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2020年4月25日 (土)

新型コロナウイルスのPCR検査に思うこと

新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令しております。自宅待機にも慣れてきたかと思いますが、感染拡大とともにPCR検査の稼働回数が増えてます。

PCR、PCRといっても結核菌PCRと同じようなイメージをしている医療従事者が多いと思いますが、新型コロナウイルスの標的となる核酸はRNAなので、取り扱いは結核菌DNAとは少し異なります。また、従来のPCRのようにキット化されて、保険点数もついていますが、体外診断用試薬の適用がないものが多く流通しています。そのため、内部精度管理を含めての検証をしっかり行うのがキモです。

また、キット化されても陽性がピタッと出るものもあれば、うーん、うーんと悩む症例も多い。コンタミ排除を完璧にしているが、どう考えてもコンタミは否定できないという結果判定も遭遇します。陰性例もRNAがしっかりと抽出できているのか疑心暗鬼になります。

通常のPCRよりかなり手の込んだ検査であることは理解して欲しい。

こういうことはニュースや新聞、雑誌などに取り上げられる機会も少なく、また取り上げられたとしても難しい内容になるので、到底一般市民の眼には止まらない内容です。TVでもその辺をしっかりとコメントしている医療関係者もいますが、状況を理解せず「PCRを全例に」と話している人も目にします。それは正解かもしれないが、有機的に考えると無駄も多いと思う。

今回のPCRの目的は診断・治療もさることながら、二次感染を防ぐためにもウイルスがいるかいないかを判断する重要な役割をしています。結果はゼロか100%かのどちらかを求められおり、操作の不慣れからくる偽陽性・偽陰性は避けなければならない。そのため、検査手順がしっかりと見直しできるスタッフとスタッフのスキルトレーニングが重要です。

また、「スタッフ不在のため今日はできない」、「人が少ないので今日は結果が遅くなる」など日常では許容できるものでも、新型コロナウイルス感染症は猶予をくれません。機器や試薬は買ってもらえるが、臨床検査技師はそうそう増やしてもらえません。恐らく、どの施設でもPCR戦略グループを作り、マンパワー確保のため一定期間はスタッフの日当直は免除されたり、1人のスタッフが倒れた場合でも体制が維持できるように検査室全体で後押しすることが必要です。

言葉は悪いですが、これはCOVID-19と臨床検査技師の戦争です。現場の方のみならず管理者の方はしっかりと後方射撃を行うことが大切です。

全国のPCRに関わっている皆様の力なしで、現在の診療は維持できません。皆さん頑張りましょうね!!!

しかし、この動画は面白い。

https://togetter.com/li/1481255

 

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2020年4月16日 (木)

COVID-19にサージカルマスクで立ち向かえるのか?

新型コロナウイルス感染症の予防対策にサージカルマスクは必須ですという情報があります。

サージカルマスクはこんなに薄いのに新型コロナウイルスを防げるのか?と疑問を抱いていないでしょうか。

先日Nature medicine https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2.pdf )にコロナウイルス に対してサージカルマスクがどれだけ有効であったかという報告がありました。この報告によるとコロナウイルス感染症患者にサージカルマスクを装着すると殆どのウイルスが抑制されたことが書かれています。

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患者にサージカルマスクをさせることで優位にウイルスの飛散を抑制することが証明されています。患者のみならず、自ら感染者となった場合にサージカルマスクをしっかりとしていると感染が広がらないことが証明されます。

また、布マスクでは新型コロナウイルスは抑制されるのか?という疑問も持っているかもしれません。ある報告では、呼吸器感染症、ウイルス感染症、インフルエンザ様感染症の3つにおいてサージカルマスクが布マスクに比べて優位にウイルスを抑制したと報告(マスクの取り扱いには問題ありますが・・)されてます。

https://www.researchgate.net/publication/275360639_A_cluster_randomised_trial_of_cloth_masks_compared_with_medical_masks_in_healthcare_workers

マスクはしないよりした方がウイルスの拡散を抑制しますが、鼻が出たり、口が出たりしないようにしっかりと着用しなければその効果は出ませんのでしっかりとすることが必要です。

空気感染対策が必要な場面ではN95マスクの着用をすることは当たり前なので使い分けも大事ですね。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-e756ce.html

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2020年4月13日 (月)

飛沫感染対策と空気感染対策の違いについて

皆様、お久しぶりです。

感染管理をしている方々は毎日コロナ、コロナと振り回されていると思います。

毎日、色々な質問を受けて対策を考えている中で思うのは、「今までインフルエンザの管理はどうしていたの?」とか、「え、結核感染対策はどうしていたの?」 など色々と思うことが多いです。

感染対策の中身自体は大きく変わることがなく、標準予防策に加えて空気感染予防策、飛沫感染予防策、接触感染予防策があります。

空気感染対策と飛沫感染対策は病原微生物が感染症患者の口から出てくる点は同じですが対策は大きく違います。

そのことをスタッフに話しても、話しても、話しても なかなか理解されないものと良く思います。本当に骨が折れます。

この機会に検査室で使用する少し分かりやすい資料を作成してみましたので参考になればと思います。

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が出されました。新規患者発生数が増加していますが、感染源不明の患者が増えてきています。

新型コロナウイルス感染症は飛沫感染予防により感染防止が可能ですが、一部の医療行為においては空気感染対策が必要です。

臨床検査において空気感染対策が必要な場面は以下になります。

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生理機能検査

・経食道エコー検査の挿管及び抜管時

・肺機能検査の実施時

・気管内挿管時や気道吸引のある場合

検体検査

・気道分泌物を扱う検査(結核菌検査など)

*新型コロナウイルス 感染症対策においては咳嗽の強い患者との接触時も該当します。

飛沫感染の場合はサージカルマスクで防御可能ですが、空気感染の場合はN95微粒子用マスク(以下N95マスク)の着用が必要です。飛沫感染と空気感染の違いは、患者さんから排出される病原体を含んだ粒子の大きさの違いにより対策が異なります

上気道(咽頭や口腔)では粒子は水分が多く、粒子が大きくなりサージカルマスクを通過ません。一方、下気道()では粒子そのものが小さいためサージカルマスクは容易に通過してしま(ほとんどが通過)。そのため、気管内挿管や気道吸引時、結核菌検査対応時はN95マスクを着用する必要があリます。また、患者にサージカルマスクを着用させることでも感染防止が可能です。

また、空気感染が考えられる場合は一定時間換気をすることで飛沫核は除去されます。

例)腹部エコー室、脳波室、心エコー室などは14分、肺機能検査室は23分など。

肺機能検査については高性能フィルターをかませて検査を実施するために、機器の回路事態の汚染はありませんが、フィルター装着部の脇から病原体を含んだ粒子が僅かながら漏れてしまうので空気感染対策が必要になりますが、そもそも肺機能検査を呼吸器感染症患者に実施は禁忌になっています。

新型コロナウイルス感染症流行期における呼吸機能検査の実施について:https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/information/20200327_statement.pdf

同じ口から排出される病原体ですが、医療行為により感染防止対策が少し異なりますので検査前に再確認を行うことが必要です。
なお、飛沫感染対策及び空気感染対策には、アイシールドの着用と同時に接触感染対策も必要になります。検査前後には手洗いもしくは手指消毒が必要です。
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