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2015年10月 5日 (月)

喀痰中の血液由来細胞報告の臨床的意義

 皆さんお久ぶりです。更新が遅延しております。

 秋の学会シーズンですね。また、感染症関連の抄録締め切りの嵐が来ております。
皆さんは如何でしょうか。

 さて、先日ある遺伝子検査機器メーカーの勉強会に参加してきました。色々と技術革新があり、最近は前処理が自動であるものや増幅にかかる時間短縮したものまで揃ってきましたね。まだ、一般病院の検査室の導入率は低いですが、感染症診断のためのツールが増えることは非常い良いことだと思います。発展させて導入実績を上げて機器や試薬コストを下げて、もっと患者のためになりたいと思いました。

中で呼吸器感染症の遺伝子診断の話がありまして興味深く聞かせて頂きました。丁度、質疑応答の中でコメントをさせて頂く機会もありましたので、その内容について今回は書かせて頂こうかと思います。

 「喀痰中の白血球の種類を分けることで肺炎の原因微生物の推測にどう活用するのか?」という命題を頂いたのでコメントさせて頂きました。今回はその内容+αです。
結果的にみれば、ある程度可能と思います。

1.細菌性肺炎

 細菌性肺炎の場合は多核白血球(主に好中球)が多数確認されることが多くなります。なので好中球が多数確認される場合には原因微生物は一般細菌と推測できることが多いです。

①肺炎球菌性肺炎

Photo S. pneumoniaeの大葉性肺炎

 肺炎球菌の場合は特にフィブリンの析出が多くなり、背景は赤味の強いグラム染色像であることが多い。

②インフルエンザ菌による肺炎

2_2 H, influenzaeの気管支肺炎

 インフルエンザ菌の肺炎は気管支肺炎が主体になるので、炎症細胞としての多核白血球(主に好中球)が多く見られますが、粘液主体であり、背景は刷りガラス様のピンク色のグラム染色像になることが多い。

③黄色ブドウ球菌による肺炎

Mrsavap2S. aureusの気管支肺炎

 黄色ブドウ球菌の場合は毒素によるフィブリン析出が多く、また化膿性病変が強いため、肺炎球菌性肺炎の様な赤味の強い背景になることが多い。
黄色ブドウ球菌による肺炎の場合は血行性か経気管的な肺炎かで少し像も変わりますので注意が必要です。

2.非定形肺炎

 主に細胞内寄生性微生物(レジオネラ菌、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルス)による感染になるために多核白血球(主に好中球)の出現は少なく、リンパ球やマクロファージの数が多くなる。
3 M. pneumoniaeの気管支肺炎

 マイコプラズマ肺炎では気管支繊毛上皮が多く見られることがあり、細菌性の気管支肺炎との鑑別に役立つことがある。グラム染色では血球由来細胞か上皮かの鑑別が難しいこともあり、ギムザ染色(ディフクイックもあり)を使うことで鑑別しやすくなる。

5 L. pneumophilaの大葉性肺炎

 大葉性肺炎でもマクロファージ優位であるのと、フィブリンの析出が少ない。レジオネラ肺炎の場合はリンパ球の動員も少なくなり空洞形成をしにくいのもこれが理由です。

③番外編
以下のような解釈もできます。感染か非感染かの鑑別に役立つこともあります。

3 好中球減少時のP. aeruginosaによる肺炎

 好中球減少時に急性炎症が起きると白血球が殆ど見えないが、菌が沢山見えることがあります。日和見感染の菌が見えることが多くグラム陰性桿菌を探すようにします。あまりに急激で好中球の動員が遅れる時もこのような像になります。

2 心不全性で出現したマクロファージ

 心不全ではマクロファージが増えることがあります。菌が見えなくマクロファージが沢山ある場合は心臓の機能も参考にしてグラム染色を確認することが必要です。

Photo 肺結核で出現した白血球の色々

 細胞内寄生性微生物と慢性の肺疾患のためマクロファージも多く見られます。また多核白血球(主に好中球)も散在しているため、抗生剤未投与にも関わらず白血球が多い場合は抗酸菌やノカルジアをを探しましょう。

 当然ながら見えた菌を推測することも併せて必要です。グラム染色は修練を積むことで色々なことが分かりますね。

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コメント

 道場師範手前様、師範手前を名乗られるのは、飽くなき探求により、ゴールを自ら先へ先へと追い続ける求道者の崇高な姿勢とお見受けいたします。私たち読者には、その背中がはるか彼方にちらりと見か見えないか、ずっと道のりの先を走り続けて居る、憧れの道場師範です。
 こ、これはすごい!病原菌の悪さをする部位と状況によって、背景の違いもここまで推察できるとは、驚嘆と目の覚める想いで拝読いたしました。
 マクロファージでしょうか、内部に屑のようなものがあって核がはっきりしない大きい細胞、dust cell と、グラム染色の書籍で見たことがあるのですが、それが出て居たら炎症も中盤~後期に至って居る時だ、と読んだことがあります。確かに、そのようなときに、細菌菌体があまり見受けられなくなってきているときが多く、これは抗菌薬なしで大丈夫だ、と思って居ました。
 しかしこれを読ませていただくと、細胞内寄生の病原菌である可能性があり得るのですね。
 また、先日、マクロファージのようなものがたくさん出て居るのに、周囲にたくさん肺炎球菌が存在するものがありました。その時には、ペニシリンアレルギーの方だったので、CTMを使って居たのですが、微熱が続くので再検してみると、GPDCは消えておらず、そのようにたくさん存在する。これは、白血球と肺炎球菌の攻防で出来た残骸が、このマクロファージに貪食されて”後片付け”を一方では行いながら、他方ではまだ病勢は衰えておらず、CTM耐性菌なのだろう、と思って、仕方なしにLVFXに替えたことがありました(LVFX耐性でないことを祈りながら。)
 こういう考え方は、妥当でしょうか。培養結果は結局、やはりCTM耐性で幸いLVFX感受性でホッとしたのですが、”後片付け”と”病勢衰えぬ”という混沌とした状態、という判断が正しいのかどうか、判らずじまいのままです。

 高知でお会いできることを楽しみにしております。

投稿: 三省 | 2015年11月 3日 (火) 02時27分

三省様

いつもコメントありがとうございます。ブログ確認してなかったらコメントが入っていました。すいません。

さて、マクロファージについては色々とあります。病理では肺炎の指標にされていますが、グラム染色では肺炎でマクロファージが見えた場合にはグレード評価ができないものになります。

つまり慢性の肺炎が被っていたり、細菌でも単球を刺激するようなものであったりします。レジオネラ、結核、真菌症などが代表的です。

検査室では痰としか扱わないので患者背景について考えないことが多いと思いますが、この記事のように色々と見ていくと分からないものもわかるようになります。患者の病態に近づくためのスキルと思っています。

さて、今週は高知に伺います。
宜しくお願いします。微生物検査室としてコミュニケーションを活用しいかに効率よく院内感染対策、感染症診療支援を行っているかの紹介になります。宜しくお願いします。

投稿: 師範手前 | 2015年11月11日 (水) 22時57分

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