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2015年6月16日 (火)

そのグラム染色所見、あなたは何を訴えますか?

ブログの更新が滞っていて申し訳ありません。ネタが無いわけでは無く、少し忙しい状況が続いておりますので、落ち着いてブログを書く時間があまりありませんでして・・・。

Facebook版ではたまにゆるーく呟いていますのでまたご覧ください。
https://www.facebook.com/GramStainGym


さて、当院にも新人さんが配属になりグラム染色を教えております。私と違い年齢も若いだけありまして、非常に吸収も良く伸び盛りで羨ましい限りです。
先日、その新人さんにグラム染色写真の撮り方について教える機会があり、色々と話しておりました。

「写真を撮る」といっても簡単そうで実は難しい作業です。単純に菌があり、それを上手く撮影することは最低限の条件でしょうが、その写真に写り込む情報について皆さんは考えながら撮影をされているでしょうか?

で、その新人さんに一言、「その写真であなたは何を訴えようとしていますか?」と問いかけました。難しい質問と思います。

私は答えました。「写真は見せるもので、見て頂く方に1枚の写真で多くの情報を説明できる内容が必要です。」、「且つ教育的な内容であれば非常に良いと思います。」と話しました。

分かり難いので例を掲示し、以下のような説明をしましたので紹介します。

例えば、良くある風景ですが肺炎球菌性肺炎で得られた喀痰グラム染色です。
肺炎球菌の特徴として以下のものが必要です。

・グラム陽性で楕円状の双球菌であること。
・莢膜形成が明瞭であること。
・多核白血球が確認されていること。

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 上記の写真には貪食像が殆どありません。そうです、肺炎球菌性肺炎の喀痰スメアでは貪食像が少ないために貪食の有無は肺炎球菌性肺炎のスメアには求められません。ちなみに肺炎球菌を貪食している写真を掲載しますが、莢膜も無く肺炎球菌か否か判断し辛くなります。なので、肺炎球菌性肺炎の症例を喀痰スメアで訴えるのであれば貪食像は無くても良いと思います。

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こういうのもあります。複数菌が見える場合ですが。

 まずは膿胸ですが、色々な菌が確認されますので多くの菌が確認できる状態が良いでしょう。しかも、膿瘍形成をしている臓器感染なので貪食像や菌塊があった方がより臨場感がありますので良いと思います。菌塊ばっかりでは菌体の状況が不明確なので、できれば菌1つ1つの状況が確認できるものもあれば良いでしょう。

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これは上記のものと同じ検体のグラム染色ですが、白血球が古く膿瘍形成をしていることが分かりやすいですが、新鮮な白血球では無く核の状況がハッキリ見れるものが少ないので躍動感が少し劣ります。できれば、白血球は核が明瞭なものを数個見つけて一緒に写っているものが良いでしょう。

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またこういうのも良いでしょう。菌の大きさを1枚で比較できるもの。

動物咬傷後の膿汁です。PasteurellaとCapnocytophagaが有名な菌ですのでこれらが確認できるものであれば良いと思います。

・PasteurellaはHaemophilusと類似のグラム陰性で直線状をした短桿菌
・Capnocytophagaは紡錘状の桿菌で、やや湾曲したりしたもの。
・スケールバーが必要なので多核白血球(15-20μm程度の大きさ)を添えると良い。メジャーの付いている写真が撮れればなお良いでしょう。

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複数枚撮影しても良いでしょうが、カンファレンス用に使用したり、カルテに添付したりする場合は少ない枚数でより多くの情報が出るようにすると見る時間や読む時間の短縮になり時間を有効活用できるでしょう。

少し「ウザい」と思われているかもしれませんが、美しく写真を撮影すること、これはグラム染色の美学かもしれませんし、臨床微生物学としての拘りかもしれません。

皆さんは何を訴えますか?

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コメント

いつも大変勉強になります。

先生のブログに掲載されている写真は、本当にどれもキレイで見とれてしまうほどです。欲を張って、何枚も撮影し臨床に報告することがありますが、先生のおっしゃるように、要はその1枚にどれだけの情報を盛り込むか、そこが重要だと思います。たくさん送られてきて、結局、何が言いたいのか分からないのでは意味がありませんからね。

写真を撮るのはそれなりに時間がかかる作業ですが、妥協せずに「これぞ!」という1枚を撮ることを、常に心がけたいと思います。

投稿: Kei | 2015年6月22日 (月) 08時22分

Kei様 いつもありがとうございます。

ヒトにものを伝える時はコンパクトにまとめることが肝心ですよね。グラム染色所見も同じです。文字以上に情報量を多く共有できるためのツールですが、多過ぎても普段見慣れない医療従事者にとっては焦点が定まらないことが多いですよね。
そういった意味でもスナップショットとしてベストなものを撮影したいですね。

投稿: 師範手前 | 2015年6月24日 (水) 00時21分

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