感染ラウンド 先日の疑義照会について
平成28年度が始まりました。皆様の施設でも新人さんが配属となり気持ちもフレッシュになっていると思います。
さて、平成28年度診療報酬改定において感染防止対策加算の点数は変更がありませんでした。
1.感染防止対策加算1・・・400点
2.感染防止対策加算2・・・100点
3.感染防止対策地域連携加算・・・100点
感染防止対策加算の条件は下記の要件が1つ加わりました。これは加算1も2も同じです。
「感染制御チームは1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実務状況の把握・指導を行うこと。」
と記載があります。
そして、平成28年3月31日に疑義照会(その1)が出てきまして、その中に感染防止対策加算の要件についての照会がありました。
院内巡回、つまりラウンドの要件についてですが、感染制御チームとして届出をしたメンバー全員を含めたメンバーでラウンドを実施しなければ算定できないということが明示されました。これは、院内感染は専門的な内容を色々な職種の特性を院内感染対策に活かすためには当たり前のことだと思います。
また、②にはこのような内容が書かれています。
「院内巡回は、毎回全ての部署を回らなければならないのか。」
解答は以下の通りです。
解答は以下の通りです。
「必要性に応じて各部署を巡回すること。なお、少なくとも各病棟を毎回巡回するとともに、病棟以外の各部署についても巡回を行っていない月がないこと。」
つまり病床を有する場所は毎週ラウンドをすることが必要となり、それ以外の部署も最低月1回は漏れ無くラウンドすることが必要ということが明示されています。
既に実施されている施設は多いと思いますが、未だ対応できていない施設は今後の対応について検討する必要があると思います。
例えば、20病棟ある場合で1病棟の訪問時間が5分掛かる場合。
5分☓20病棟=100分+α(移動時間)
2時間弱のラウンド時間になります。
これが出来ていないことで実際に返納となった施設もあると聞きます。
ラウンドの方法も工夫が必要ですが、あくまでも犯人探しに来たという感覚では無く、安全対策、感染対策の一連の作業の中で来ましたという対応でラウンドすることが必要になるでしょう。
一つ検査の立場からお話しますが、全国の微生物検査室のうち1人で運用している施設が50%以上、5名以上在籍している施設が6%しかありません。微生物検査の担当になると、微生物検査業務は勿論のこと、週1回程度の感染情報レポートの作成(これは入院基本料の算定条件)、院内ラウンドなど非常に負担が多い状況が続いています。しかし殆どの施設では増員は行われずに対応されていると思います。
先日、薬剤耐性菌のアクションプラン(AMR)が関係閣僚会議資料として示されました。中でも院内感染対策の充実および、耐性菌サーベイランスの強化、検査体制の強化、抗生剤の適正使用についても書かれています。国策として耐性菌制御が示されているため、微生物検査室担当者の活躍の場が増えると思います。保険点数ばかりに限定された人員配置では無く、業務の複雑さや現在の医療環境に応じた微生物検査室の人員配置を適正に考えて貰えるようにして欲しいものです。
少し愚痴っぽくなりましたが、今が変革期にあることは間違いありません。乗り越えれるように皆さん協力をしていきましょう。
前述したAMRにはグラム染色を活用して不必要な処方を減らすこともできるので多いに活用を考えていきましょうと記載があります。グラム染色は初期治療に必要ですし、遺伝子検査が導入されてもグラム染色は大切な検査の一つになるのは間違えありません。
前述したAMRにはグラム染色を活用して不必要な処方を減らすこともできるので多いに活用を考えていきましょうと記載があります。グラム染色は初期治療に必要ですし、遺伝子検査が導入されてもグラム染色は大切な検査の一つになるのは間違えありません。
継続してグラム染色による感染症診療支援を続けていきましょう。
下記は慢性気道感染症患者に発生した肺炎球菌性肺炎です。(重症度にもよりますが)グラム染色により緑膿菌と思われる菌は定着菌と考えて、抗生剤の絞込みができる症例の一つではないでしょうか。
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コメント
ICDとして公立の総合病院で院内感染対策に携わるものです。比較的少数の医師で診療をしている関係で、なかなか感染対策に従事できる医師を確保することもできず、医師としては私一人で対策チームをほかのスタッフとともにやっております。ラウンド時も救急患者や急変患者の対応となり、毎週のラウンドに参加できるとは限りません。ほかのスタッフも同様で、1-2人が欠ける状態でラウンドというのもいつものことです。また、院内の全病棟を毎週回るとなると、2時間どころではなくなります。速足で回ってしまい、ただ回っただけって感じになってしまいそうです。1病棟5分ってのは冗談じゃないでしょうか・・・・ 手の空いたメンバーでさっと行けるときに回るってのもだめなわけですよね。全員揃わないとだめってのは無茶すぎます。今回の疑義紹介への返答は、非現実的過ぎませんでしょうか。もっと各病院の自主性を尊重してくださるべきじゃないかと思います。やってられませんって、大声で叫びたくなるような内容です。
投稿: Taa | 2016年4月14日 (木) 13時03分
Taa様
コメントありがとうございます。
そうですね。全員が専従であれば問題はそれほど大きくはなりませんが、通常は看護師が専従で他は専任です。
専任はどうしても業務の合間を見ながらのラウンドになってしまいますし、病院なので緊急対応も迫られることが多いと思います。
なので、スポットで参加できないものはやむを得ないかもしれませんが、ルチンで参加できない状況になるのは避けたい状況ですね。しかしそうすると本来の業務を誰かに代わってもらうしか無く対応が困難なケースもでてきそうです。
うちは短時間の訪問についても前向きでは無いのですが、意外に短時間でも介入もできるし、チェックもできることはあります。網羅的ではありませんが、例えば消毒薬の開封日がしっかりと記載されているか、リキャップしていないかなど1項目チェックを断続的に続ける+現場とのコミュニケーション促進はそれほど悪くないと思っています。
今後疑義照会が出てきますので見解を待ちたいと思います。
Taaさんのように思われている方は非常に多いと思います。
投稿: 師範手前 | 2016年4月14日 (木) 18時54分
疑義照会について改正版が出たそうですね。
全員参加ではなく、2人以上であること、毎週全病棟ではなく、リスクの高い病棟を毎回巡回し、それ以外の病棟も月に最低1回、病棟以外は2か月に1回以上と、まともな回答になっていました。
これなら、がんばれば何とかやっていけますし、顔見世程度にして全部回った実績をつくるみたいなばかなことは避けられます。
常識的な回答で安心しました。きっと全国から苦情が殺到したんでしょうね。
投稿: Taa | 2016年4月26日 (火) 12時16分
結局何かラウンドの趣旨なのか皆さん同じ方向性だったことが今回良くわかりましたね。
投稿: 師範手前 | 2016年5月 4日 (水) 22時40分