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2016年1月28日 (木)

明日から臨床微生物学会です ~8地区競演のワークショップ~

明日から第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会が仙台で開催されます。

http://www.congre.co.jp/jscm2016/

今回は全国の8地区が競演する形でワークショップが学会の中で開催されます。

学会HPや学会誌には未だ掲載はありません(当日何か案内があります)が、各地区特色のあるものが報告されます。

1.北海道地区

血液培養検査!一緒に考えれば,なまら いいっしょ! ―診断的価値を高める,採取から検査・報告まで―

2.東北地区
真菌症診断に貢献する真菌検査の技術習得―よく見ると,とても美しいカビたち―

3.関東甲信越地区
まれな菌?! いざという時困らないために 2016

4.中部地区
迷えるあなたの道標 ~欠如しがちな「躾」「教育」「評価」を考える~

5.近畿地区
院中八策 ~よりよい微生物検査の報告を目指して~

6.中国地区
第 1 回「まれ菌倶楽部」

7.四国地区
四国お遍路 稀な感染症例ツアー―日常検査で見逃さないために―

8.九州沖縄地区
九州,沖縄地区における「壊死性筋膜炎」の病態解析

我々近畿地区からは”結果報告”にコミッた内容を紹介します。

名付けて「院中八策~よりよい微生物検査の報告を目指して~」

本ワークショップに関する口演は1/30の11:00から第9会場で行い、ワークショップは展示会場で行う予定です(近畿地区はクロークの前)。

また、1/30(土)には短時間ですが各報告者による解説をワークショップ会場で行う予定にしております。伝えきれないこともありますので、是非ワークショップ会場にお立ち寄り頂き内容を確認して頂ければ幸いです。

あと、個人的にはMotivational session1にて

1 月 30 日(土) 15:30~17:00 第 4 会場(仙台国際センター会議棟 2 階 桜 1)

主治医を感激させた微生物検査―検査技師の知識・経験と第六感―

について取り上げます。
素晴らしい症例を2例ご紹介しますので、皆さんも一緒に考えてください。

皆様、宜しくお願いします。

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2016年1月20日 (水)

平成28年度診療報酬改定の情報

次回の診療報酬改定について情報が徐々に公開されていますが、本日1月20日の中央社会保険医療審議会の内容が一部公開されていました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000109793.pdf

今回は全体では本体部分が0.49%アップとされていますが、薬価の引き下げ幅が大きく実質マイナス改定と言われています。
微生物検査の動向はどうでしょう?

前回はグラム染色が上がりました、血液培養の2セット採取が請求できるようになり、結核菌液体培養も医療技術としての評価も高く上がりました。

今回、グラム染色については再評価できる医学的な有用性が示されていないということで今回の改定では評価を行わないと回答が出ていました。実質保険点数のアップは無いということです。残念ですが、過去25点まで下がった時に比べると未だ良い方です。もう少し根付いてくれることを期待しましょう。

じゃ、高い評価を得ているのは何かあるでしょうか?優先度の高いと考えられる微生物検査は以下のようです。

・呼吸器材料を除く細菌培養・同定検査
・抗酸菌液体培地法(前回に続いてです)

これだけでも結構な増収が見込めそうですね。

また、本年度から始まった検体採取ですが、鼻腔・咽頭拭い液の採取が保険収載されそうです。これで臨床検査技師が採取をすると自ら保険算定できることになりそうですね。
また、耐性菌のスクリーニング(MBLとESBL)、耐性遺伝子検査について保険収載できないものか答申が行われていたようですが、評価対象から外れました。遺伝子による微生物同定も評価対象から外れてしまいましたが、やっていることは正しいと思いますので、継続して検査は続けていきたいと思います。そして皆さんと評価して貰えるような内容を提示していき、患者さんへのフィードバックをしっかりしていく使命があると思いますので、皆様頑張りましょう。

グラム染色の点数がアップしないですが、これは先日FBに掲載したものです。
菌の情報以外でも色々と病態把握できる情報は多くあります。多核的に観察していきましょう。

グラム染色を通して症例を斜め読みしていると感染症以外の疾患が分かることがあります。

下記の写真はコレステリンクラフトと言うもので、血管破錠に伴う出血が原因でコレステリン結晶が析出し、染色をすると結晶成分が抜けて見える現象です。このスライドで悪性腫瘍との関連性について指摘することができました。

主に腫瘍に伴い集積した組織球や細胞融解に伴って析出した脂質成分の過剰な蓄積が伴うことで確認されることがあります。

感染症の場合も組織球が多量に集積するような疾患ではこの現象が見られるようです。そのため組織由来の体液などでこの像が見られると腫瘍性病変を鑑別にあげる必要があります。

http://blog.livedoor.jp/garjyusaiga/archives/52267341.html

血管に蓄積するとコレステリン塞栓症を起こすことで有名ですよね。

こういった像は、我々に何らか情報をもたらしてくれますので大事にしていきたいと思います。


2_2その1

Photo_2 その2

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2016年1月 4日 (月)

グラム染色で勝つ!!

ブログ愛好家の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。

皆さん、初夢は如何でしたか? 私は見たか見ていないか覚えていません。
おみくじを引きましたが見事大吉を引き当てました。この1年も頑張れそうです。

さて、グラム染色による感染症診療支援は根付いているようで、まだその威力を発揮していない施設も多いと思います。うちもその一つですが、もっと誰もが第一線で簡単にできるようになればと思いますが、やはり染色は簡単でも鏡検に技術が必要なので難しいこともありますね。

これからインフルエンザが流行する時期になりますが、ウイルス性の呼吸器疾患に続発する細菌性肺炎があります。インフルエンザ罹患後にはS. aureusによる肺炎が有名(http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/6/pdfs/05-1141.pdf)ですが、肺炎球菌性肺炎も調べると沢山あるんだという報告(http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm58e0929.pdf)もあります。

肺炎球菌と黄色ブドウ球菌にはペニシリン耐性菌がありますが、肺炎球菌は黄色ブドウ球菌と異なり、β-ラクタマーゼを産生しません。そのため、ペニシリン耐性とは名前が付きますが肺炎由来の場合はペニシリンが第一選択となる機会が多くなります。

では、インフルエンザの既往がありその後に肺炎になった場合には、この両者をどのように区別して抗生剤を選択すれば良いのだろうか。最初からブロードな抗生剤を行くから関係ないよと思っている人はいないでしょうか。両者はグラム染色をすることで分けることができます。

喀痰グラム染色をして下記のような莢膜をもつグラム陽性でペア、またはレンサ球菌が多数確認された場合は肺炎球菌がかなり強く推定できます。

Photo
この場合はペニシリンが第一選択になりそうです。

また、黄色ブドウ球菌の場合はクラスター形成するグラム陽性球菌が確認されます。

Mssa3
形態上かなり違うので鑑別がしやすいと思います。

この場合はペニシリンのみであればβ-ラクタマーゼで分解されて効果が発揮できないでしょう。

黄色ブドウ球菌かコアグラーゼ陰性ブドウ球菌か判断できないじゃないかと思う方も居ると思いますが、その通りです。培養してみないと何とも言えませんし、MRSAかどうかもこのスメアからは判断し難いと思います。

しかし、膿性痰でこのように喀痰スメアで多核白血球が多数あり、貪食も多い場合は黄色ブドウ球菌を強く疑わないといけません。MRSAかどうかは既往があるのか、保菌圧の高い場所(医療施設や集団生活を送る場所に滞在している期間が長いなど)に居なかったなど患者背景により推定することが必要です。超重症肺炎であれば抗MRSA薬の投与の避けれない状況もあるでしょう。ブドウ球菌多数と分かるだけでも有用な情報になるのは間違いありません。

このようにグラム染色を駆使すると少し抗生剤の使い分けもできます。

こういうのカプセル状のブドウ球菌が沢山ある場合は黄色ブドウ球菌の可能性MAXです。培養したらMSSAが発育してきました。

Mssa5
また、このようなスメアに遭遇した場合も抗生剤の選択が少し変わるでしょう。

Photo_2肺炎球菌とモラクセラの混合性肺炎

モラクセラ(M. catarrhalis)はβ-ラクタマーゼを産生するので、ペニシリンを分解してしまい、肺炎球菌には効果がありますが、肺炎の治療としては効果が期待できません。この場合肺炎球菌尿中抗原をすれば陽性になるかもしれませんが、モラクセラが居ることは教えてくれません。

やはりグラム染色は偉大です。

皆さん、今年もグラム染色を使い病原菌に勝つように頑張っていきましょう。

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