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2017年8月28日 (月)

細菌検査室はAMR活動に必要なのは明確なことである

臨床検査技師以外の方は読んでもピンと来ないかもしれません。すいません。

先日からセミナーや研修会やらと参加していますが、勉強会をするたびに出てくる言葉は「微生物検査室はAMR活動から取り残されそうである。」という話題がある。

先日8学会合同で抗菌薬適正使用のためのガイダンスが出ていますが、あまり微生物検査について言及されているものがありません。血液培養2セットが必要とか、感受性はMICを測定してその評価に当てましょうとか、バイオマーカーを有効活用しようとか。。。そもそも、このガイダンスは最初ガイドラインだったのですが、初期作成段階で臨床検査技師がメンバーに入っていなかったこともあり、抗菌薬適正使用について記載内容が現在の細菌検査の現状を反映していないことが一つの要因と思う。しかし、記載されないことは、それだけで済まれることでは無いと考えることができないだろうか?

もともと、今回は外国で作成されたガイドラインを日本語訳にして類似のガイドラインを作っているのだから、日本の現状に合わないのは皆さんご存知の通りだが、部分的には共通している話題もある。

Photo 8学会合同で発表されたガイダンス
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/1708_ASP_guidance.pdf

IDSAのガイドラインでは質量分析を使用しても抗菌薬適正使用のために直ぐに繋がるものでは無いとか、培養検査の意義はどれだけあるのかとぼんやりしか書いていない。グラム染色を用いた診療が日本では進んでいるが、記載が無い。このガイドラインを参考にした場合には、AMR活動において細菌検査室には何ができるのか?と思わざるを得ないと考える。

細菌検査室が行っている業務には菌を分離して報告をするのが最低限行えることであるが、これは当たり前のことである。この作業は細菌検査室がしなくて誰がするのか?と考えると必然的に答えがでてくる訳である。

検体採取の指示は誰がするのか?ですが、それは医師です。もしくは一部看護師さんが医師にお願いしてしていることがある。医師以外は検査処方権が無いからである。

結果の解釈は誰がするのか?

・菌の臨床的意義付けをするのは医師か臨床検査技師
・感受性の結果から抗生剤を選択するのは医師か薬剤師

果たして今の状況でどの施設も臨床検査技師が検出菌の意義付けを話できるのかという疑問がある。認定臨床微生物検査技師であればその意義付けはできるだろうが、微生物に対しての知識が無い場合は到底無理である。そういう状況が今回のAMRから少し外れているのかもしれない。菌のことでテレビやラジオなどメディアに臨床検査技師が登場することはあまりないことも国民の認知度が低い原因の一つかもしれない。分離した菌の同定をするのが臨床検査技師であれば、国民へのメッセージも臨床検査技師が行うべきであると良く思う。

例えば、菌の臨床的意義付けをする場合は対象臓器に影響の強い菌かどうかが肝心である。一番特徴的なのが大腸菌の尿路感染症である。尿から大腸菌が大量に出ていて、発熱があれば急性腎盂腎炎を疑うため、抗生剤の投与を行うので、感受性に見合った抗生剤の選択をしなければならない。尿を出して、グラム染色でGNRが多数見えると、「ああ、大腸菌かな」と思う訳で、GNRの臨床的意義付けが行われる。そこには臨床検査技師がどの程度役立っているのか明確でものはない。

翌日発育して大腸菌だろうと思われるコロニーが生えてくる。まあ、細菌検査をはじめて1ヶ月もあれば大腸菌のコロニーなどは見分けがつくわけである。推定菌を返さないまでも、GNRの選択培地に発育するのでグラム陰性桿菌であることは明確である。そこにも臨床検査技師がどれだけ役に立っているのか明確なものはない。

Mac_e_coli GNRしか生えない培地(マッコンキー寒天培地)に赤色コロニー。当たり前だが腸内細菌群と言えない臨床検査技師は居ないと思う。

さらに次の日には感受性検査結果が出てくるが、検出菌が大腸菌でCTX耐性、CAZ耐性、LVFX耐性、CMZ感受性となれば、ESBL産生大腸菌の可能性が高くなります。大腸菌のESBL産生菌は、今や市中で分離される大腸菌のうち2-3割を占めている菌です。安易にCTRX投与、LVFX投与とすると足元をすくわれかねない内容です。結果はLISで飛んで画面で確認ができる。それを医師や薬剤師が見て抗生剤の変更を行う。ここにも大腸菌ESBL産生菌の検出が直接治療にどの程度結び着き、臨床検査技師がどれだけ役に立っているのか明確なものはない。

そうです。臨床検査技師がしている普段から仕事はAMR活動には欠かせない存在なのですが、いつしかAMRには必要なの?と思われる仕事に変わっているのです。確かに、臨床検査技師がベッドサイドに赴き、結果について医師や薬剤師に説明したりする機会は少ないので、尚更検査結果について顔が見えるものでは無いのである。役に立っているのかでは無く、役立てれるものに検査結果を臨床検査技師が使えているのかどうかである。昔から菌を分離して診断や治療に貢献してきた、院内感染対策に貢献してきた歴史は長いので自覚をもってやれば良いのです。

積極的に気になる検査結果は医師に報告をする。耐性菌であれば感受性の抗生剤について提示を行う。変更するかどうかは医師が決定するのであり、検査結果に基づいた処方提案をすることは別に間違ったことではないと思う。

ただし、耐性菌については機序などは知っていても、抗生剤に対しての知識はそこまで長けてないのが現在の問題点である。分からないのであれば薬剤師と相談して処方提案をより確実なものにすれば良いだろうし、起炎菌でない可能性があれば処方変更する場合に疑義を言えば良いのだから。感染症を専門にしている医師で無ければ、菌の病原性に基づいた抗生剤処方はハードルが高すぎることであり、そこに医師と薬剤師と臨床検査技師の立ち位置が自ずから決まってくるのでは無いかと思う。

培地に生えた菌は全て病原菌ではない。
培地に生えないけど病原菌はそこにある。

細菌検査は培地というツールを上手に使いながら、いかに病原菌を栽培し、目に見える形にするのか。また、生えた菌が必要なものか、不要なもので退治が必要なのか、しっかりと臨床的意義を考えながら結果を報告していくことは本当に必要な時代になったと言える。

そういう意味で、グラム染色の結果をより具体的に行うことはAMRに繋がると思う。
皆さん、やれること、気付いたことは言葉に起こし、suggestしていきましょう。

尿から分離された大腸菌のグラム染色所見

3 尿に見える大腸菌(孤立した菌が多く、中型で辺縁がやや丸い)

これをみて、どういう疾患が考えられるのか、感受性率はどうなっているのか、頭に浮かべながら見ていく習慣をつけていくと良いと思います。

尿検体の場合は

・腎盂腎炎なのか?(実質臓器感染なのか)
・膀胱炎なのか?(管腔臓器感染なのか)
・男性なら前立腺炎なのか?(尿路感染症と違い抗生剤の投与期間が違う)
・そもそも無症候性細菌尿なのか(抗生剤処方が必要なのは妊婦と泌尿器手術前のみ)

を類推していく必要があります。

ESBLであれば検出時に使用抗生剤をチェックして耐性の抗生剤であれば報告をする。

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2017年8月24日 (木)

今年もしますEBICセミナー in Kobe 2017

何かと感染症や臨床微生物のイベントが多い神戸ですが、今度はEBICセミナーを開催します。

毎年開催していますEBICセミナーですが、神戸開催も今年で4年目(?)です。

http://www.ebic.jp/news/2017se2-in-kobe-2.html

CLSIは日本で汎用されている薬剤感受性検査の基準です。毎年細かく更新されていきますが、中々まとめて知る機会がありません。EBICセミナーではこれらをダイジェストにお知らせしていくと同時に、感受性検査結果をいかに有効に臨床現場で使えるようにするのか考える貴重な機会を提供してくれます。

去年と同様CLSIの解説は順天堂大学の上原先生が解説してくれます。
今話題のAMRについては神戸大学の岩田先生のレクチャーがあります。

お時間があれば是非参加してください。
私はいつも臨床で役に立ったグラム染色の症例についてお話をします。
今回も30分時間を頂き、症例に沿って菌の鑑別や症例との融合、抗生剤の選択について簡単に話していきます。

グラム染色所見は菌が見えるのも見えないのも情報として必要です。鑑別に挙げたが菌が居なければ鑑別から外れる可能性がありますし、鑑別に挙げた疾患では非コモンな微生物であれば非常に臨床的意義が高くなります。

日常、感染症例に遭遇している中で、「この情報はどう読むのか?」と悩んだり、「あ、出来れば早く情報欲しかったなあ」と後悔する症例はあると思います。そういう症例は直ぐに解決しないので、1つ1つ解消していき、次回同じ症例に遭遇した場合に使えるようにしていくことが大切です。

今回は2例準備しました。時間があればおまけ症例2つ入れ込みます。

皆さん宜しくお願いします。

写真は紹介する1つのグラム染色像です。材料は眼脂です。

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2017年8月 8日 (火)

耳原GP+1セミナー体験記

7月30日に大阪の耳原総合病院でGP+1セミナー感染症編が開催されお話する機会を頂きました。

20170730_093931 キレイな病院ですね。

今年、耳原総合病院には総合内科に、あの藤本卓司先生が赴任され一層厚みのある診療が行われているようです。藤本先生と言えば感染症レジデントマニュアルの著者であり、グラム染色所見を感染症診療の一つとして、初学者向けに分かりやすく、またポケットサイズの参考書を作られています。http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81168

個人的には藤本先生とは感染管理のお仕事でご一緒させて頂いた15年程度のお付き合いがあり、今回呼んで頂きました。この研究会で学んだ内容は数知れず。http://www.kipn.net/index.htm
当日は、私のグラム染色・培養検査の話と
・埼玉医大 岡先生の感染症プラチナ特講 (感染症プラチナマニュアル:https://www.medsi.co.jp/books/products/detail.php?product_id=3556

・滋賀医大ベストティーチャー賞長尾先生の胸部画像のお話 (やさしい呼吸器教室:http://tnagao.sblo.jp/

・耳原総合病院の藤本先生の身体所見のお話

+総合内科の河村先生より感染症・身体所見クイズ

と盛り沢山の内容でした。

こんな講師陣の中に混じって良いのかと少し感激しながら参加しました。
当日は声を掛けて頂いた藤本先生はじめ、耳原総合病院のスタッフ(特に医局課長の川畑様)の皆様ありがとうございました。

20170730_094011
募集人数が50名でしたが、当日は研修医や専攻医中心に100名近く参加されており、中にも学生が何人が居られました。

20170730_100359 熱気ムンムンです。

当日は微生物が苦手な受講生も多いと思い、かなりベーシックな内容からGP+1だけに、+1として同定・感受性が終わるまでに推測できるものについて話をしました。

微生物検査は原因菌の特定に必要な検査であり、その内容を深読みすることは臨床推論を行う上でかなりのアドバンスであると思います。

特にグラム染色所見を用いた感染症診療については、患者さんが来て主座がわかればそこの材料を採取、染めて抗生剤を絞るとなんと簡便な方法なんでしょうか。しかも炎症の状態も目の当たりにできます。

培養検査はグラム染色の欠点を補うことができる検査です。グラム染色より感度が良いので、グラム染色では確認が出来なかった菌について考察することができます。また、グラム陰性桿菌とざっくり切っても、翌日培養で確認すると培地上のコロニーが全く違うので、グラム染色所見より明確に菌種推定ができます。


2 細菌性腸炎患者の糞便グラム染色所見
グラム陰性桿菌ばかりで、らせん桿菌(Campylobacter)も無いし、これだけではわからないかな。

3 DHL寒天培地上のコロニー。

これだけハッキリしていれば十分に菌種推定が可能ですね。

7 緑膿菌とKlebsiellaの違いを言葉にするとこうなります。

当日は会場からグラム陰性桿菌で菌が細い場合には腸内細菌群は除外しても良いのでは無いか?という高度なコメントも頂きました。

2017gp1緑膿菌とKlebsiellaもグラム染色所見ではよく見れば違いが分かるのですが、分からなくても翌日検査室に行けば菌の色や形は大きくちがいます。

緑膿菌には抗緑膿菌作用の抗菌薬が必要ですが、Klebsiellaには必要がありません。抗緑膿菌作用を狭めるだけでも抗菌薬の絞込ができていることになります。

コロニーの見方は教科書的には色々あり、臭いや色、光沢、粘り気なども参考になります。
1 培地や培養の条件にも左右されますね。

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また、グラム染色の大きなメリットは複数菌でも同時に検出可能なことと、それが感染巣から出てきているかどうかの確認も可能なところです。肺炎球菌は尿中抗原でも検出可能ですが、M. catarrhalisは不可能で、尿中抗原のみ陽性でペニシリンだけを使うと失敗するので、グラム染色所見を同時に考えて抗菌薬を選択することが必要です。

5 翌日培養ではこんなに違います。

6 肺炎球菌は自己融解を起こします。

培養の欠点をグラム染色で補えますし、グラム染色の欠点を培養で補うこともできます。
ここに身体所見と画像所見、総合的に捉える診察スキルが加わると巨大なパワーが得られるのは間違えないですね。

医師の皆さんは検査室から診療のコツを教えてもらう機会があると思ってもこなかったと思いますが、検査室には色々と情報があります。気になれば検査室に顔を出してみては如何ですか。

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