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2015年9月16日 (水)

血液培養2セットで別々の菌種

平成26年度の診療報酬改定で血液培養の複数セット採血で2セット分保険請求できるようになりました。採血部位を変えることで算定が可能です。どの施設もそうですが、この保険点数の設定により2セット採取率が更に高くなっていると思います。

2セット採取のメリットは色々あると思います。

・採血量増加による検出感度アップしかこと
・複数セット採血による検出菌の臨床的意義づけが高くなったこと

が目的の一つではないでしょうか。

また、2セット採取率の増加に伴い、陽性率が高くなり陽性症例数が増加すること、症例数増加により臨床的意義が高くなったと認識されるようになり採取件数も増加することがあると思います。当院でも年間6000件に対応できるように血液培養機器も増設しております。皆さんの施設でも採取件数は増加していますか?
また、抗菌薬適正使用の考えもあり、結果的に不必要と思われる抗菌薬(特にコンタミネーションを疑う場合の抗菌薬投与回数の減少など)を投与する機会の減少など、感染症診療支援に加えて感染防止対策としての検査になっています。

現在、殆どの施設では自動機器により血液培養を実施していると思います。陽性になると画面や音で陽性になったよと教えてくれますが、菌の発育をモニタリングしているのでは無く、菌が発育する時にCO2が発生するのでそれをモニタリングしています。つまり菌の増殖とCO2の増殖が相関する原理となっています。血液培養が陽性になれば、培養液を抜いてグラム染色をし、場合によってはMALDI-TOFで同定を行ったりしますが、その大きな目的は診療方針の修正を行ったり、微生物検査の方向性を決める(培地選択など)ことでしょう。

ではこういう事例はどうでしょう。

上腕の静脈採血左右2セット、それぞれ好気ボトルのみ同時に陽性になりました。グラム染色をしてみます。おや?

Mds2 1セット目

Mds 2セット目

1セット目と2セット目はともにグラム陰性桿菌です。

良く観察すると1セット目はやや染色性も良く太めの桿菌ですが、2セット目は染色性は薄く細めの桿菌で両端がやや丸みがあります。

「同じ菌?、違う菌?」 悩みますよね。

こういう場合は複数人で確認をすることをお勧めします。複数人で確認しても解決しないこともあるでしょうが、1人で悩んでも仕方ありません。読み違え防止にも役立ちます。

2セット目は好気のみで形状から緑膿菌またはその類縁菌を疑う所見ということは分かりますね。1セット目は少し菌も延びていますので抗菌薬投与歴が無ければ形状変化の一つかもしれません。良く見ると辺縁は四角い感じがしますので腸内細菌科の可能性が高まります。

1セット目から腸内細菌科、2セット目から緑膿菌   あれあれ。

別々の菌が発育してきています。

とりあえず報告です。

「2セットの血液培養が陽性になり、それぞれ別の菌が発育しています。1つは腸内細菌科、1つは緑膿菌を疑います。」

血液培養液のグラム染色液を見て気付いている人はいると思いますが、白血球が全然ないですよね。そうです、これは抗ガン化学療法中で発熱性好中球減少症の患者のものです。少し前の記事にしていますが、複数菌血液培養から検出される場合はがん患者に多く見られます。そうすると、複数菌生えてきてもそれほど珍しいものでもありません。

こういった事例はどの程度発生するのでしょうか?
当院の集計では、2015年4月から半年間で2セット陽性となった84症例のうち、別々の菌種が発育したのは6症例(約8%)もありました。殆どが口内炎や消化器障害など粘膜障害が原因であると思われる症例でした。グラム陰性桿菌が2菌種、グラム陽性菌とグラム陰性菌の混合など色々あります。

血液培養液のグラム染色で複数菌が確認される場合の対応


翌日下記のコロニーが発育してきました。

1セット目:E. coli(後にESBLと判明)
2セット目:P. aeruginosa
2
感染症を専門にしている医師が不在の場合は難しいことかもしれませんが、当院では血液培養陽性例報告前にグラム染色像と患者の今の状態を刷り合わせています(当院の感染症を専門にしている医師は不在です)。

さて、カルテ上で見る項目は、身体所見や主治医の診療方針、臨床検査値では末梢の白血球数と血小板数、血清CRP値、血清クレアチニン値、BUN、微生物検査では同一日に採取された検査材料とその結果、それにバイタルサイン(体温、血圧、脈拍数など)です。全て網羅することは出来ませんが、それらを見てから報告を行うことで、主治医とのコミュニケーションをスムーズすることができます。医師からは自分の診断が合っているのか、抗菌薬は今のもので問題は無いのかなどを良く相談されるので、個々の患者に見合った結果報告を行うように努力しています。特に血液培養陽性事例はそれ自体で重症例である可能性が高いのでしっかり伝えるように心掛けています。

2セットともグラム陰性桿菌なので同定・感受性は1つだけしかしないという考えもあります。2セット採取の保険点数には培養に加えて同定の点数も含まれています。

つまり、1セットのみの結果コピペということは保険請求上問題になるかもしれませんので、同定は最低限行う必要が出てきます。このように培地上で明らかに異なる菌であることが分かる場合もありますが、グラム染色も用いながら患者ケアに当たることは我々微生物検査に必要なポリシーであることは言うまでもありませんね。

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2015年9月11日 (金)

染色液買ってもついてこないです

ブログ愛好家の皆様。ご無沙汰しております。

グラム染色について考え込むと、あらぬ方向に思考が行くものです。
先日、急に仕事の書類を入れる用と思いブログの絵柄の入ったトートバックを作ってしまいました。

2
The Gram Stain Gym for All:グラム染色道場は皆様のものです。バカなキャッチコピーです(笑)

我ながら馬鹿げていますが今年はTシャツも作りオフ会では無料で配りました。参加者には好評だったと思います。今じゃ部屋着代わりに着用しています。

T
売れるんじゃないか?とも言われましたが、そういう商売根性は全く無いし、欲しい人は居ないだろうし。自分一人で楽しんでいます。

もし、欲しいという変わった方がいらっしゃいまいたら実費で分与させて頂きますので、出会った時にこそっと話してください。

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さて、今後の予定ですが、グラム染色の見方も含めて話します。良ければ聞きに来て下さい。

10/24:鹿児島(第6回南九州感染症寺子屋)
11/14:高知(高知県院内感染対策研究会)
11/29:神戸(EBICセミナー in Kobe)
11/29:三重(日臨技中部地区微生物検査研修会)

来年
1/31:仙台(第27回日本臨床微生物学会総会シンポジウム)
2/19:京都(第27回日本環境感染学会総会ベーシックレクチャー)
3/23~25:(第89回日本細菌学会総会シンポジウム)
また詳細が決まりましたら各HPなどで紹介します。

写真は便から検出されたPlesiomonas shigelloides です。

2 SS寒天培地のコロニーから染色

腸内細菌群で唯一オキシダーゼ陽性の細菌として教科書にも記載があります。
食中毒の起炎菌であり、海外渡航歴のある患者から良く検出されますね。

TSI培地に接種し培養するとShigellaにそっくりなのと、一部抗原が交叉反応を起こすことからshigelloides(赤痢様)という名前が付いているようです。

Plesio
菌は湾曲していると書かれているので良く見ると、湾曲しているものがあります。
あまり見かけないので、まじまじとみてしまいます。

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