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2016年4月13日 (水)

感染ラウンド 先日の疑義照会について

平成28年度が始まりました。皆様の施設でも新人さんが配属となり気持ちもフレッシュになっていると思います。

さて、平成28年度診療報酬改定において感染防止対策加算の点数は変更がありませんでした。

1.感染防止対策加算1・・・400点
2.感染防止対策加算2・・・100点
3.感染防止対策地域連携加算・・・100点

感染防止対策加算の条件は下記の要件が1つ加わりました。これは加算1も2も同じです。

「感染制御チームは1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実務状況の把握・指導を行うこと。」
と記載があります。

そして、平成28年3月31日に疑義照会(その1)が出てきまして、その中に感染防止対策加算の要件についての照会がありました。

Photo

院内巡回、つまりラウンドの要件についてですが、感染制御チームとして届出をしたメンバー全員を含めたメンバーでラウンドを実施しなければ算定できないということが明示されました。これは、院内感染は専門的な内容を色々な職種の特性を院内感染対策に活かすためには当たり前のことだと思います。

また、②にはこのような内容が書かれています。
「院内巡回は、毎回全ての部署を回らなければならないのか。」

解答は以下の通りです。

「必要性に応じて各部署を巡回すること。なお、少なくとも各病棟を毎回巡回するとともに、病棟以外の各部署についても巡回を行っていない月がないこと。」

つまり病床を有する場所は毎週ラウンドをすることが必要となり、それ以外の部署も最低月1回は漏れ無くラウンドすることが必要ということが明示されています。

既に実施されている施設は多いと思いますが、未だ対応できていない施設は今後の対応について検討する必要があると思います。

例えば、20病棟ある場合で1病棟の訪問時間が5分掛かる場合。

5分☓20病棟=100分+α(移動時間)

2時間弱のラウンド時間になります。

これが出来ていないことで実際に返納となった施設もあると聞きます。

ラウンドの方法も工夫が必要ですが、あくまでも犯人探しに来たという感覚では無く、安全対策、感染対策の一連の作業の中で来ましたという対応でラウンドすることが必要になるでしょう。

一つ検査の立場からお話しますが、全国の微生物検査室のうち1人で運用している施設が50%以上、5名以上在籍している施設が6%しかありません。微生物検査の担当になると、微生物検査業務は勿論のこと、週1回程度の感染情報レポートの作成(これは入院基本料の算定条件)、院内ラウンドなど非常に負担が多い状況が続いています。しかし殆どの施設では増員は行われずに対応されていると思います。

先日、薬剤耐性菌のアクションプラン(AMR)が関係閣僚会議資料として示されました。中でも院内感染対策の充実および、耐性菌サーベイランスの強化、検査体制の強化、抗生剤の適正使用についても書かれています。国策として耐性菌制御が示されているため、微生物検査室担当者の活躍の場が増えると思います。保険点数ばかりに限定された人員配置では無く、業務の複雑さや現在の医療環境に応じた微生物検査室の人員配置を適正に考えて貰えるようにして欲しいものです。

少し愚痴っぽくなりましたが、今が変革期にあることは間違いありません。乗り越えれるように皆さん協力をしていきましょう。

前述したAMRにはグラム染色を活用して不必要な処方を減らすこともできるので多いに活用を考えていきましょうと記載があります。グラム染色は初期治療に必要ですし、遺伝子検査が導入されてもグラム染色は大切な検査の一つになるのは間違えありません。
継続してグラム染色による感染症診療支援を続けていきましょう。
下記は慢性気道感染症患者に発生した肺炎球菌性肺炎です。(重症度にもよりますが)グラム染色により緑膿菌と思われる菌は定着菌と考えて、抗生剤の絞込みができる症例の一つではないでしょうか。

3 喀痰☓1000

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