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2016年2月11日 (木)

Carbapenem Inactivation Method (CIM)をしてみた件

先日の臨床微生物学会総会でもありましたが、カルバペネマーゼの新らしい検査として「Carbapenem Inactivation Method (CIM)」というものが紹介されていました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4370852/pdf/pone.0123690.pdf

日本語で言えば「カルバペネム不活化法」とでも言うのでしょうか。
Carbapenem Inactivation Method (CIM)について少し気になったので手持ちの株で実際に検査を実施してみました。原文を参考にしましたが間違っていたらすいません(ご指摘ください)。

1.前培養

1)被検菌の準備
被検菌を血液寒天培地かミューラーヒントン培地(MHA)で一昼夜培養をします。

たぶん、選択性の強い培地だと培地成分の混入により正しくでない可能性があるからでしょうか?CarbaNPの場合はpHに影響が出てくるのでダメなのは知っていますが。一先ず選択性の弱い培地で前培養をするようです。

2)インジケーター株の準備
インジケーター株として改良ホッジ試験でも用いたE. coli(ATCC 25922)を血液寒天培地かミューラーヒントン培地(MHA)で一昼夜培養をします。

この株はABPCのみ耐性株なので、どうしても無い場合は同様の感受性をしめした臨床分離株を準備することで代用可能かもしれない(これはその場しのぎなのでお勧めはしません)。ATCC 25922は内部精度管理株ですので皆さん準備はしておきましょうね。

2.前処理

1)マイクロチューブに400μLの滅菌水を準備し、10μLの白金耳で1白金耳菌を搔き取り均等に混和する。

2)MEPMが10μg含有されたディスク(ここではOxoidだけど同じ規格であれば良いんだと思う)を1)で作成した菌液に浸し、35℃で2時間培養を行う。

3)インジケータ株(E. coli ATCC 25922)をMcFarland濃度0.5に調整してMHAに撒く(通常の感受性検査のように綿棒で3方向に塗布する)。

4)3)で準備したインジケータ株塗布済みMHAに2)で処理済みのMEPMディスクを取り出し培地の上に置く(白金耳で掴めとあるが難しいです)。

5)再度一昼夜培養して判定を行う
(通常は6時間培養ですが、MEPMの予備培養と加えると8時間かかります。通常、ルチンであれば昼前に同定・感受性判定があるので業務時間内には終わりませんのでオーバーナイト化して判定してみました)

3.判定

1)陽性---阻止円なし
2)陰性---阻止円あり

うちでした結果は以下のようになりました。ちょっとディスクの回りに菌が発育してきているものもありますが、ピンセット汚染の可能性もあるのでご了解ください。

Carbapenem_inactivation_method_ci_2
解釈
カルバペネマーゼ産生菌では菌によりMEPMが分解されて抗菌活性が不活化してしまうので阻止円が無くなってしまい、非産生菌ではMEPMの抗菌活性が残ったままなので阻止円ができるということらしい。こんな簡単な現象を活用するとは何とも自分の頭の固さが滲み出てくる思いです。

報告では、腸内細菌科細菌では感度100%、特異度97%、ブドウ糖非発酵GNRでは感度97%、特異度98%と良好な結果が得られています。ブドウ糖非発酵GNRでは少し偽陽性と偽陰性が出てくる(PPV 96.3%、NPV 99.4%)ようなので、菌種同定と併せて考察することが必要になるようです。

MEPMのMIC≦0.25でカルバペネマーゼ産生菌でも検出できたとなっていますので、MICの結果に大きな影響を受けないこと、新しい型のカルバペネマーゼにも影響を受けないことが良いところでは無いでしょうか。CarbaNPとの比較もありますが、CarbaNP法ではOXA型カルバペネマーゼで偽陰性となっているのですが、このCIMでは陽性結果が得られているようです。

また、CIMは翌日判定のため耐性菌の検出まで時間がかかってしまうことがデメリットかもしれません。CarbaNPだと早くて1時間くらいで分かるので、日本ではMBLのCREが多いのでSMAを使ったりと導入のためのシェーマは考えないといけませんね。

CarbaNPについてはここを参照。
この報告ではCarbaNPについての違いについても書かれていますが、CarbaNPは色調変化が出てこない株があるとか、主観的に見るので見落としがあるとか、試薬調整が難しい意など問題点が取り上げられています。CIMはこれらの問題点を少なくして初心者でも分かりやすい方法であること、OXA型も検出ができる強みについて書かれています。

最終的には次世代シークエンスを使ってカルバペネマーゼを特定してみました的なことも書かれていました。まあ、表現形で耐性菌を検出するのは限界があるんでしょう。

上記の感度と特異度があれば十分検査室でも使えると思います。

耐性菌とのイタチごっこは抗生剤の開発だけでなく、耐性菌の検出にも及んでいます。
今年はG7でも耐性菌の話題が出てきますし、検査室も立ち止まっていてはは時代遅れになりそうですね。

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2016年2月 8日 (月)

CLSI太っ腹

薬剤感受性検査は菌種と薬剤の組み合わせで異なります。

つまり同じ抗生剤でも菌種が変われば判定基準も大きく変わることがあります。これは耐性機序の問題、病原性の高低にも大きく関わってきます。
感受性とは通常の投与量で治療が成功するという意味で”S”と付いています。
良くSensitiveという方もいらっしゃいますが、正しくはSusceptibileのSです。

日本で使われているものはCLSIのドキュメントですが、今まで有償だったのですが、なんと無償で閲覧が可能になっていると情報を頂きました。太っ腹ですね。


今までEUCASTが無償でしたのでこちらを先にみておりましたが。これからは自由に比較できるようになり嬉しいですね。

EUCAST2016ドキュメント


英語が苦手な方もいるでしょうが無料ですので頑張って読んで臨床に活かしてください。

簡単なダイジェストは日本臨床微生物学会のHPに記載されています。併せて参考にしてください。 http://www.jscm.org/kokusai/2016_clsi.html

下記は先日行われたグラム染色カンファレンス in 仙台の模様です。
総勢85名の方に参加して頂きました。(詳細はまた報告予定です)
優勝はK大学病院のO先生でした。おめでとうございます。
来年は長崎で行う予定です。宜しくお願いします。

Photo

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