南九州感染症寺子屋にお邪魔しました 35年ぶりの鹿児島
24日は鹿児島でお話する機会を頂きました。
話をさせて頂いた会は「南九州感染症寺子屋」という会で年3回開催しているそうです。
今回の私で第6回目になりますので一回りしたことになります。
以前から、ネット越しですがこの会はレベルの高い研究会であることを知っていましたので自分の内容が受入れられるか心配でした。
私は「微生物検査を深読みする」という内容で話をさせて頂きました。
微生物検査は感染症診療の中で非常に重要なポジションにあるものと思っていますが、実際検査室ではどのような過程を経て結果が出てくるのか? 微生物検査を担当している臨床検査技師はどのように考えながら結果を導いているのか説明していきました。
最近、当院の研修医にも話する機会が増えました。どうして感染症診療が難しく思うのかについて下記の内容を説明しています。
①平常状態に戻すために治療を行うため、疾患名が決まればそれに見合った治療法が選択される。しかし、感染症は疾患と治療の間に微生物が介在するため治療方針の決定をより複雑化させている。
②表面上見えない疾患もあり、疾患に応じた検査法が決められているが実際に検査を提出する内容が見えてこない。
③適当に検査を出して、抗生剤を処方して何となく治っている機会が多いため、治らない場合には考察が甘くなり悩む。
などなど。
要はこういう症状があれば、こういう疾患を想定して、こういう検査を出して、病原微生物別に適切な抗生剤を処方し、正しい治療経過を辿り治る。というのが理想的でしょうが。これは非常に高度な技術習得であり、学生時代にかなり興味を持って微生物に触れ合わないと難しいでしょう。ましてや、微生物の検査なんて臨床検査技師以外はやる機会が少ないので覚えるのは一苦労でしょう。
オーベンに「発熱の原因調べて、感染症なら抗生剤でも処方しておいてよ」と言われ焦る研修医は多いと思います。
微生物検査は疾患別に検査をしているのでは無く材料別に検査をしているので、疾患名または目的とする微生物をコメントすることで効果的に対応ができるものです。
例えば、Legionella肺炎を疑った場合に何も情報無く喀痰を出してもLegionellaとは帰ってきません。Legionellaを検出する場合にはB-CYEやWYOなどの特殊な培地が必要になり、しかも雑菌処理を行わないといけないので目的菌をコメントしないとスルーされてしまいます。「この菌を目的にしているのに、返ってこないよなあ!?」と思ったことないでしょうか。
逆に目的菌をコメントしているが、全然違う菌が検出された時などはCritical dataに近いものがありますので検査した甲斐があると思います。
しかし、結果が1週間後に帰ってきても、あまり嬉しくないでしょう。感染症の殆どが急性疾患なので、今日や明日も待てない症例は多いと思います。微生物は血液検査とは異なり、対象は微生物(つまり生き物)になるので、微生物の増殖スピードに依存しているため時間がどうしても必要です。そのため今抗生剤を絞りたいという人は是非グラム染色をしてみましょう。
結核菌などは発育がもっと遅いのでPCR検査など有効に活用される検査です。
でも結構職人芸だったりしますので経験年数に結果が左右されたりもします。熟練の技を見たい場合は微生物検査室に行ってみてください。できれば体験することもお勧めします。微生物を特定することは感染症診療に必要です。分からないことは微生物検査に研修しましょう。
当日は
1.ルンバールをしたCampylobacter腸炎
2.Campylobacterの心筋炎
3.潰瘍性大腸炎からListeria髄膜炎
の症例を紹介させて貰いました。
鹿児島は生涯2度目でした。桜島は昔も今も変わらない姿で私を出迎えてくれました。
鹿児島市立のN先生初め、皆さん温かく迎えて頂きありがとうございました。
また機会があれば違うネタ仕込んで行きます。
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