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2015年6月24日 (水)

球菌に見えない連鎖球菌

グラム染色について頂く相談の中に「グラム陽性桿菌と思いましたが同定したらStreptococcusでした。どうしてですか?」というものが多くあります。確かに球菌なのに桿菌に見えるとは、これはややこしいです。

連鎖球菌または連鎖状の球菌には、StreptococcusやEnterococcusがあります。Streptococcusについては、丸いものから楕円形のもの、短桿菌、大小不同まで様々な特徴を持ちます。今回(以前にもやったかもしれません)は、連鎖状球菌についてまとめたいと思います。

1.Viridans group streptococci
楕円形から短桿菌まで形状は様々です。連鎖の数が長いものが存在するのでグラム陽性桿菌との鑑別は可能なことがあります。ただし、連鎖が短い菌しか見えない場合はしばしばグラム陽性桿菌との鑑別は困難なことがあります。血液培養からグラム陽性桿菌が検出されるケースは比較的少ないため陽性球菌の可能性は高くなります。

Nutritionally variant streptococciとの鑑別は非常に困難ですが、血液培養の発育状況を観察項目に加えることで鑑別可能です。

この菌が血液培養で検出された場合は、亜急性な感染を起こす機会も多く、疾患としては感染性心内膜炎や粘膜潰瘍、髄膜炎などを疑うため、フォーカス探しに役立ちます。
βラクタムに耐性菌が存在し、ペニシリンのMIC測定は非常に重要です。発熱性好中球減少時に分離された場合にはCFPMの感受性はやや不良なものが多いので注意したいですね。

1 Streptococcus salivarius

2.β hemolytic streptococci
丸い球菌状に観察されるものが殆どです。連鎖は比較的長く、外毒素を産生する菌種については、菌周囲(BM法であれば高率に)が赤味を帯びて確認されることもあります。

Streptococcus agalactiaeはStreptococcus pyogenesやStreptococcus dysgalactiae subsp.equilimilisと比べると連鎖の数が少ないものが多く、また菌体はやや大きく観察される。Streptococcus pyogenesやStreptococcus dysgalactiae subsp.equilimilisが検出された場合は皮膚軟部組織疾患や菌血症など、Streptococcus agalactiaeでは皮膚軟部組織疾患や菌血症に加えて尿路感染症などがフォーカスとなっている機会が多くなります。非常に急速に病態が進むことが多く、早く報告する必要があります。糖尿病をベースに持つ機会も多く、血糖値が高い場合は感染リスクは高くなります。血糖値が正常範囲であってもHbA1cも測定して隠れ糖尿病が無いかのチェックは大切です。

βラクタムの感受性は良好であり、特にペニシリン耐性菌は確認されていない(S. agalactiaeの一部で低感受性がある程度)。

2 Streptococcus pyogenes

3.Streptococcus pneumoniae
楕円形から球桿菌に観察され、双球菌のものが多く観察されます。Enterococcusとの鑑別が非常に困難です。血液培養の所見ではS. pneumoniaeの方が溶血が強くなり鑑別性状として考察に入れることができます。

この菌が検出された場合は、肺炎や髄膜炎、関節炎、敗血症など多彩で、非常に急速に病態が進むことが多く、早く報告する必要があります。莢膜産生菌のため液性免疫が低下するような病態が隠れていることが多い。近年、小児でワクチンが定期接種になり発生数が激減しているが、ワクチンでカバーできていない血清型については発生は抑制しきれておらず多くが非ワクチン株によるものです。

また、成人での発生例は小児に比べると高くなります。
6 Streptococcus pneumoniae

4.Enterococci
楕円形から球桿菌で、双球状から短い連鎖(長くても8連鎖程度)に観察される。この菌が血液培養から検出された場合は横隔膜下臓器(特に腹部や尿路、生殖器)の感染があることが多いです。βラクタムの中でもセフェムが無効のため、他のStreptococcusとは大きく治療方針が異なる。感染性心内膜炎を起こすこともあり、その場合はアミノグリコシド高度耐性の確認検査が追加で必要になります。地域によってはVREも念頭に置く必要があります。

5Enterococcus faecalis

5.Streptococcus anginosus group
大小不同を伴う、または難染性を示す球菌です。菌体は丸く小さめのものが多くなり、長い連鎖が見られるものが少ない。この菌が検出された場合は体内に膿瘍形成している疾患があり、肺膿瘍や膿胸、脳膿瘍、肝膿瘍を認めることが多い。以前はStreptococcus milleri groupと呼んでいました。

3 Streptococcus anginosus

6.Nutritionally variant streptococci
Viridans group streptococciと同じく楕円形から短桿菌に見えることが多いですが、難染性を示すため鑑別可能な機会も多くなります。血液培養については嫌気培養ボトルの方が発育が早くなるので、鑑別性状として考えることができます。

Viridans groupと同じような疾患を起こしますが、感染性心内膜炎については弁損傷の程度がViridans group streptococciに比べると強いという報告もあります。ペニシリン耐性もVridans groupと同様で、MICの測定が重要になります。

4Abiotrophia defectiva

7.Viridans group streptococciと見間違えやすいグラム陽性桿菌
ListeriaやBifidobacterium、Lactobacillusなどは血液培養から検出された場合にはViridans group streptococciとの鑑別をしないといけません。Listeriaについては腸炎や髄膜炎、患者背景としてはがん患者、細胞性免疫の低下した患者に発生しやすく、特に乳製品の喫食歴について聴取することが大切です。牛乳を飲んでいなくても習慣的に乳製品を摂取していることも多いので聞き洩らさないようにしましょう。

BIfidobacteriumやLactobacillusについては血液培養から検出される機会も少ないので遭遇する機会も少ないのですが、消化器に常在していることもあり、消化器症状が無いのか確認することが大切になるでしょう。陽性桿菌の多くはβラクタム(特にセフェム)に対する感受性が悪いため、起炎菌であれば抗菌薬の変更を検討する機会は多いと思います。

Viridans group streptococciとは違い、連鎖が短いものが多いのが特徴です。

7Listeria monocytogenes

最近は質量分析機器を導入する施設も増えてきたので悩みも少なくなってきましたが、同定が出た際には再度菌の形態とマッチングしているのか確認もして頂けるとより良いグラム染色所見が提供できると思います。菌に操られないようにしましょうね。

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2015年6月16日 (火)

そのグラム染色所見、あなたは何を訴えますか?

ブログの更新が滞っていて申し訳ありません。ネタが無いわけでは無く、少し忙しい状況が続いておりますので、落ち着いてブログを書く時間があまりありませんでして・・・。

Facebook版ではたまにゆるーく呟いていますのでまたご覧ください。
https://www.facebook.com/GramStainGym


さて、当院にも新人さんが配属になりグラム染色を教えております。私と違い年齢も若いだけありまして、非常に吸収も良く伸び盛りで羨ましい限りです。
先日、その新人さんにグラム染色写真の撮り方について教える機会があり、色々と話しておりました。

「写真を撮る」といっても簡単そうで実は難しい作業です。単純に菌があり、それを上手く撮影することは最低限の条件でしょうが、その写真に写り込む情報について皆さんは考えながら撮影をされているでしょうか?

で、その新人さんに一言、「その写真であなたは何を訴えようとしていますか?」と問いかけました。難しい質問と思います。

私は答えました。「写真は見せるもので、見て頂く方に1枚の写真で多くの情報を説明できる内容が必要です。」、「且つ教育的な内容であれば非常に良いと思います。」と話しました。

分かり難いので例を掲示し、以下のような説明をしましたので紹介します。

例えば、良くある風景ですが肺炎球菌性肺炎で得られた喀痰グラム染色です。
肺炎球菌の特徴として以下のものが必要です。

・グラム陽性で楕円状の双球菌であること。
・莢膜形成が明瞭であること。
・多核白血球が確認されていること。

5

 上記の写真には貪食像が殆どありません。そうです、肺炎球菌性肺炎の喀痰スメアでは貪食像が少ないために貪食の有無は肺炎球菌性肺炎のスメアには求められません。ちなみに肺炎球菌を貪食している写真を掲載しますが、莢膜も無く肺炎球菌か否か判断し辛くなります。なので、肺炎球菌性肺炎の症例を喀痰スメアで訴えるのであれば貪食像は無くても良いと思います。

4

こういうのもあります。複数菌が見える場合ですが。

 まずは膿胸ですが、色々な菌が確認されますので多くの菌が確認できる状態が良いでしょう。しかも、膿瘍形成をしている臓器感染なので貪食像や菌塊があった方がより臨場感がありますので良いと思います。菌塊ばっかりでは菌体の状況が不明確なので、できれば菌1つ1つの状況が確認できるものもあれば良いでしょう。

1

これは上記のものと同じ検体のグラム染色ですが、白血球が古く膿瘍形成をしていることが分かりやすいですが、新鮮な白血球では無く核の状況がハッキリ見れるものが少ないので躍動感が少し劣ります。できれば、白血球は核が明瞭なものを数個見つけて一緒に写っているものが良いでしょう。

2

またこういうのも良いでしょう。菌の大きさを1枚で比較できるもの。

動物咬傷後の膿汁です。PasteurellaとCapnocytophagaが有名な菌ですのでこれらが確認できるものであれば良いと思います。

・PasteurellaはHaemophilusと類似のグラム陰性で直線状をした短桿菌
・Capnocytophagaは紡錘状の桿菌で、やや湾曲したりしたもの。
・スケールバーが必要なので多核白血球(15-20μm程度の大きさ)を添えると良い。メジャーの付いている写真が撮れればなお良いでしょう。

3

複数枚撮影しても良いでしょうが、カンファレンス用に使用したり、カルテに添付したりする場合は少ない枚数でより多くの情報が出るようにすると見る時間や読む時間の短縮になり時間を有効活用できるでしょう。

少し「ウザい」と思われているかもしれませんが、美しく写真を撮影すること、これはグラム染色の美学かもしれませんし、臨床微生物学としての拘りかもしれません。

皆さんは何を訴えますか?

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