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2018年9月13日 (木)

E, faecalisとE. faeciumを分ける理由

本当にブログを書く時間がなく、Googleも2ページ目に登場しなくなりました。

もはや、グラム染色での知名度は低くなりつつあります。
それが原因ではありませんが、FacebookやTwitterに続き、ようやくInstagramも始めました。あまり更新していませんが、#グラム染色とつけていますので画像をみてください。
ところで、先日からセミナーや研究会が続きAMR対策について話しする機会を頂いています。その中でグラム染色所見でEnterococcus faecalisとEnterococcus faeciumを区別する意味について話しをしました。
なぜ、この2つの菌を分けないといけないのか?また、グラム染色でそこまで言い切れるのか?など、色々と意見があると思いますが個人的にはこう考えています。
1. EnterococcusというとE. faecalisを連想させる
多くの医師はEnterococcusと聞くと「ペニリシンが効くやつでしょう?」という返事が返ってきます。間違いではないのですが、このEnterococcusとはE. faecalisのことを指していることに気づきます。過去には E. faecalisでペニシリナーゼを出すものがあるということでしたが、近年ではその報告もありませんので、E. faecalisはペニシリンを選択することになります。
Photo
血液寒天培地で見ると全然コロニー形状が違います。
2.Enterococcusでペニシリン耐性株がいるのは想定外かも
E. faeciumの多くはペニシリン耐性です。E. faeciumとは細胞壁の構造が少し違うんでしょう。 E. faeciumの存在を知っている医師は泌尿器科や感染症内科、一部の総合内科で、感染症診療に興味が強い医師です。つまり、E. faeciumということで「VCMしかだめなんだ」と想起することができるかなのですが、殆どできないと思います。 。なので検査室は、E. faeciumが出たらEnterococcusや腸球菌と言わずに、E. faeciumとはっきり言うことが重要です。
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3. この2つの病原性は違うのか?
血液培養陽性時にはE. faecalisの方がE. faeciumより感染性心内膜炎が多く見つかるという報告があります。E. faecalisの中にはヘモリジンを産生するものがおり、弁膜症と起こしやすいということも言われています。この2つの菌は感受性が異なるので適切な治療開始が遅れることがまず病原性を高めている要素であるので、この2つは早いうちに分ける方が良いと思います。
・ NOVAスコアを用いたEnterococcusによる菌血症時の心エコー実施のためのスクリーニング:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25381321
・感染性心内膜炎におけるE. faecalisの病原性:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1198743X14637125
4.結局グラム染色所見でこの2つを分けれるのか?
Enterococcusは短い連鎖で、2〜多くても10個の連鎖しかありません。4〜8連鎖中心であればEnterococcusの可能性があります。
そもそも、EnterococcusとS. pneuoniaeをグラム染色所見で区別できるか?ということに戻るが、この2つは感染臓器が少し異なるので、横隔膜より上がS. pneumoniae、下がEnterococcusと判断できます。Enterococcusは腹腔内感染や尿路感染症が多いのでどの臓器、どの材料かどうかが大きな判断材料となります。
さて、本題のE. faecalisとE. faeciumの違いですが、
・E. faecalisは楕円形で横に4〜8個連鎖した菌
・E. faeciumは円形で横に4〜8個連鎖した菌
Faecalisfaecium_2 2つ並べてみた
Faecalis 胆汁のE. faecalis
Faecalis_2 尿のE. faecalis
Faecium 胆汁のE. faecium
Faecium2 胆汁のE. faecium
Faecalisfaecium_3 なんとレアなE. faecalisとE. faeciumが同時に見える
上記のような理由もあり、E. faecalisとE. faeciumは早く分けるメリットは大きいと思います。
最後に、ご存知の通りEnterococcusはペニシリンと同じβ-ラクタムでもセフェムが自然耐性なのは言うまでもありませんね。
胆汁からS. pneumoniaが出たのを見たことがありますが、初めて遭遇した症例は見事に外れました。こう言うイレギュラー症例はグラム染色の限界かもしれませんね。ちなみに、こう言う症例は消化器がんでENBDチューブ留置例に多いので、気をつけながら見ると良いでしょう。
Spfaecalis

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