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2015年8月29日 (土)

肺炎球菌性肺炎の喀痰グラム染色で肺炎球菌は見えるのか?

先日、新人さんにこういう質問を頂きました。

「肺炎球菌性肺炎の場合に、喀痰グラム染色では全て肺炎球菌は見えるのか?」

中々、高度な質問ですね。 皆様ならどう答えますか?

その時に説明をした内容は以下です。

1.良い喀痰が採れないと確認しにくい

色々な研究者が肺炎球菌性肺炎時の喀痰グラム染色像について報告をしていますが、喀痰の品質が悪い場合は見えなくなる可能性が高くなる(感度が低くなる)。
多核白血球が優勢に確認できた場合でグラム陽性双球菌であれば肺炎球菌と推定可能である。つまり肺炎球菌性肺炎の場合は病巣への好中球浸潤が強く、好中球が多く確認されることが多い。
質の良い痰であれば70-90%程度確認はできるが、質が悪い場合は50%以下となり、抗菌薬前投与がある場合は20%以下にもなり得る。

Photo_2 こんなの出たらそりゃ皆さん肺炎球菌と言えますよね。

2.グラム陽性双球菌は全て肺炎球菌ではない

口腔内には常在するグラム陽性連鎖状球菌が多数存在する。多くがViridans group Streptococcusであるのだが、この菌種の特徴が楕円形である。つまり1つの菌体は肺炎球菌と類似しているという特徴がある。意地悪なViridans group Streptococcusではペア状のものが出現し、肺炎球菌と見間違えることが多々ある。そのため材料の品質管理が悪い喀痰では、肺炎球菌かどうかは言いきれない。

3.材料の品質が悪ければどうするか

原則、喀痰の採り直しをお願いする。外観上で白色だからとか、唾液様の色だからは通用しないことがあります。出来れば顕微鏡下で好中球が無いか、明らかに肺炎球菌様の菌が居ないか確認はする方が良い。そのためには喀痰は頂いたら直ぐにスメアを見ることで、極力、検査室の都合で検査を行わないように心掛ける。

多くの場合は指示出しした医師は喀痰の性状についてなど見て無いので、喀痰の採り直しについては看護師さんの努力無くして成り立ちません。再度採取をお願いするに当たり、採取時の苦労を労う言葉を忘れずに、患者さんの立場になりコメント(ちゃんと採取しないと肺炎の診断と治療に苦慮します・・・など)をする。

4.熟練すると心眼で見ることもある

とりあえず提出したもので所見を返さないといけない場合もあるかもしれない。
「ああ、これじゃアカンよな・・」と思った場合はしっかりと、材料の質が悪過ぎて判断がしにくい、培養の結果を待ってほしいなど、医師側に結果解釈が非常に困難なことをしっかり理解して貰えるような簡単にコメントを伝えたり、コメント付記したりする。

熟練をしてくると材料が悪い場合でも肺炎球菌と分かることもあるが、そこは仙人の世界かもしれません。

2 熟練の技は莢膜が無くても肺炎球菌を推測できる

Photo 翌日発育した肺炎球菌

5.見ないのはだめ、出さないのはもっとだめ

軽症で無い肺炎の場合、グラム染色見ないで初期治療薬を選択するのは極力避ける。cracklesあるのに痰が出ないという患者さんの主張を尊重して痰を出さないのはもっとだめ。細菌性肺炎である限り原因菌を特定して、それに見合った抗菌薬を処方するのは基本だと思う。痰が少量だから捨てましたなどはもう具の骨頂です。

とりあえず、肝心なのは患者さんのためになるような検査結果を返すように心掛けることでしょうかね。

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2015年8月12日 (水)

血液培養液のグラム染色で複数菌が確認される場合の対応

血液培養ネタが続きます。悪しからず。

血液培養は菌血症を証明するために最も重要な培養です。

当院は約500床の病院で、血液培養は年間約6000件(2セットは1件とみなします)対応しています。年間で約500件陽性者が出て対応をしておりますので毎日1人は陽性者の対応をしています。

血液培養に関して色々なインジケータを算出しておりますが、30日後の粗死亡率は約5%とかなり低い値を推移しており、血液培養陽性者への介入が良好なのが何となく自慢です。

血液培養陽性者の中でも重症度が高い患者の傾向として、S. aureusやS. pyogenesのようなフォーカスが掴みづらい外毒素産生菌、グラム陰性桿菌による薬剤耐性菌と複数菌検出者があります。皆さんの病院は如何でしょうか?

複数菌が検出される患者には悪性腫瘍患者が多く含まれますが、抗ガン化学療法中に発生する患者に多く見られます。中でも血液悪性腫瘍の抗ガン化学療法患者(多くが発熱性好中球減少症患者)の検出菌は腸内細菌科細菌+グラム陽性球菌の組み合わせが多く、グラム陽性球菌はViridans group Streptococcus、Streptococcus bovisやEnterococcusといったCFPMの抗菌力がやや劣る菌種が混じります。もちろん、発熱性好中球減少症患者だから複数菌というのもありますが、大腸菌やViridans group Streptococcusによる単一菌が検出される患者も多い状況です。

(J Antimicrob Chemother 2013; 68: 1881–1888)
(MEDICINE 65:4:218-225)

Photo 発熱性好中球減少症患者の血液培養からの複数菌検出例(KlebsiellaとEnterococcus疑いと報告しまし、その通り培養で出てきました)

この検出菌から把握できる患者の病態は、好中球減少が著しいことに加えて、口腔や消化管粘膜障害があり、そこから菌が侵入している可能性が非常に高いことです。こう、複数菌がグラム染色所見で確認されて報告する場合は口内炎が無いか、下痢が起こっていないかをカルテ上で確認しコメントをすると良いと思います。

「血液培養から複数菌が検出されています。グラム陽性球菌は連鎖状で長く、形態的にViridans group Streptococcusを疑います。カルテ上で口内炎と記載がありますが、そこから侵入した可能性はございますか?、またグラム陰性桿菌が確認され、形態より腸内細菌科細菌が疑われ・・・」というコメントを当院ではしています。抗生剤について聞かれることもありますので、その場合は感受性結果の予測値(MICの分布や感受性率など)や起こしやすい合併症、時には用法用量なども加えてコメントし、今後の治療方針を決定する上での検討材料として加えたりしています。

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血液腫瘍を基礎疾患に持つ患者で複数菌の検出率は4.4%(2001~2014年のデータ)と非常に少数ではありますが、30日後の粗死亡率は42.8%と、トータルの血液腫瘍患者での30日後の粗死亡率の28.4%に比べるとかなり高率になっています。やはりコントロールが難しい血流感染の一つになりますので、結果報告のスピードはかなり気にしながら行うことになります。当院では血液培養陽性例は提出後にできるだけ早く報告をするようにしてますが、現在のところ感受性までの報告を3日以内に達成できているのは約90%となっています。どうしても分離が難しい菌や複数菌の分離に手間取っている場合には時間がかかりますので、その場合はグラム染色所見で推定菌情報を多く流すように心がけています。

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当院でグラム染色結果で抗生剤を変更または追加する症例はどれくらいあるのか調べましたが、全体の34.2%と、質量分析機器を用いた報告の13.38%(Clin Microbiol Infect 2013; 19: E568–E581)に比べるとかなり高い数値になっており、当院ではグラム染色による迅速な結果報告は重要な検査情報となっています。質量分析機器は未だありませんが、導入するとなれば更なる成果が期待できるのでは無いかと思っています(ちなみに当院のグラム染色での推定菌正審率は93.1%)。少しでも適切な治療に貢献したいと思います。

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2015年8月 4日 (火)

これぞ極みの世界

暑中お見舞い申し上げます。皆さん元気ですか?

先日、京都でチーム医療のセミナーがあり実務委員で参加させて頂きました。
前日が暑かったので、天気予報で最高気温を見ると「予想 37℃(前日比-2℃)」と紹介されていました。37+2なので前日39℃。普段熱形表で見ている患者さんの体温では無いですか。で、当日は予想を上回り39.2℃も猛暑でした。神戸に帰ってきて36℃が涼しいと思ってしまいました。

さて、たまに臨床推論の勉強会に参加させて貰います。色々と患者背景や身体所見、臨床検査所見などを総合的に解釈しながら最終診断を行うものです。
少しFACEBOOKに掲載したものをアレンジしますが、グラム染色も似たような推論を行うことが多いので、この思考過程は非常に検査の役に立ちます。
たまにはこのような極みの世界が出てきます。
血流感染を証明するために血液培養を採取すると思います。元々血液中の菌数が少ないために、血液の直接スメアは行わずに血液は直接培地に添加を行います。

血液培養が陽性になると最初いグラム染色像を見て、鏡検で見えた菌の対して、適したサブカルチャー(寒天培地に分離する作業)を行い、単一菌と確認した上で同定と感受性検査を行っていきます。当院では陽性例の約90%が単一菌のみの検出例である状況です。

最近では質量分析法を用いた菌種同定が5分程度で出来てしまうため、血液培養からのグラム染色法の活用度合いも下がってきましたが、まだまだ使えるものだなと思います。

血液培養は殆どの施設(外注含む)で自動機器を使用しています。陽性になればシグナルが鳴り、教えてくれます。そして培養ボトルを抜きますが、その場合、血液が混入した培地は濁ったり、溶血したりとそれぞれ検出菌に応じた顔になっています。

そして、抜いた瞬間に培養ボトルの色を見て菌が推定できることがあります。

20150729_184851_2

グラム陽性の連鎖球菌はその代表的なもので、究極にはその色で菌種推定を行う他、患者さんの病態が推理できるものが多いです。

もちろん、グラム染色の形態的特徴を重ねて確認するとより協力な推論材料になります。
写真はその例です。興味がある方は検査室に行き微生物技師さんに見せて貰ってください。

①Viridans group Streptococci 溶血が緑がかって見えます。
→感染性心内膜炎を疑い報告時にコメントを残す
(肺炎球菌はこれに類似しますので注意が必要です)

②Enterococci やや混濁した溶血(ワイン色)が見えます。
→急性腎盂腎炎や急性胆管炎を疑い報告時にコメントを残す

③β haemolytic Streptococci 非常に透明度の高い溶血(ワイン色)が見えます。
→蜂窩織炎や壊死性筋膜炎、化膿性関節炎を疑い報告時にコメントを残す
グラム染色と並べるとこんな風になります

Photo

微生物検査に興味が湧いてきた方は、検査室へGO!!

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