本日はDiagnostic Grand Prix Japan(DGPJ)2020で症例提示させて頂きました
本当に筆が遠のいており、グラム染色道場と検索しても検索ワードで下の方に来てしまうようになってきました。
COVID-19の流行により、医療環境もそうですが、学会や研究会など院内外の教育研修の場面も変貌しています。
オンライン会議システムを利用した学会や研究会が殆どでプレゼンテーションをする機会が増えてきましたが、まだまだ慣れませんね。
さて、本日は兼ねてからプレゼンテーションの依頼がありましたDiagnostic Grand Prix Japan2020で症例提示させて頂きました。Diagnostic Grand Prix Japan2020は全国の医学生や総合内科医、感染症内科医が中心に参加される勉強会で、臨床推論を学ぶところです。数年前より臨床推論にハマり、数々の微生物とともに、この臨床推論の手法を用いてプレゼンテーションをしてきましたが、今回は培養できない微生物で挑戦してきました。
呼吸器症状と多発肺結節で悪性リンパ腫を疑い紹介受診となった患者です。診断経過を振り返ると学ぶべき内容がたくさんある症例でした。
悪性リンパ腫を含めて、肺に結節を起こす各種疾患を除外したり、臨床症状が梅毒に合致したものかどうか確認をしていき、治療経過を確認し、最終診断となりました。
新型コロナウイルスは消毒をすれば消失しますが、肺の結節は消毒もできませんし、感染症でなければ抗微生物薬を使わないなど治療方針が大きく変わるため、積極的な診断・治療の戦略が必要です。
今は、インターネット検索が十分に行えるので肺結節の診断と検索すると色々な情報を得ることができます。
感染症や悪性腫瘍、炎症性疾患など肺結節を伴う病気はたくさんあり、診断バイアスに左右されることもありますので、一つ一つクリアしていかないといけません。
ご存知の通り、梅毒はTreponema pallidumによる感染症で、培養ができないが、診断や治療が確立されている疾患です。感受性検査ができないが、ペニシリンで治すという、通常では考えらえないEBMの原点となるような疾患です。
梅毒の肺病変は3期梅毒ではそこまで珍しい症例ではないそうですが、2期梅毒では確認される機会が少ないです。
そもそも、梅毒は以下のような病期があります。3つの3(週間、月、年)と覚えておくのが良いでしょう。
1期梅毒:感染後3週間程度で症状が現れます。感染局所に無痛性の皮膚病変(硬結や潰瘍)を伴うことが多いです。しばらくすると症状は消失し、2期梅毒で再び症状が現れます。
2期梅毒:感染後3ヶ月程度でT. pallidumが血行性に播種し、皮膚や粘膜、臓器に梅毒の症状が出てきます。丘疹性梅毒疹やバラ疹、神経梅毒がここに入ります。
3期梅毒:感染後3年以上経過するとゴム腫や結節性梅毒疹が現れます。現代ではあまり見ることができません。
梅毒の診断はご存知の通り、血清学的診断が最もメジャーで、カルジオリピン抗原を用いたRPR、T. pallidumを抗原するTPHA(ラテックス法の場合はTPRA)やFTA-ABSが主流です。RPRは生物学的偽陽性が問題になり、TPHAは既感染者でも陽性になることや、感染後数週間は陽転化しないことは注意点として覚えておくと良いでしょう。
治療はペニシリンGの点滴が標準治療法です。AMPCによる内服治療もありますが、再発例や治療失敗例もあり、使用時は慎重に経過を観察する必要があります。
(今回はメジャーな感染症のため。釈迦に説法と考えて、梅毒の検査や治療は割愛しました。)
Takehome messageは以下をコメントさせて貰いました。
梅毒は本当にmimicな症例も多く、診断バイアスに左右されないように、また騙されないように診断に結びつくようにして欲しいと思います。
タイトルのネタですが、結節は英語でnoduleと言います。このnoduleは元々丸みのある石の塊を表す言葉で、割面を入れると宝石や化石が中から出てくるものです。そのため、中身が何か調べないといけません。また、石と思って割ったら違うものだったってのは診断に近いものがあります。
・最終診断は梅毒ですので、sexual transmitのsexと結節の数の6(six)を掛け合わせています。
・結節の数6とタイトルバックのnodule(石の塊)の数を合わせています。
・梅毒ですが、noduleの右下は烏梅という梅干しの燻製です。スケールを合わせると石に見えます。
本日は企画運営して頂きました学生の皆さん、司会のマツケン先生、志水先生お疲れ様でした。
最近のコメント