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2015年1月31日 (土)

臨床微生物学会、絶賛開催中

1/31~2/1まで京王プラザホテルで第26回日本臨床微生物学会総会が開催されています。

1日目の朝からベーシックレクチャー2を担当させて頂きました。
会場は9時前から既に熱気ムンムンです。

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9:30~30分だけでしたが簡単なレクチャーをさせて頂きました。

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時間の都合上、「後押し」の部分についてお茶を濁すような内容になりました。
聞いて頂いていた方申し訳ありません。

後半の内容について簡単に記載をします。

1.グラム染色だけで重症度は語れない

グラム染色は検体中の菌を証明するツールです。菌が大きいから、数が多いから、貪食があるから などということだけで重症度は分かりません。検査室のミッションとして菌が検出されていることを最低限報告するだけでも重要な情報です。もしカルテ上で感染症が原因となり血圧が下がっている、血球減少を認める(特に血小板数が病的に低下している)など記載があれば急ぐかもしれませんので、「少し気になったので連絡しました。」とか、「今後の培養結果を報告する際に情報として聞いておきたいので、患者の情報を教えて下さい。」とか急ぐ場合は電話でお話すると良いと思います。その場合は医師の時間配分には十分に気をつけてお話下さい。

2.貪食の評価

貪食があるから感染である、貪食が無いから感染で無いという空論はもう必要は無いと思います。貪食というのは血管外に遊走してきた好中球は異物を食べる習性があります。それが常在菌でもそうです。喀痰の場合は下気道は無菌なので、そこから採取された痰の場合に貪食があれば局所状態を反映しているというところから貪食=感染となるのでしょうが、誤嚥性肺炎についてはMRSAを食べていてもそれば主たる原因菌として肺炎となっていないことも多く経験します。また、肺炎球菌は貪食回避をします。明らかに大葉性肺炎で喀痰で肺炎球菌が出てきて貪食が無いとしても肺炎の原因菌として考えることがあります。

極端には皮下膿瘍の膿汁から出た菌が貪食が無くても原因菌です。
落ち着いて考えましょう。

3.菌がそこに見えるのは理由がある。なので理由が分かれば原因菌は推定出来る。

・肝膿瘍からEnterobacter

Enterobacterは胆管炎の原因菌として分離頻度が高いです。胆管炎のうち閉塞性胆管炎であれば異物(特に結石)による閉塞、がんによる閉塞が主な理由です。Enterobacterは3世代耐性菌の分離頻度も高い菌で、抗菌薬の曝露歴なども重要な情報の一つです。悪性腫瘍になると増えるよという情報もあります。患者ががんに関連した感染症を疑う場合で腸内細菌かなという菌を見ればEnterobacterも想定される訳です。(Reviews of Infectious Diseases 1991;13:550-8)

・S. maltophiliaは人工物関連感染に良く出てくる

人工物が大好きな菌は、カンジダ、Acinetobacter、S. maltophiliaが有名です。
S. maltophiliaはカルバペネム伝説が通用しない菌の一つです。
人工物に関連した感染症の場合、特に広域抗菌薬が長期間投与されている場合、集中治療が必要とされている患者の場合はS. maltophiliaも想定しましょう。
グラム染色では緑膿菌に類似していますが、淡い桃色に染まり集塊形成はあまりありません。結構単一のものが散在しています。(Clinical Microbiology Reviews 2012,p. 2–41)

・EnterococcusでもE. faeciumは入院患者に多い

腸球菌と言えばペニシリンが第一選択と思われている医師は多くみます。E. faeciumはそのペニシリンが第一選択薬で無い腸球菌です。腸球菌にはE. faecalis以外にもE. faeciumというペニシリンの効果が期待できないものもいることは忘れてはいけません。
E. faeciumはE. faecalisに比べて丸いです。B群溶連菌とは類似しています。

・Proteusが尿から出たら結石を疑え

Proteusは尿素分解能が高い菌の一つです。尿中のアミノ酸は分解されアルカリ尿にします。なので、Proteusが出る尿はpHが7以上のことを良く見ます。pHが上がれば結石のリスクは上がります。特に寝たきりの患者、バルン留置中の患者ではそのリスクは上がります。詳細はこちら(http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-9fc0.html

両端が細く集塊状に確認できることが多いです。緑膿菌との区別が難しいことが多いです。

その他、その菌がそこから出るには理由があります。また色々とお話したいですが時間が無いのでまたブログに載せていきます。

では明日まで学会です。みなさん夜は飲み過ぎないようにしましょう。

今日、部屋に入れなかった人、来れなかった人にも内容を公開します(どこかで期限を切りますが)。良ければダウンロードしてお使い下さい。利益を産むこと、その他悪いこと(女性を口説く以外 笑)には使わないでくださいね。

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2015年1月22日 (木)

第26回日本臨床微生物学会総会・学術集会のお知らせ

来週の1/31、2/1に東京で第26回日本臨床微生物学会総会・学術集会が開催されます。

今回はベーシックレクチャー2でグラム染色のお話をさせて頂く機会を得ました。

内容ですがベーシックだけに基礎的な話になりますが、それを中心に話していきます。
出来るだけ2-3年の経験者でも解るような内容にしていきますが、それでは少し詰まらないので実臨床の話も加えたいと思います。

内容を少し紹介します。

皆さんもご存知ですがグラム染色は診療報酬で61点となっています。

グラム染色は感染症診療を行う上で原因微生物の特定を行う臨床検査の一つです。

・微生物検査は時間がかかると思われがちですが、グラム染色のTAT(turn around time)は非常に短い。

・臨床検査の中でも比較的低コストで実施でき、微生物検査室が無くても検査ができる。

・一度に複数菌が存在しても判断ができ、菌種によっては推定ができる。

・材料評価に用いることで培養結果の解釈時に参考になる。

・結果を通じて臨床医とコミュニケーションが図れる。

「グラム染色で何が解るんですか?」とか、「感染症の診断は出来ないでしょう」とか言っている人は居ないでしょうか。

感染症を起こすと多くの場合は原因菌の増殖が旺盛になります。増殖してくれば抗菌薬の前投与やグラム染色で染まらない菌以外は見えてくる機会が増えます。それが無菌材料から検出することができれば起炎菌の可能性が高まりますし、常在菌の混入が考えられる材料(例えば喀痰)でも優位な菌であれば起炎菌の可能性が高くなります。そのため日常診療の中でグラム染色を行うだけで起炎菌が推定可能になり、それに適した抗菌薬の投与が可能になります。

自覚症状や臨床所見から感染症であることや感染臓器の特定は可能ですが、多くは起炎菌の種類は解りません。肺炎などはその代表的な感染症と思います。
まだグラム染色をされていないが感染症診療に携わっている医療従事者の方々、またはこれから志す学生の皆様、微生物検査室の門戸を叩いてみてはどうでしょうか。

ところで感染症診療の原則という言葉は色々な場所で聞かれるようになりましたが、「グラム染色の原則」という言葉は良く思えば無かったかと思います。

少し考えてみました。

「グラム染色の原則」

・適切に採取された検査材料を用いる
・綺麗な標本を作成する
・正しく染色を行う
・正しく判読をする
・解りやすい結果を報告する

どうでしょうか?他に何かあれば教えて下さい。

あと、検査結果には限界があり、その限界について考慮するなどでしょうかね。
やはり正しい染色技術は大切なスキルの一つです。

下記は尿から検出された腸内細菌(大腸菌)ですが、後染色(当院はパイフェル液)の時間を変えて見てみました。

1 パイフェル液10秒
2 パイフェル液30秒

後染色の時間は適当にしても染まることが多いですが、実はしっかりと時間を置かないと推定菌の判断に迷うことがあります。尿だから迷わないかもしれませんが、時間が短いと染色性が少し損なわれます。

嫌気性菌や緑膿菌は染色性が腸内細菌に比べるとパイフェル液の染まりが少し悪いことがあります。皆様、少し気にしながら染めてみて下さい。

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2015年1月 6日 (火)

「医療機関における院内感染対策について」の内容が変更になりました

昨年末にパブリックコメントされていた内容を受けて、12/19付けで「医療機関における院内感染対策について」の内容が大幅に変更になっていました。

2014年12月19日付 医政地発1219第1号 「医療機関における院内感染対策について」
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恐らく色々な事例があってのことだと思います。

・大阪の大規模病院の長期間院内伝播事例:http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/1726-source/drug-resistance/idsc/iasr-news/5213-pr4182.html

大まかな内容は下記の通りです(一応皆さん確認して下さい。)

前のやつはここにあります。http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/01/dl/tp0118-1-76.pdf


1-1-(1) 洗浄・滅菌消毒部門、給食部門および、雇用形態に関わらず全て の文言追加
1-2-(2) 指導・介入 介入が追加
2-2-(3) 手洗いの方法記載について変更
2-4-(4) 科学的根拠うんぬんと記載追加
2-5-(2) 医療機器の感染事例滅菌消毒ガイドラインなど 大幅に変更
2-9-(1) アウトブレイク、介入基準の設定 追加文あり
3-13-2 大幅に変更あり
3-3-(1) CREの追加とVRSAVREMDRPMDRAは保菌を含めて1例以上という厳しい基準の追加
3-3-(2) プラスミドという言葉の追加
3-3-(4) 全文追加
3-4-(2)大幅変更あり


内容として医療従事者に伝える際に難しい内容が多くなりました。

1.CREについて

 最近では腸内細菌科のESBL産生菌が市民権を得られるようになってきましたが、今度はCREです。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と訳しますが、カルバペネム分解酵素を産生する腸内細菌科の細菌が日本の色々な場所で分離されるようになりました。

Cre

カルバペネム分解酵素は出しますが、腸内細菌科では緑膿菌のように高度耐性にはならないのが特徴です。そのため検査室で測定をすると感受性の方法にもよりますが誤って感受性と判定されるため発生に気付かないことがあります。

日本ではIMP型のMBL産生菌が多く分離されているのですが、IMP-6型についてはカルバぺネムのうちIPMのMICが低いのが特徴です。

・カルバペネム分解酵素スクリーニングのための適した抗菌薬選択:http://www.nih.go.jp/niid/ja/drb-m/drb-iasrs/4687-pr4124.html

カルバペネム分解酵素の確認としては以下のように考えています(今でもこれが良いというものがありません)。

・IPMまたはMEPMのMICが0.5μg/ml以上を示し、同時に3世代セフェムが耐性になっている腸内細菌科を確認。


・上記の株について、SMAテスト、MHT(変法ホッジテスト)やCarbaNPテストでカルバペネム分解酵素の存在が推定される結果が得られる。

カルバペネム分解酵素の確認にはSMAで確認できるMBL以外にもKPCやOXA型などあり全てカバーできる方法は今のところありません(KPCやOXAはSMAには反応しません。)

2.プラスミドという言葉

微生物検査や院内感染対策、遺伝子組み換えなどをしていないとプラスミドという言葉には全く馴染みが無いと思います。呪文か何かですか?と言われそう。

プラスミドの意味をこの文章から悪いイメージを想定しますが、実は遺伝子組み換え実験など人間には大きな役割を果たしてきた内容も多いはずです:http://www.kenq.net/dic/78.html

ただし、医療現場では耐性遺伝子、特にβ-ラクタマーゼの伝播を行うことが多くESBLもその代表的な耐性菌です。

特に「カルバペネマーゼ遺伝子は、プラスミド上に存在することが多く、接合等により腸内細菌科の他菌種にまで水平伝達され、カルバペネム感性の菌がこれにより耐性化することがある。また、腸内細菌科細菌ではカルバペネマーゼ遺伝子を持っていてもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示さない場合があるが、このような菌株でも耐性遺伝子の発現量変化、細菌外膜の変化で耐性化することがある。
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/1725-source/drug-resistance/idsc/iasr-topic/5238-tpc418-j.html

ということなので問題になるわけですが、今までは1つの耐性菌がいくつ検出された場合にアウトブレイクと定義付けられていましたが、今からは菌種が異なっても同じ耐性機序と確認(またが推定)された場合でもアウトブレイクとなり、CREの場合は1例でも発見されたらアウトブレイク対応で厳重に院内感染対策を行う必要がある訳です。

また、アウトブレイクが起こりそうな要素(医療器具や機器の適切な使用など)を日常より摘み取り、患者にとって安心で安全な医療を提供し続ける義務が医療現場にはあります。微生物検査室が院内にあってもアウトブレイクは起こります。誰かが異常にいつ気付いて対応を早くするかどうかが今後の院内感染対策には求められます。

また、外部委託業者も同じスタンスで院内感染対策を進めていかなければなりません。
病院職員構成の多様化と感染対策:http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03106_02

検査部門からの病原微生物の検出状況の報告と院内周知については継続して行わなければならないので、「うちには微生物検査室が無いから対策が後手に・・」とか、「微生物検査室はあるけど人数不足でそこまで手が回らない・・」とか言っていると後で厳しいお仕置きが待っているかもしれません。

病院の立看板に「微生物検査室はありませんので院内感染対策が後手に回ります」とか、「安全な医療を提供出来ませんが良いでしょうか?」とか書くわけにはいきませんし、患者はそれを選べれないので、足りない点は皆で補いながら対策を立てていくしかありません。

当然のことながらこういう状況であることは病院管理者には知って貰う内容であり、不足している内容についてはしっかりと伝えることが最も大切かもしれません。
院内感染対策は本来病院管理者が行う業でありますが、感染対策を組織的に行っている部門はその代行となります。先行きが見えない内容ですが指導や介入をしっかり行っていきましょう。

今日のグラム染色は尿です。

当たり前ですが、グラム染色だけでは耐性菌かどうか分かりません。
尿一般検査や沈渣では細菌尿と分かっても菌種推定はできません。沈渣は雑菌が混じることが多いですし、菌種推定の特異度は下がります。

尿路感染症の診断には
・尿一般検査を出す。
・尿培養を出す。

培養結果が待てないのならグラム染色をして菌種推定し、適切な抗菌薬選択を行う。
グラム陰性桿菌でない場合でも良いと思います。

しかし、腸球菌を確認することは抗菌薬の選択には重要です。

腸球菌は尿路感染症で使う機会の多いセフェム、アミノグリコシドとサルファ剤には自然耐性です。グラム陽性のレンサ状球菌で4-8連鎖のものが多く見えると腸球菌を疑うことができます。院内感染を疑う場合はE. faeciumの分離確率も上がりますのでVCMか?という考察も可能かもしれません。亜硝酸塩還元試験は陰性ですので試験紙でも分かりません。

皆さんご注意ください。

600 ×1000 腎盂尿

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