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2014年11月20日 (木)

第20回神戸グラム染色カンファレンス終了

先日、第20回神戸グラム染色カンファレンスが盛会のうちに終了しました。

今回は過去最大?で96名の方々に参加して頂きました。

回数を重ねるごとに医師の数が増えているように思いますし、研修医や医学生の参加も増えてきました。これも感染症診療におけるグラム染色の位置づけが高くなったためと思います。

さて、今回は以下の2題の発表でした。

①偽物バッグにご用心

急性中耳炎のため医療機関を受診した5歳児。鼓膜内部に液貯留を認め鼓膜切開したところグラム陰性桿菌が検出されました。生後半年で海外に移住したためHibワクチン未接種の患者です。

3 ×1000 小さいのです

グラム陰性桿菌と言いましても短桿菌という所見。そこで何を考えるのか?という設問です。

追加で情報を加えると、既往歴では慢性中耳炎も鼓膜換気チューブの留置もありません。鼓膜内部は混濁していますが発赤は強くありません。外耳は少し腫脹はありますがどちらかと言えば内耳からの波及の可能性があります。頭部CTでは乳突蜂巣にはエアがあり乳突蜂巣炎は否定的です。動物飼育歴はありませんが1ヶ月前に隣人が飼育しているカメの甲羅を1度だけ掃除した。

痛みからは菌種は分かりませんし、Hibワクチン未接種の5歳児。中耳炎を疑う。

What's your diagnosis? 病態は?初期抗菌薬は?

恐らく皆さん、H. influenzaeによる急性中耳炎を想定すると思いますが・・・
まさかのPasteurella?

初期治療はABPC/SBTかCTRXで開始でしょう。

結果:何と! P. aeruginosaが発育してきました。

当然、ラボではこんな感じでした。

Photo

まあ仕方ありません。と言ってはいけませんが。

日本の小児中耳炎のガイドラインに記載がありますが、緑膿菌の市中感染例は0.5%とレア。緑膿菌の中耳炎は前述したように慢性中耳炎や鼓膜喚起チューブ留置者に多く検出されます。まあ通常はこんなのがみえますので鑑別は可能です(いつも当院では推定菌を返して外すうことはありません)。

6001 ×1000

Hibワクチンのワクチン歴につられて緑膿菌が鑑別に上がっていなかった。
菌だけをじっくり見て報告をしましょうという教訓でした。

偽物→Pseudo、バッグ→bug とコピー商品を掛けたタイトルでした(意外にうけませんでした)。

②発熱、咽頭痛を主訴に受信した66歳男性(少しうろ覚えです)

透析患者で咽頭痛があり、日に日に下顎の部分が腫脹してきたという症例。LVFXが初期投与されるも改善無く、喉頭鏡でも、咽頭に血腫は認めるが喉頭蓋炎は無く咽後膿瘍や扁桃周囲膿瘍を疑いフォローしていた。

ある日症状が悪化して緊急手術。切開排膿のスメアでグラム陰性桿菌が検出された。
菌は大小と多形成ですが染色性は悪く嫌気性菌を疑う所見。まさかの緑膿菌の連続か?という期待もありましたが、検出菌はPrevotella/Porphyomonas(現在はPigmentedもあり)感染症(Prevotella melaninogensca)。中縦隔にも膿瘍形成があり深頚部膿瘍+中縦隔膿瘍という重症感染症でした。

教訓としては検体は大量に出たが、嫌気容器への採取がなされていないで綿棒採取で少量のみであった。そのためスメアや培養に影響が出る可能性がある。綿球は嫌気性菌には悪影響であり嫌気ポーターなどに採取が望ましい。出来れば手術前に検査室と採取容器について相談することが望ましい。

嫌気性菌と言えども最近はCLDM耐性株が問題になる。第一選択薬は教科書的にはペニシリン/βラクタマーゼ阻害剤配合 が使われる機会が多い。Bacteroidesなどを除き殆どはABPC/SBTが感受性となる。GNRの場合はβラクタマーゼ産生菌も存在しABPC単剤では少し不安なこともある。ただしMEPMについては複数菌感染を除き初期治療で使う機会は少ないようである。

今回膿瘍ができた経緯については明らかにはなっていませんでしたが勝手に推論。

透析患者なのでヘパリンを使用していた→感染症が疑われるためLVFXを投与した→広範囲の腸内細菌は死滅→ビタミンK不足→凝固能の低下→血腫ができた→嫌気性菌が血腫内感染を起こした→膿瘍化した→降下性病変にて縦隔炎を起こした。

キノロンは凝固時間が延長している患者に投与するとたまに皮下血腫を起こしますよね。腹直筋膿瘍は良く知られていると思います。また嫌気性菌は苦手としている菌種の一つなので覚えておくことが必要です。

また今回はPrevotella/Porphyomonas(現在はPigmentedもあり)の感染症。微生物検査では集落にUVランプを当ててみるとFusobacteriumやBacteroidesとの鑑別が早いことが知られています。ルチンでされていないところもあり、UVランプがあれば直ぐに鑑別できます。一度暗室で当ててみましょう。非常に良い発表でしたね。

これは手持ちのもので当日の発表ではありませんが同様の所見になります。菌はPorphyomonas assacharolyticaです。

Prevotella_asacharolytica UVを当てる前(メラニン色素のため黒い集落)
Prevotella_asacharolytica_2 UVを当てると赤く光る

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2014年11月14日 (金)

第13回日本臨床微生物学会 感染症学セミナーの開催

今週の日曜日に神戸で第13回感染症学セミナーが開催されます。
当日は若干空きがありますので当日参加が可能です。

急遽予定が空いたとか、興味が湧いた、同様の症例があり勉強したいと思われる方がいらっしゃいましたらご参加ください。

以下、ホームページのコピペです。よろしくお願いします。

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日本臨床微生物学会では、平成22年から一般臨床医、感染症医、医学生、臨床検査技師、認定臨床微生物検査技師、ICMT、薬剤師、BCPIC、BCICPS、看護師、ICNなどを対象に感染症学に関するセミナーを開催しております。各種感染症の診断、治療および微生物検査についてのレクチャーとケースカンファレンスを通じて、コモンなものからレアなものまでの臨床感染症学ならびに臨床微生物検査のノウハウを楽しく学ぶことができるように企画されています。

第13回のテーマ:抗酸菌感染症

  1. 日程
    日時:平成26年11月16日(日曜日)12時30分~17時30分(受付開始:12時~)
    場所:神戸大学医学部会館シスメックスホール

    http://www.kobe-u.ac.jp/info/outline/facilities/sysmexhall/map.html

    〒650-0017 神戸市中央区楠7丁目5-2
    TEL:078-382-5111(代表)、地図は上記URLを参照下さい。
  2. 内容
    12時30分~12時40分
    開会挨拶、イントロダクション

    12時40分~13時55分
    抗酸菌の検査方法 塗抹・培養検査から感受性検査まで
    NHO近畿中央胸部疾患センター 吉田志緒美

    13時55分~14時45分
    ケースカンファレンス1
    神戸大学医学部附属病院 感染症内科 大倉 敬之

    14時45分~15時
    休憩

    15時~15時50分
    ケースカンファレンス2
    神戸大学医学部附属病院 感染症内科 村上 義郎

    15時50分~16時40分
    ケースカンファレンス3
    神戸大学医学部附属病院 感染症内科 浅川  俊

    16時40分~17時15分
    ショートレクチャー 非結核性抗酸菌症と遺伝子検査
    NHO近畿中央胸部疾患センター 吉田志緒美

    17時15分~17時30分
    質疑・応答、総括、閉会
    1. 定員
      200名:先着順
    2. 参加資格は日本臨床微生物学会の会員・非会員の区別は問いません。
    3. 参加費(会員、非会員)2,000円

感染症学セミナーWG担当委員:細川 直登、大塚 喜人(亀田総合病院)、笠原  敬(奈良医科大学)、幸福 知己(住友病院)、山本  剛(西神戸医療センター)、大路  剛(神戸大学)、吉田 弘之(神戸大学)

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2014年11月 7日 (金)

第20回神戸グラム染色カンファレンスのお知らせ

神戸地区では年3回のスケジュールでグラム染色に特化した内容で研究会を開催しています。今回で20回目を開催させて頂くことになりました。
日常的に感染症診療の検査である『グラム染色』から得られる感染症情報を活用し、どの様に感染症診療へ切り込んでいくのか、医師・臨床検査技師および薬剤師それぞれの立場から考え、活発なディスカッションを行おうという新しいスタイルの会であります。お忙しいとは存じますが、ご興味のある方はご参加よろしくお願いします。
日時:平成26年11月13日(木)18:50~
場所:三宮研修センター5階505号室
参加費:500円
司会 兵庫県立尼崎病院・塚口病院 ER総合診療科  山本 修平 先生
   神戸大学医学部附属病院 感染制御部 吉田 弘之 先生
症例検討 19:00-21:00
「偽物バックにはご用心を」
 西神戸医療センター臨床検査技術部 山本 剛 先生
「発熱、咽頭痛を主訴に受診した66歳男性」
 住友病院 耳鼻咽喉科 小幡 翔 先生
 同 臨床検査技術科 森崎 隆裕 先生

前回は、Pasteurella multocidaの脊椎硬膜外膿瘍、Mycobacterium marinumの皮膚感染症の2つでした。
http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/19-70c5.html

今回はどのような症例が飛び出すのでしょうか?楽しみですね。
グラム染色をすることで、こういう症例もフォローすることが可能です。
写真は潰瘍性腸炎で定期的に外来フォローしていた患者に発生したキャンピロバクター腸炎です。原疾患の悪化と思うがちょっと違うな?という動機により染色依頼がありフォローできたりします。便のグラム染色をしていない施設は多いですが症例を絞ってするとヒットすることもあるので必要時にはしてみてはどうでしょうか。
Photo

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