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2020年2月13日 (木)

血液培養の報告は正か?負か?

令和2年度の診療報酬改定において血液培養の点数がまたもや増加しています。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-52869b.html

それだけ血液培養は治療の適正化はもとより耐性菌の発生抑制に貢献しているものと見えます。

血液培養は採取後に機器へ挿入され、陽性の場合にはシグナルが鳴ることで私たちに告知してくれます。

陽性後はボトルの本数や陽性時間、ボトルの外観を確認し、ガスの産生や色調変化(溶血や濁り)も確認し菌種推定を行います。

次にボトル内部から培養液を採取してグラム染色所見を確認します。そこで初めてグラム陽性菌なのか、陰性菌なのかを確認することになります。

確認後は寒天培地を用いてサブカルチャーと呼ばれる培養を行なって、同定・感受性検査へ進めます。最近ではお金持ちの施設にはMALDI-TOF MSが常備されているため、そこで菌種同定されることがあります。

まだまだ、グラム染色による菌種推定を実施している施設も多く、その結果はPanic Valueとして医師へ連絡されます。

そこで、初めて診断が正しいかどうかの確認と初期治療の抗菌薬が適切なのか、適正なのか検討を行う。

迅速な報告は患者の予後に結びつき、陽性判明後1時間以内に報告することは予後改善に大きく寄与することが知られています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19019762

早く報告することで診断治療に寄与することは多いのですがこういう事例はどうでしょう。

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患者:40代、女性。

既往歴:甲状腺機能低下症

現病歴:1日前から気分不良を訴え、翌日突然の意識消失で搬送となる。

入院時の血糖値は13mg/dLと異常低値を示し、頭部MRIで低血糖性脳症と診断される。

項部硬直があ利、除外診断のため髄液穿刺を実施したところ細胞数61個(多核球優位)を示した。

翌日、入院時に採取した血液培養が陽性になり下記のグラム染色所見を認めた。髄液培養は陰性。

S-mitis 血液培養グラム染色所見(×1000)

 

グラム陽性の長い連鎖状球菌、菌体はやや長細く、一部染色性が悪いものが散見される。

GPC long chain, part of gram stain variable→S/O viridans group streptococci(VGS), r/o Streptococcus pneumoniae

直ぐにグラム染色所見を確認し、この時点で除外すべきは肺炎球菌であるが、菌の形状はVGSで問題はなさそうと報告。

一応、髄膜炎否定が困難なためCTRX+VCMを開始することになった。

最終同定はStreptococcus mitisであり、最終診断は採取時のコンタミネーションが原因と考えられ、数日で抗菌薬は終了となった。

低血糖の原因は甲状腺クリーゼで、低血糖による発作及び脳症と最終診断され、数日後に退院となった。

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この報告はしなくて良かったのかもしれない。そうすれば余計な抗菌薬投与は無かったかもしれない。

または、報告して良かったのかもしれない。菌が発育しているのだから報告は当たり前だよと悩む症例ですね。

文明機器のMALDI-TOF MSでは肺炎球菌とS. mitisは完全に区別ができない菌種ですし、肺炎球菌抗原は交差反応を示します。

こういう時は原点回帰であり、グラム染色所見をもう一度確認することが大切なんだと思う瞬間でした。

皆さんは、毎回報告している血液培養のグラム染色所見をどのように感じていますか?

 

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