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2021年4月27日 (火)

第70回日本医学検査学会 PD7 グラム染色の深化と進化の収録を終えて

本日は第70回日本医学検査学会ワークショップ7<塗抹検査の深化と進化>の収録でした。総合討論も非常に盛り上がりグラム染色をしていてよかったなあと、ずっと思える討論でした。

https://site2.convention.co.jp/jamt70/program/#pro06

座長はグラム染色界の巨匠、くまもと県北病院(旧公立玉名病院)の永田先生と私師範手前がさせて頂きました。日本屈指のgramstainerである2人が司会なので、演者はバリバリ緊張したかもしれません(自分で言うな)。

演者は4名。演者も豪華でした。

1. 症例を通じて学んだグラム染色の重要性 西福岡病院(現 京大病院) 後藤裕一 先生

中規模病院で培ったグラム染色を用いた感染症診療支援の成果には非常に感銘を受けました。自分自身も同じ道を歩んできたので重ねてみてしまいました。担当者が少なく、決して環境に恵まれている訳では無いのですが非常に前向きにグラム染色所見の報告を実施されています。グラム染色のみならず顕微鏡を使っての感染症診療支援はどこの医療機関でも行えるような内容と思います。大切なのは医師と技師の信頼性であり、こちら側からのアラートに受け応えしてくれる医師の存在は大変ありがたいですね。

2. グラム染色〜抗菌薬適正使用につなげる〜 まえだ耳鼻科クリニック 前田雅子 先生

http://www.maeda-jibika.com

第1回厚労省AMR対策普及啓発活動の厚労省大臣賞を受賞された先生です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167304.html

診療の中でグラム染色を取り込み、今やグラム染色に根付いた診療支援の第一人者です。処方量が減るとは思ってもみなかったというコメントが驚きでしたね。夫婦でクリニックを運営されていますが、グラム染色をして抗菌薬の処方量が減っても、素敵な診療に患者が増えて逆に増収だったとか。グラム染色は予想外の効果を生み出すツールです。内助の功とは良く言ったもんですね。

永田先生も「患者を目の前にしてグラム染色をするのは羨ましい」と言われていましたが、その通りですね。

3. 臨床で活用すべき特殊染色 東邦大学医学部大森病院 村上日奈子 先生

高明な東邦大学で微生物検査技師として幅広く活躍されている先生です。今回は特殊染色についてレクチャーして頂きました。個人的には昔レジオネラ菌のことで良く勉強させて貰いました。ありがとうございます。

今やMALDI-TOF MSが世の中を席巻していますが、特殊染色は欠かせない検査です。Goast GPRの結核菌、キニオン染色のNocardia、ヒメネス染色のレジオネラ菌など事例から紹介していきます。今や、キニオン染色は良くされる検査ですが、グラム染色から紐解いて、追加で確認していく手法はオーソドックスで、ナーバスは検査です。きめ細やかな対応がなければ特殊染色は生き生きとしませんね。

4. 診療に活用すべき塗抹検査結果 国立国際医療研究センター病院 忽那賢志 先生

今や日本の感染症医のトップアイドルであり、政府のCMにも出演されるビッグネームの先生です。

https://www.youtube.com/watch?v=CulizRvhLYE

今回は医師と技師の連携について熱く語って頂きました。思わぬ形で診断結果が変わることは日常遭遇してしまうことと思います。グラム染色は菌を表在化して診断エラーを確実に防ぐことができます。スメアだけ見るのではなく、見えたことで得られる付加価値をしっかりと活かす検査にしなければならないと強い言葉を頂きました。まさにその通りと思います。

医師が病棟で待っていて、電子カルテをクリックして結果を見るのではなく、気づいた点は是非とも医師に報告してくださいとのことでした。ただ、邪険に扱う医師もたまにいますが、グラム染色所見の重要性は以前より理解度が上がっているのでドンドン報告しましょうとのことでした。

最後に、グラム染色は深読みすることで更なる進化を遂げます。電子カルテという追い風にも乗って、患者に取って、医療に取ってより良いグラム染色を更なる領域に展開していきましょうね。

写真は膿瘍のGPC Clusterです。膿瘍形成をするGPC Clusterはたくさんありますが、メジャーなのは黄色ブドウ球菌です。黄色ブドウ球菌で問題になるのはMRSAという耐性菌。耐性菌が出る背景には既往歴や抗菌薬曝露歴、入院歴、患者年齢などがあります。ただ単にGPC Clusterと報告するのではなく、黄色ブドウ球菌のを疑うとか、もしかしたらMRSAの可能性があるので選択培地を入れておきますなど次なるアクションが期待されています。GPCだけで返すのはもう罪かもしれません。翌日選択培地には発育がなく、MSSAとわかったのでVCM中止となりました。
次なる進化のために検査室も脱皮が必要かもしれませんね。

Mssacez4

本当に面白かったと思います。臨床検査技師の皆様にはぜひ聞いて欲しい内容です。

 

 

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