することができます。
学校では教えてくれない内容って、日々勉強ですね。
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