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2014年12月 1日 (月)

グラム染色でどこまで把握できるのか 先日の長野県での講演から

9月から11月にかけて色々なところ、色々な職種を対象としてグラム染色の

お話をさせて頂く機会を頂きました。

先日、長野県にお邪魔してグラム染色の有用性について話させて頂く機会がありました。
こども専門病院ということで小児で相談受けている内容をフィックスしてお話させて貰いました。

検査室でグラム染色を見る場合には直接患者さんには面会していないので依頼書に載っている情報を頼りにしながら、各々の染色結果について考えて行きます。

・患者属性(年齢、性別)
・目的菌情報
・採取部位
・患者背景

などなど。

そのうち患者属性は非常に有用な情報の一つです。

例えば、下記の喀痰グラム染色はどうでしょうか。10歳、男児の想定です。

Photo ×1000(その1)

右側には扁平上皮が見える。角張は少なく上皮の重積は多い。中央やや左にはやや立体感のある濃染した構造物がある。でんぷん質のようだ。周囲には大型のグラム陽性桿菌が混在している。グラム陽性球菌は形態からBacillus、Clostridium、Lactobacillusが疑われているが喀痰からBacillusが大量に出てくる状況は非常に少ないので、Clostridium、Lactobacillusが推定される。

2 ×1000(その2)

右下方には扁平上皮が確認される。上皮の上には常在菌と思われる菌が多数確認されている。中央には多核白血球が若干確認され周辺は炎症性物質と思われる淡紅色の物質が見られる。また中央にはスピロヘータを疑うらせん状の桿菌が多数確認され口腔内衛生状況が悪いことが考えられる。スピロヘータはグラム陰性桿菌となるが、培養では発育しない菌であり、コメントでフォローをすることも必要である(字数制限など考慮する)。

3 ×1000(その3)

中央やや右にはでんぷん質と思われる重積した構造物と大型のグラム陽性桿菌が多数確認できる。また中央部の右には酵母と思われるやや大型のグラム陽性球菌が確認される。

総合的な解釈として、でんぷん質が多く確認されClostridium、Lactobacillusのような大型桿菌に加えて酵母もある。膿性部分は非常に少なく上皮も多数占める。

報告としては上記の内容を基に下記のような解釈ができます。

・喀痰がしっかりと採取されたものであれば誤嚥性肺炎(恐らく消化液の誤嚥を含む)の可能性がある。

・胸部に異常陰影がなければ採取条件が不良であり検出菌は直接起炎菌の可能性は低くなる。誤嚥はあるが直接の起因になるかどうかはスメアでの判断は難しい。

と判断できると思います。

繰り返し書きますが10歳、男児のみの情報であればこのグラム染色所見は少し変な感じがします。そこで、スメアの状況についての説明を状況にマッチングさせるため主治医に確認すると、主治医と同じ意見(胸部に異常所見は無く、誤嚥性肺炎の可能性は低い)となりました。先天性疾患で他院で経過観察中で胃に経管栄養を施行中の患者であったのですが、急に嘔吐と発熱をきたし来院。一応当初は肺炎も疑い喀痰を出したようですが肺炎はこの時点で否定的となりました。同時に検出菌があれば感受性が必要な菌種についての情報を貰い翌日培養結果との照合に繋げています。

当日は沢山の方々が聞きに来て頂きましたが、フロアより「誤嚥性肺炎の判断はどのようにしているか?」と聞かれ以前の話題に触れました。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-0c2f.html

最終的には喀痰の採取が上手くいくこと、唾液が多くてもいかにして膿の部分を採取してスメアを作成するのかについて話をさせて頂きましたが、この辺りは伝えるのが難しいのでどこまで伝わったのかは確認できませんでした。

やはり検査室でもしっかりとスメアを作成することは重要です。

長野県でお世話になりましたK先生、O先生ありがとうございました。
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今年はもうグラム染色についてお話する機会はありません。次は臨床微生物学会のベーシックレクチャーを担当させて頂きます。3月は島根県にお伺いします。
皆様宜しくお願いします。

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