電子カルテとグラム染色
ここ1ヶ月更新が滞っておりました申し訳ありません。何故か忙しくて中々筆が手に付きませんで申し訳ありませんでした。
さて、たまに「師範のところでは電子カルテにグラム染色の結果は反映されていますか?」と聞かれます。一応、電子カルテ上で閲覧できる塗抹画像という場所は作っていますが細菌検査の結果と直接リンクしていないので現場から能動的に見る機会も少なく、今は画像の格納庫状態になっています。
現在は見て貰うために直接電子カルテ上に書き込むことをしております。少しデモ画面を使い紹介します。
1.顕微鏡
当院の顕微鏡はディスカッション型の顕微鏡を設置しています。
これはグラム染色所見の情報共有や研修医教育に大変重宝しております。ディスカッションなので矢印も出て、検鏡の途中で「あ、そこそこ」とか、「もう少し上」とかいうことを言わなくて済むようにしています。デジタルカメラもありますが、やはり生標本は見応えがあります。
2.電子カルテと部門システム
電子カルテは部門システムと相乗りの形で設置しています。当たり前ですが顕微鏡の横にも設置をしています。
当院はペーパーレスですので手間がかからず、結果はそのまま記入し報告をすることができます。端末は各セクション(塗抹、培養、同定・感受性、結核菌検査+データ整理用)にそれぞれ設置しています。
当院はペーパーレスですので手間がかからず、結果はそのまま記入し報告をすることができます。端末は各セクション(塗抹、培養、同定・感受性、結核菌検査+データ整理用)にそれぞれ設置しています。
部門システムはS社の微生物検査システムのSmileh、電子カルテはN社のものを使用しています。電子カルテと部門システムは相乗りしていますので、グラム染色を見る時は患者情報は全てカルテ上から収集することができます。例えば、既往歴や現病歴、身体所見から主治医の考え(目的菌含む)まで知ることができますし、看護記録も情報として収集ができます。便利になりましたね。
なので、主治医が想定している原因微生物もそうでしすが、想定外の微生物が確認された場合などはこまめに対応することにしています。
また、患者さんの画像も閲覧できるので、例えば肺炎の類型なども参考にしながら喀痰グラム染色を見たりします。気管支肺炎ならインフルエンザ菌やモラクセラ菌、大葉性肺炎なら肺炎球菌などを探します。胸部Xp撮影が読めない場合は胸部CTを参考します。CTの場合は読影所見もあり初心者にもやさしいですね。
カルテ見ながら仕事するには時間が無いという方も居ると思いますが全ては見なくても良いでしょう。最初は喀痰だけでも良いですので序序に増やしていきましょう(ちなみに当院は年間23,000件(血培除く)を3人で対応していますが問題はありません)。
3.記事記載
多分、当院の特徴だと思います。
細菌検査の結果紹介画面では字数制限もありますのでしっかりと意味を伝えきれないことが多くあるので記事記載をすることがあります。
多分、当院の特徴だと思います。
細菌検査の結果紹介画面では字数制限もありますのでしっかりと意味を伝えきれないことが多くあるので記事記載をすることがあります。
例えば
・グラム染色で推定できる菌種や病態把握についてコメントをする。
・材料の適否についてコメントをする
・推定菌の臨床的意義についてまとめる
・結果報告までの所要時間についてコメントをする
・結果報告までの所要時間についてコメントをする
・教科書的に使用を推奨する抗菌薬があればコメントをする
・病態より追加で採取して欲しい材料や検査があればコメントをする
・合併症の可能性がある場合はその内容について記載する
・合併症の可能性がある場合はその内容について記載する
などです。
記事記載は少し重くて無理・・・と思われる方も居るでしょうし、当院では出来ないんですという施設もあると思います。でも臨床検査技師がカルテ記載が出来ないということはありません。
こういうこともたまに見ないでしょうか
「先ほど提出した喀痰グラム染色所見の結果、細菌検査室の師範さんが○○菌と言っていたので××薬を処方した。」
確かに、言ったことは言ったがあくまでも推定段階の情報であり、当たり前に断言したかのような内容で少し気が引けたことは無いでしょうか。
確かに、言ったことは言ったがあくまでも推定段階の情報であり、当たり前に断言したかのような内容で少し気が引けたことは無いでしょうか。
でもこれをネガティブな解釈をしてはいけません。それだけ臨床現場と細菌検査室との距離が縮まってきたという表れなので良いことじゃないでしょうか。
グラム染色という情報ツールで主治医と繋がっている証ですね。
記事記載を記入する場合は写真とそれに対するコメントを記入します。直ぐにコメント出来ない場合は後から時間指定して間に埋め込むようにしています。
また、さっき言った内容が違う捉われ方をしてることは無いでしょうか?
また、さっき言った内容が違う捉われ方をしてることは無いでしょうか?
「おいおい、そんなこと一言も言ってないよお。」というのは無いでしょか。
カルテ記載をすると結果を正しくコメントすることで、勘違いを無くしたりできますし、主治医以外の医療従事者にもその内容が伝わり、例えば服薬指導をしている薬剤師さんにもその情報を共有することができます。
全ては患者さんに繋がることです。カルテ記事を未だしていないという施設では実施する方向で検討してみてはどうでしょうか?
カルテ記載をするにあたり
・カルテ記載ができる体制づくりを整える。主治医に了解を採る。部内の了解を得るなど。
・文章力を付ける。簡潔に伝えたい内容のみ記載する。だらだらとした文章は禁物です。
・病気について知識を付ける(菌の臨床的意義は最低限必要です)。
何事もトレーニングが必要ですので、少しづつ増やして行きましょう。
4.プレパラートは大切に
当院は1ヶ月ほど標本の保存をしています。経過観察や既往歴にも対応できますし、培養結果が返ったあとに再確認することでグラム染色の技能を高めています。
当院は1ヶ月ほど標本の保存をしています。経過観察や既往歴にも対応できますし、培養結果が返ったあとに再確認することでグラム染色の技能を高めています。
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
当院の状況を振り返ってみると,いろいろ耳が痛い,というのが正直な感想です。カルテ記載に関しては,もちろん実施してはいますが,あまりにも字数制限があること,また菌の「臨床的意義」までしっかり把握・理解したうえで報告できているかと言われれば,「Yes」とは言い難いです。プレパラートの保存に関しても,改善すべき箇所が山盛りな状態・・・。と,反省点ばかりが頭に浮かんだ今回の記事でした。
検体数は確かに多いほうだと思いますが,マンパワーはありますので,もっとひとつひとつの症例に目を向けるべきだと思いました。
投稿: Kei | 2014年10月15日 (水) 07時41分
Kei様
ローマの道はローマへ続く。
頑張ってください。そしてまた意見下さい。
投稿: 師範手前 | 2014年10月16日 (木) 20時22分