みなさん感染防止対策加算の連携カンファレンスのネタに困りませんか?
平成24年から感染防止対策加算の取得条件には年4回のカンファレンスがあります。今年は平成29年ですので、開始して5年目です。もう20回くらいのカンファレンスをしていることになりますので、皆さんの施設でもそろそろネタがつきてきたかもしれません。
皆さんはネタをどのように探していますか?
昔、このブログを感染委員会にそのまま出している施設があると聞きましたが、こういう院内感染ネタはこのブログではなく、厚労省で一元化して紹介して欲しいですよね。
今回はこんなネタ提供です。
AMRアクションプランが示されて1年以上経過がしました。IDSAのASPガイドラインにはじまり、本年は抗微生物薬適正使用ガイドラインと8学会合同の適正使用に向けたガイダンスも出てきました。活字ばかりなので手軽に読むには抵抗がありますよね。
IDSAガイドライン2016年:http://www.idsociety.org/Antimicrobial_Agents/#Antimicrobial Stewardship
抗微生物薬適正使用手引き:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf
抗微生物薬適正使用手引き:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf
先日のカンファレンスではこのAMRネタから耐性菌のデータと血液培養の重要性について話をしました。1連の流れですね。
血液培養は重要なのは知っていますが、院内でしていないし、結果解釈に困るし、そもそもどのタイミングで採血したら良いのか分かりにくい、職員に教育するにも自分が熟知していないので自信が無いなど、院内で血液培養検査を実施してなければ中々十分な介入ができないのが現状です。だって、院内実施していても十分で無い施設も多いのですから。
抗生剤が要らない施設が無いように、血液培養が要らない施設は無いのです。
とりあえず、施設間の比較をするために適切な採取ができるか検証をしなければなりません。あまり複雑なパラメータを比較しても良くないので、最低①1000患者当たりの採取セット数と②2セット採取率を比較することは良いかと思います。抗菌薬で言えばAUDを比較するみたいなものですかね。
①は延べ入院患者数と血液培養のセット数(2セット採取でも1回なら1セットで換算)が分かれば十分です。延べ入院患者数は自院の医事統計で調べてください。もしくは病床数に30をかけて、90%をかけると90%の稼働率としての延べ入院患者数が概算できます。
=総セット数÷延べ入院患者数×1000
②は血液培養の総セット数と2セット採取数が分かれば十分です。
=2セット採取数÷総セット数×100
今年の当院は①が32.7、②が90%でした。
おそらく、自院で血液培養をしている施設とそうでない施設の開きは大きいと思います。
うちは慢性期なので血液培養の対象患者が少ないんですよとか、救急患者があまり居ないので陽性になりそうな患者が居ないんですよ、という話も聞きますが、腎盂腎炎の患者も少ないのでしょうか、肺炎患者も少ないのでしょうか。腎盂腎炎や肺炎などは高齢者の感染症に当たり前のようについてくるので必要でしょうし、ルートキープ出来ない場合はCVも作るので余計に血液培養は重要になってくると思います。何度も言いますが、「抗生剤が要らない施設が無いように、血液培養が要らない施設は無いのです。」
血液培養の報告には色々とオプションがつけれますが、それを知らない医師も多いのが現状です。グラム染色の結果が直ぐに貰えるのも知らないし、グラム染色の結果で抗生剤の処方内容が劇的に変わるということも知る機会が無いのかもしれません。
グラム染色結果を参考に不明熱と思われている患者の身体所見を取り直しているとわかることも出てきます。菌体の特徴を掴み、菌種推定をして臨床症状と照合しながら感染症の原因臓器を特定して、それに併せた抗生剤を処方することこそ、ASPに必要で簡単なアクションになるかもしれません。最終的には同定・感受性結果がDefinitiveには必要ですが、それ以前に抗生剤を絞り込むことができる場合もあります。
連鎖が長いのが特徴。ボトルは溶血し、皮膚軟部組織感染症を疑うとなればカルバペネムでなくペニシリン(PCGやABPC)で対応可能かもしれません。
連鎖が長いのが特徴。ボトルは褐色に混濁し、心雑音があれば感染性心内膜炎を疑ったたり、ケモ中で粘膜障害があれば発熱性好中球減少症の原因が菌血症であることがわかるかもしれません。Viridansはペニシリン耐性、セフェム耐性菌が問題になるので、感受性がわかるまでペニシリンやセフェムにVCMを加えても良いかもしれません。CFPMも万能ではありませんので。感染性心内膜炎ならPCGのMICによってはアミノグリコシドを併用しないとダメかもしれません。
血液培養のE. faecalis
連鎖が短いのが特徴。泌尿器や消化器に何らか感染症のフォーカスがあればこの菌である可能性が出て来る。Enterococcusはセフェムが無効ですが、E. faecalisならペニシリン、E. faeciumならVCMが第一選択になります。菌種不明であれば併用またはVCMによる初期治療開始になります。
連鎖が短いのが特徴。泌尿器や消化器に何らか感染症のフォーカスがあればこの菌である可能性が出て来る。Enterococcusはセフェムが無効ですが、E. faecalisならペニシリン、E. faeciumならVCMが第一選択になります。菌種不明であれば併用またはVCMによる初期治療開始になります。
検査室も外部委託していてもその情報はfaxか何かで届くのですから、そこからのアクションは非常に大切です。
安易な発想で申し訳ありませんが、アルゴリズムを書き出してみました。これが正解ということではありません、一応こういうことでグラム染色は使えそうですという一例です。ある程度の幅を持って見ていくことが大切です。
出てきた菌を少し解釈しながら報告に活かすのは検査室の大きな役割であり、ASには必要です。そのためにも血液培養の採取状況を比較し合うのは重要な感染対策の一つでは無いでしょうか。
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