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2014年10月21日 (火)

迅速に報告してこそのグラム染色

先日はカルテねたで書かせて貰いました。意外にも反響が大きく載せて正解だったと思います。

さて、グラム染色を毎日見ていますが、その醍醐味と言いましょうか有効活用の場は以下の2つでは無いでしょうか。

・初期治療の抗菌薬を絞る:臨床所見などからある特定の起炎菌が推定され、その確認のために行う。

例えば、市中肺炎の肺炎球菌などは最たるものでは無いでしょうかね。前から言っているように画像では場所は確認できても、それが肺炎なのか、また起炎菌が何なのかは解りません。

Photo ×喀痰の肺炎球菌

・予想が外れたので抗菌薬(治療方針)を変更する:

例えば、細菌感染症と思っていたら酵母様真菌が確認された場合など。カルバペネムを入れているからの安堵感は一瞬んにして無くなります。そのインパクトは計り知れないものでしょう。
Photo_2 ×FN治療開始時の血液培養から検出されたCryptococcus

こういうのはありきたりの内容なので皆さんはしっかりと報告されていると思います。

特に、「予想が外れたので抗菌薬(治療方針)を変更する」というところは、既に抗菌薬が投与され安心感が少しは漂う状態になっていると思うので、しっかりと出来るだけ早くコメントをしたいものです。不適切な治療を継続する意味は無いと思います。


例えば、こういう症例があるとします。
クローン病がベースにある患者で下痢が酷くなってきたので来院してきた妊婦の場合ですが、原疾患の悪化と安易に考えてしまいステロイドを投与する場面もあるかと思います。

一応と提出された便のスメアを見るとこんなものが見えました。

2 ×便 1000倍

そうです。便で見える魅惑のらせん桿菌であるCampylobacter。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/campylobacter-d.html

カルテを見ているとそんなことが書かれています。
直ぐに電話です。
検査;「先生、便のスメアでCampylobacterが見えています。」
主治医;「・・・、え、ほんまに!?」。「治療した方が良いんかな?」
検査;「調べると、妊婦の場合は治療が必要な群になっていますけどね。」

報告した甲斐があり治療が奏功する例です。
患者さんに喫食歴を聞き直してみましょう。中々言えないでいる鶏刺しの喫食歴ありと追加情報が出てくると思います。

何はともあれ、何かおかしいので早く報告した方が良いのでは無いかという疑問を持つことは大事ですね。感染症診療に携わっている以上、そのあたりのアンテナはしっかりと磨いておきましょうね。もしくは何か見える時計など持ち合わせてみてはどうでしょうか。
Photo_3
直ぐに報告してこそのグラム染色だと思います。

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2014年10月10日 (金)

電子カルテとグラム染色

ここ1ヶ月更新が滞っておりました申し訳ありません。何故か忙しくて中々筆が手に付きませんで申し訳ありませんでした。

さて、たまに「師範のところでは電子カルテにグラム染色の結果は反映されていますか?」と聞かれます。一応、電子カルテ上で閲覧できる塗抹画像という場所は作っていますが細菌検査の結果と直接リンクしていないので現場から能動的に見る機会も少なく、今は画像の格納庫状態になっています。
現在は見て貰うために直接電子カルテ上に書き込むことをしております。少しデモ画面を使い紹介します。
1.顕微鏡
当院の顕微鏡はディスカッション型の顕微鏡を設置しています。
これはグラム染色所見の情報共有や研修医教育に大変重宝しております。ディスカッションなので矢印も出て、検鏡の途中で「あ、そこそこ」とか、「もう少し上」とかいうことを言わなくて済むようにしています。デジタルカメラもありますが、やはり生標本は見応えがあります。
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2.電子カルテと部門システム
電子カルテは部門システムと相乗りの形で設置しています。当たり前ですが顕微鏡の横にも設置をしています。

当院はペーパーレスですので手間がかからず、結果はそのまま記入し報告をすることができます。端末は各セクション(塗抹、培養、同定・感受性、結核菌検査+データ整理用)にそれぞれ設置しています。
部門システムはS社の微生物検査システムのSmileh、電子カルテはN社のものを使用しています。電子カルテと部門システムは相乗りしていますので、グラム染色を見る時は患者情報は全てカルテ上から収集することができます。例えば、既往歴や現病歴、身体所見から主治医の考え(目的菌含む)まで知ることができますし、看護記録も情報として収集ができます。便利になりましたね。
なので、主治医が想定している原因微生物もそうでしすが、想定外の微生物が確認された場合などはこまめに対応することにしています。
下痢便でこんなものが見えた時は、直ぐに電話しています。

3グラム染色で確認できたランブル鞭毛虫

また、患者さんの画像も閲覧できるので、例えば肺炎の類型なども参考にしながら喀痰グラム染色を見たりします。気管支肺炎ならインフルエンザ菌やモラクセラ菌、大葉性肺炎なら肺炎球菌などを探します。胸部Xp撮影が読めない場合は胸部CTを参考します。CTの場合は読影所見もあり初心者にもやさしいですね。
カルテ見ながら仕事するには時間が無いという方も居ると思いますが全ては見なくても良いでしょう。最初は喀痰だけでも良いですので序序に増やしていきましょう(ちなみに当院は年間23,000件(血培除く)を3人で対応していますが問題はありません)。
3_2

グラム染色の結果は簡易的にGPCが1+とかで返しますが、推定菌がある場合はどういう菌が推定できるか簡単に文章化して送信をかけています。
3.記事記載

多分、当院の特徴だと思います。
細菌検査の結果紹介画面では字数制限もありますのでしっかりと意味を伝えきれないことが多くあるので記事記載をすることがあります。
例えば
・グラム染色で推定できる菌種や病態把握についてコメントをする。
・材料の適否についてコメントをする
・推定菌の臨床的意義についてまとめる
・結果報告までの所要時間についてコメントをする
・教科書的に使用を推奨する抗菌薬があればコメントをする
・病態より追加で採取して欲しい材料や検査があればコメントをする
・合併症の可能性がある場合はその内容について記載する
Photo 記事を書きこんでいく

などです。
記事記載は少し重くて無理・・・と思われる方も居るでしょうし、当院では出来ないんですという施設もあると思います。でも臨床検査技師がカルテ記載が出来ないということはありません。
こういうこともたまに見ないでしょうか
「先ほど提出した喀痰グラム染色所見の結果、細菌検査室の師範さんが○○菌と言っていたので××薬を処方した。」
確かに、言ったことは言ったがあくまでも推定段階の情報であり、当たり前に断言したかのような内容で少し気が引けたことは無いでしょうか。
でもこれをネガティブな解釈をしてはいけません。それだけ臨床現場と細菌検査室との距離が縮まってきたという表れなので良いことじゃないでしょうか。
グラム染色という情報ツールで主治医と繋がっている証ですね。
記事記載を記入する場合は写真とそれに対するコメントを記入します。直ぐにコメント出来ない場合は後から時間指定して間に埋め込むようにしています。

また、さっき言った内容が違う捉われ方をしてることは無いでしょうか?
「おいおい、そんなこと一言も言ってないよお。」というのは無いでしょか。
カルテ記載をすると結果を正しくコメントすることで、勘違いを無くしたりできますし、主治医以外の医療従事者にもその内容が伝わり、例えば服薬指導をしている薬剤師さんにもその情報を共有することができます。
全ては患者さんに繋がることです。カルテ記事を未だしていないという施設では実施する方向で検討してみてはどうでしょうか?
2 記事記載完了
カルテ記載をするにあたり
・カルテ記載ができる体制づくりを整える。主治医に了解を採る。部内の了解を得るなど。
・文章力を付ける。簡潔に伝えたい内容のみ記載する。だらだらとした文章は禁物です。
・病気について知識を付ける(菌の臨床的意義は最低限必要です)。
何事もトレーニングが必要ですので、少しづつ増やして行きましょう。
4.プレパラートは大切に
当院は1ヶ月ほど標本の保存をしています。経過観察や既往歴にも対応できますし、培養結果が返ったあとに再確認することでグラム染色の技能を高めています。
あ、あの標本を取っておけば良かった・・・何て機会も少ない方だと思います。
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