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2017年11月27日 (月)

え、そんなん無理やわ

昨日は、日本臨床微生物学会の第19回感染症学セミナーに参加してきました。

臨床微生物学会では年に2回ほど医師や薬剤師、看護師にも対象を拡げた微生物検査に因んだセミナーを開催しています。
今回は、「微生物検査結果の見方を基本から学ぼう」という企画で、看護師や薬剤師にも分かりやすいテーマでした。

http://www.jscm.org/gyoji/187.html

中では材料の採取の仕方や結果ができるまでのプロセス、結果報告までの流れについて詳しくお話がありました。

尿路感染症をテーマにした内容では採尿方法からグラム染色所見の活用法、培地の選択と結果の解釈についてお話がありましたが、最後の質問時間に採尿方法について意見がでていました。非常に印象的だったので紹介します。

尿路感染症の診断検査で大切なのは、微生物の存在(特に菌量)や好中球の出現を中心としたもので、尿一般定性検査と尿培養の両方が出されないといけない。また、尿路感染症の自覚症状や臨床所見の確認も必要ですし、尿路感染症で無いという判断が大切になります。

という意味で、陰部の汚染が問題になる採尿を正しく行うことが尿路感染症の診断には非常に大切になります。

尿培養を対象とした採尿方法について

・中間尿か導尿か?
どちらでも良いが女性は採尿方法が難しいので、汚染を極力避けたい場合は導尿することが望ましい。

Clinical Microbiology Procedure Handobookには中間尿の採取方法について書かれているが、これはまた難しい。
http://www.asmscience.org/content/book/10.1128/9781555818814

「中間尿は排尿を一時的に止め、再開する尿で採取するのでは無く、排尿中の途中で容器を挿入し採取する。」 こんなの絶対にできないよ。

日本化学療法学会ではこう書かれている。
「採尿コップをコップの内側に触れないように持ち,出始めの尿を排出した後,途中からの尿をコップに採る。 終わりの尿はコップに採らず便器へ排尿する。」 終わった後の尿をどうするのか細かい配慮がなされています。まあ、現実的な方法です。
女性の採尿や臥床患者の場合は男女問わず清潔な採尿方法が難しく、導尿による採尿を行うのが良いと考えます。

600 中間尿で採取(複数菌が見えます)

再採取をお願いした結果以下のようになりました。

600_2 導尿で採取(単一菌が見えます)

上記のように中間尿では本来の尿路感染症の原因菌以外のコンタミネーションが出て来ることがあります。

ちなみ、うちの救急では採尿はほぼ導尿です。尿路感染症の診断時に誤りが少ない形で採尿をして欲しいと検査室からお願いしておいたこともあります。

・採尿バッグ尿は良いのか?
自立排尿できない小児患者の採尿をどうするのか話題になることが多い。セミナーでも質問が出ていたが、パック尿でも良いのでは無いかという意見が出ていた。しかし、これはあまり推奨ができない。

結論的には「採尿バッグによる採尿は、得られた尿検体での尿培養の偽陽 性率 7.5%,偽陰性率 29%と、診断精度が低い。」という見解です。同じようなことが長野県立こども病院小児感染症と抗菌薬のトリセツに記載がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpn/27/2/27_105/_pdf
http://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307170642

採尿バッグでの尿培養は尿路感染症の診断には適さない。
最低限カテーテルで採尿をする必要があるが、その場合は尿路感染症の診断基準である菌量は10の4乗以上となるので検査室で釣菌をどの菌量でするのか事前に調整が必要です。

・尿バルン挿入患者の採尿
採尿ポートからしっかりと採取する。バルン底部に排尿用のポートがあるが、そこは既に排尿から長い時間経過した異常増殖した細菌が存在する尿になり、尿路感染症の診断基準である尿の細菌数に到達してしまい診断が間違う可能性がある。低床式ベッドを使っているとそもそも介助時にバルンバッグの排尿部分が床に付いてないでしょうか?床の菌が多量にコンタミネーションして採尿すると緑膿菌やらなんやら多量に出てきますよ。

この話をしている時は後ろの席ではざわざわしていました。

Photo

「そんな、今から全部導尿なんて無理やわ。」
「導尿って、簡単に言うけど大変やわ。」
「全部あかん方の採尿方法やけど、こんなん帰って報告できへんわ。」

日頃から実施していない医療行為を導入するのは非常に労力が必要です。正直に愚痴っぽくなるのは当たり前ですが、どうなんでしょうか?ほんまに無理なんでしょうか。

自分の診断であれば導尿をするのでしょうか。
家族の診断であれば導尿をするのでしょうか。
患者だから導尿はしないのでしょうか。
正しい診断のためには、正しい検体採取が必要です。

喀痰は膿性痰をしっかりと採取する。
血液培養は2セット採取をする。
尿も正しく採尿をする。これはAMR対策の一環です。

かなり簡単な内容でしたが、看護師や薬剤師からの質問も多く良い会になったのでは無いでしょうか。

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コメント

かなり久しぶりにコメントを投稿させていただきます。

先日はご参加いただきありがとうございました。師範手前様にとっては、あまりにも簡単な内容で退屈な時間であったかもしれません。

まず、「ざわざわ」していた内容をご教示いただき、ありがとうございました。看護師の先生方に、微生物検査のことを理解していだくことの難しさを実感いたしましたが、逆に私自身も、ベッドサイドのことをあまりにも知らないな、と、今回のブログを拝読し感じました。検体採取からすべて始まるのが微生物検査ですが、その採取の具体的な場面をイメージできない人間が、偉そうに良質な検体を!とか言ってはダメですね。

尿や便は、実際にどうやって採ってるのか?

看護師の先生に実際をお話していただき、でも推奨はこうなので、こう改善してはどうか。少なくともこれだけは守ってほしい。

みたいな、もっと現場に近いもっと実践的な内容のセミナーも魅力的かもしれません。またいろいろと、ご指摘いただければ幸いです。

投稿: Kei | 2017年12月 5日 (火) 19時11分

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