Corynebacteriumの同定と感受性はどうしているのか?
先日、ある研究会に参加させて頂きました。
備忘録的にそこでの内容について検査を担当しているものとしてコメントをさせて頂きましたのでコピペして紹介します。
「Corynebacteriumの同定と感受性ってどうしているのか?」ということをたまに聞く機会があります。恐らく医師の殆どは同定方法自体どのように行われているのか、知らないと思いますし、ブラックボックス化している部分もあります。
感染症かもしれない症例でも、コンタミネーション扱いになっていたり、検査室では発育しているのにも関わらず同定感受性も実施されておらず、GPR(Gram Positive Rod)のみで返されていることがあるかもしれません。恐ろしいです。
感染症かもしれない症例でも、コンタミネーション扱いになっていたり、検査室では発育しているのにも関わらず同定感受性も実施されておらず、GPR(Gram Positive Rod)のみで返されていることがあるかもしれません。恐ろしいです。
そう言っては何ですが、当院の方法などを含めて紹介をさせて貰います。
1. Corynebacteriumについて
Corynebacteriumは無芽胞のグラム陽性桿菌で、グラム染色所見では、棍棒様(club shape)に見えV字もしくはY字に確認されることが多いです。グラム染色所見では一見、S. pneumoniaeやEnterococcusのような楕円形の球菌と間違い易いのですが、連鎖状にならないことから鑑別が可能と言われています。上気道粘膜や皮膚に常在している菌のため、呼吸器材料や皮膚材料でも良く見られる菌の一つでは無いかと思います。
そのため、CV関連血流感染でたまに問題になることが当院でもありますので、血液培養からCorynebacteriumが出たらカテーテル感染を疑うようにコメントをしています。
脂質好性のCorynebacteriumというものがあり、乳腺炎で有名なC. kroppenstediiは通常の培養をしても発育が悪く見つかりません。Tween80という脂質を重層すると発育性が上がり検出しやすくなりますが、そこは乳腺外科と検査室がどの程度この感染症に関して相互理解があるかと思います。
また、Corynebacteriumの中にはC. diphthriaeがありますのでジフテリア症は感染症法でも届出疾患になっています。最近の症例報告ではCorynebacterium ulceransでジフテリア毒素を産生するものがあり報告があります。
この件については厚労省がQ&Aを作るほどの入れ込みです。
2. 同定について
同定は自動同定機器では殆ど対応が無理なため、従来法と呼ばれるマニュアル検査が中心になるか、ApiCoryneと呼ばれるシスメックス社の簡易同定キットを用いることが多いです。菌種を分類する場合、多くが文献や教科書を参考にしていきますが、英語文献が多いため英語が苦手な人の場合は同定が難しくなります。
菌の形状では分け難い類縁菌があり、ArcanobacteriumやBrevibacterium、Rhodococcus,Propionibacteriumなどがあり、培地上のコロニー性状(色や臭い、発育速度など)を観察することが大切になります。経験している人は容易ですが、微生物検査の皆さんがそうではありません。
最近では16s-rRNAやMALDI TOF-MSでの菌種同定する機会が増えてきましたが、菌種が異なりますが、菌の相同性が高く生化学性状を追加で確認しなければ同定が困難なことがあります。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23104363
一度、Corynebacterium prooinquumの感染性心内膜炎が出た時に経験しました。最終的に生化学性状が鍵となり同定を行いました。
3. 感受性について
薬剤感受性の基準についてはCLSIとEUCASTともに判定基準を持っています。
CLSIについてはM45-Ed3に記載されていますが、私は個人的に内容を確認していないので詳細は内容を確認してください。下記はM24-A2のものです。
方法:ウマ溶血液添加ミューラーヒントン培地を用いて、好気で24-48時間培養をします。β-ラクタムに関しては24時間培養で一旦判定し、感受性であれば48時間まで培養延長します(発育が遅い菌なので)、最終は48時間で行います。
EUCASTは無料ですのでこちらから閲覧ください。
EUCASTではVCMのBPは2μg/mlに設定されています。これはStaphylococcusなどと変わりないですね。当院でもMICを測っていますが、通常、0.5-1μg/mlの株が多いです。
ある文献で血液培養のCorynebacteriumはコンタミネーションが殆どですということが出てきます。確かにその傾向はあるのですが、状況によりその判断が異なることがあると思います。CRBSIもそうですが、骨髄炎や感染性心内膜炎などの症例報告もあり、Corynebacterium=コンタミネーションというのが検査室で一人歩きしているのも見る機会があり、こういう研究会を通して情報提供を行うことは非常に良い機会と思います。
全国的に微量液体希釈法を用いてMIC測定をされているかどうか分かりませんが、多くが基準の無いディスク拡散法を行っている可能性はあります。個人的には同定に時間がかかりますので、重症ケアにはMICが必要と思っていますので、大凡の菌種とMICを見せて初期治療に対応することが多い菌種の一つかと思っています。
微量液体希釈法については自動機器のパネルがありますが、多くが低レンジの測定が出来ていませんので、当院では低レンジ測定可能なMICパネルを別途購入して常備しています。
各施設の事情は良く分かりませんが、低レンジのMICを測れるような感受性のみのパネルを常備しておくのも一つかもしれません。通常、培地を変えることで菌種対応も可能なので検討してみても良いかも知れません。中々検査室で自発的に購入希望を行ってもコストの問題もあり却下されるケースもあると聞きます。そのため医師の助言が非常に多きな後押しになることも多々ありますので今後もご協力をお願いします。
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