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2015年4月28日 (火)

医師への報告は難しい

ブログ愛好家の皆様。師範手前でございます。

ここ数日ブログの更新が滞っていますがご了承ください。

皆様もそうと思いますが年度初めにつき、人事異動などもあってブログを書く時間が著しく減っています。そのため大変ご迷惑をおかけしております。

決してブログ閉鎖をしたということではありませんので、今後もご愛顧ください。

最近、個人的に思うことは医師への菌情報の伝え方が大変難しいということ。
しみじみ思います。

例えば、血液培養が陽性になりグラム染色所見で陽性球菌が検出されました。(まだ質量分析たる近代的な機器が無い場合ですが)菌はクラスター形成しているのでブドウ球菌であることが分かります。これでStaphylococcusで無い場合はAerococcusやRothia、Micrococcusくらいです。

Mssa1血液培養からのブドウ球菌。大きなクラスター形成なのでS. aureusがmax熱い所見です。

当然、MRSAという最重要の菌種かどうかが焦点になると思います。

PCRを実施してmecA陽性であったとします。mecA陽性つまりPBP変異でメチシリン耐性なのでβ-ラクタム薬に耐性となります。さあ、どうコメントするか?

①mecA陽性なので耐性菌です。 
②メチシリン耐性菌です。
③mecA陽性でメチシリン耐性です。
④mecA陽性でメチシリン耐性と判定されたのでβ-ラクタム薬に関して耐性です。
⑤mecA陽性でメチシリン耐性と判定されたのでβ-ラクタム薬に関して耐性です。またβ-ラクタマーゼ阻害剤は今回の結果では効果は無いと考えます。

⑤が一番丁寧ですが①や②だけで十分ではないかと考えがちです。

そうです。①や②は日常診療に馴染みが無いので全く伝わらない場合が出てきます。③も同じです。④については少し丁寧ですがβ-ラクタマーゼ阻害剤が有効と思いがちになります。

実際、「mecAとかメチシリン耐性とか言うけど何人の医師がそのことを理解できるのですか?」と注意を受けました。反省させられました。

当然、mecAなどについては国家試験レベルの内容になりますので、不勉強(または無関心)な医師側にも問題があるかもしれません。

そう考えると⑤がベストでは無いかと思いますが、少ない検査システム内の有効文字数では十分に伝わりません。なのでカルテ記載が必要なケースになります。

付箋はどうかというとカルテに反映されていない以上は伝わったかどうかの検証も不可能です。やはり言うべき内容はカルテにしっかり残す必要があり、なおかつどの医師でも理解できるような内容で記載することが大切だと思います。

そう思った数週間でした。

日常的にグラム陽性球菌という簡潔な報告のみでは無く、ブドウ球菌とかレンサ球菌とか、腸球菌疑いとかこまめに報告しています。同じグラム陽性菌でも感染症の原因が異なり、抗菌薬の使い方も若干異なることがありますのでこれはこれで継続していこうと思います。

新年度がんばりましょう。

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2015年4月11日 (土)

グラム染色初級者とその指導者のために

新年度になり、新入生が入ってきたり、異動があったりしているはずです。

当院も新たに初期研修医がやってまいりました。
毎年、初期研修医にはグラム染色について話す時間を取っています。医学生の多くは2-3年次に微生物学を習っているため、もう微生物のことは忘れている人ばかりだと思います。
1.グラム染色はなぜするのでしょうか。
簡単に言えば、臨床現場では初期抗菌薬の選択をより確実なものにするため、微生物検査室では培地を選択する上で必要な情報を収集するため。要は材料中に存在する微生物の種類を形態的特徴により分類していく作業になります。
微生物の情報は無くても全てカバーできる抗生剤を投与すれば問題無いのでは?と思ってはいないでしょうか。合理化としては正解ですが、対象となる微生物を絞り込んで標的治療をすることはより効果的な抗生物質の投与を可能にするだけでは無く、薬価や副作用を含めたところまで考えることが可能になります。
初期治療薬を選択する上で微生物の情報が無いというのは、本当に心細い診療になると思います。
2.グラム陽性とは
グラム陽性菌は前染色のクリスタル紫により染めだしされ藍色に染まる菌のこと、グラム陰性菌とは後染色のパイフェル(またはサフラニン)により染めだしされ赤色に染まる菌のことを指します。
グラム陽性菌は細胞壁がグラム陰性菌に比べて分厚いため脱色されにくく、後染色されても青味の強い像で観察されます。グラム陰性菌は脱色の後、外膜が染色され赤くなります。外膜があればバンコマイシンのような分子量の大きい抗菌薬は透過することが困難になり自然耐性を示します。よって、β-ラクタムアレルギーのある患者にバンコマイシンを安易に選択した場合、感染症の原因菌がグラム陰性菌(例えば大腸菌)であった場合は治療は失敗します。グラム染色はそういう最低限起こり得る失敗を未然に防ぐことが可能です。
染色液の種類により内容物は異なりますが原理は殆ど同じになります。
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3.グラム陽性菌は形態的な特徴で分別できることが多い
グラム陽性菌には球菌と桿菌があります。
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球菌にはブドウ球菌とレンサ球菌があります。細かく分類していくとブドウ球菌の中にも毒性の高い黄色ブドウ球菌と毒性は低いが人工物関連の感染症を起こした場合に検出されるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌があります。形態学的には良く見ると区別ができますが、慣れていないと難しいです。
少し形態が異なるレンサ球菌は、名前の通り数珠のようなレンサ状の球菌として確認されます。多くがペニシリンが第一選択になるためブドウ球菌とは少し違うアプローチが可能になります(ブドウ球菌はペニシリンに対する耐性機序を持ち合わせていることが多い)。

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グラム陽性桿菌は形態的特徴は多く区別は可能なことが多いですが、遭遇する機会が少ないので馴染みが薄いかもしれません。長いか短いかだけでも大きな情報になります。
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4.グラム陰性菌の分別は神領域
グラム陰性桿菌は全て同じ像として見えるかもしれません。しかし良く見ると顔が違って見えます。これが区別できるようになれば、あなたも神領域だと思います。とりあえず修練していきましょう。
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緑膿菌は医原的行為に付随して発生することが多いので患者さんの背景を検討した上でグラム陰性桿菌であれば緑膿菌を疑うことも可能かと思います。特に臨床現場では抗緑膿菌作用が必要かどうかが分かれ目になることが多くなると思います。しかし緑膿菌は本当に難しいです。
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5.何はともあれキレイな標本作製と的確な視野出しが重要です
何事も初めが肝心です。分別する前に良い検査材料を採取することです。特に肺炎診療のために採取した喀痰はしっかりと下気道由来のもの(病巣に近い痰)のみ反映されるように良質な痰を採取する必要性があります。唾液が混じり過ぎるとせっかく見えている起炎菌を見逃すことになります。
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視野は染色がキレイな場所を探しましょう。白血球は多くところが良いですが、逆に重なり過ぎている場所は良くありません。見る場所もしっかり決めてあげましょう。
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最後に、染色の仕方は体得するまで時間がかかります。本や下敷きを見ながら最初は確実に覚えるのが大切です。
3 S社さんと共同で作った下敷き。
さあ、黒帯目指して頑張っていきましょう。

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