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2014年9月12日 (金)

カルバペネム耐性腸内細菌は五類感染症になるぜよ

明日から高知であるHICA医療関連防止セミナーに伺います。初めての会なので不安とわくわく感の錯綜です。

http://www.jsmi.gr.jp/sterilization/HICA2014kouchi.pdf

それはそうと9/9の官報でカルバペネム耐性腸内細菌感染症が感染症法での届出疾患になることが報告されていました。実際には9/19から発生した感染症は届出対象になります。経緯はここが参考になります。(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044962.html

他には、水痘(入院を必要とするもの)、耐性アシネトバクター感染症、播種性クリプトコッカス症の4つが追加になります。
詳細は http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html
Photo 9/12付で厚労省のHPに掲載されています。

定義は「メロペネムなどのカルバペネム系薬剤及び広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌科細菌による感染症である。」と記載されています。今回はメロペネム耐性が一つのポイントになっています。

詳細な基準としては、検出される検査材料別に分けられ、血液や髄液のような無菌材料は全てになりますが、喀痰や尿などは医師より感染症と診断されたものになります。
こういうのは発生数は少ないですが対象となります

1
感受性の基準は以下の通り

ア)MEPMのMICが2μg/ml以上、または阻止円が22mm以下となるもの。

または

イ)IPMのMICが2μg/ml以上(阻止円が22mm以下)のもので、かつCMZのMICが64μg/ml以上(阻止円が12mm以下)のもの。

IPMは検出感度が悪いことが以前から指摘されていますので今回はCMZとの組み合わせで少し検出感度を上げることになりそうです。MICや阻止円はCLSI基準でも新しいものが採用になりMICは2μg/mlでカットオフにされています。

少し疑問点が出てくると思います。

・MBLやKPCのような耐性機序の確認は必要なのか?
→カルバペネム耐性腸内細菌はMBL、KPC、OXAといった大きく異なる酵素を持ったものが混在しているため1つの方法では耐性菌かどうかのスクリーニングは困難である。また中小規模の施設ではPCRでの確認も困難であるので問われていない可能性がある。カルバペネムのような最終的な治療薬に対して耐性化した腸内細菌が問題になる。
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来年からCLSIに掲載されるCarbaNP法はこちら(http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/carbanp-2f1b.html

・MICが2μg/ml以下のカルバペネマーゼ産生菌もいるのでは無いのか?それは対象にならないのか?
→確かに耐性機序を調べる目的でスクリーニングするとMICが2μg/ml以下のものは検出されることがあります。現段階では耐性化どうかが焦点になっているので耐性機序については確認されても定義を満たさなければ報告対象にはなりません。ただし、それで感染対策をしなくて良いのか?というものでは決してありません。感染症法の届出疾患と治療と感染対策は少し別に考えていかなければなりません。

・カルバペネムの感受性は測らないといけないのか?
→測ると殆ど感受性になるので、初めから測らない施設もあると思いますが、測らないと引っかかりません。今や15年前は認知度が低かったESBL産生腸内細菌は毎日のようい見るようになりました。腸内細菌は健常者にも多く存在し、カルバペネム耐性菌の多くはプラスミドにより耐性遺伝子の授受が行われます。緑膿菌のMBL産生菌の場合は日和見感染菌であり、腸内細菌には遺伝子を授受しにくかった傾向もあり伝播は院内でしてしまうことが多かったのですが、腸内細菌はそのようにはいきません。少し危機感を持って対応するためカルバペネム耐性かどうかはしっかり把握する必要があります。

・MICが2μg/mlを超えるものであってもカルバペネマーゼを出さないものがあるのではないか。
→確かにグラム陰性桿菌の中にはβ-ラクタマーゼを多量に産生(ペリプラズムの部分に酵素を多量に貯留することが指摘されています)するものがあり、カルバペネマーゼを産生しなくても2μg/mlを超えるものは散見されます。スクリーニングをしても例えば変法ホッジ試験でも陽性反応に出てしまい判定が難しくなります。

・多剤耐性緑膿菌(MDRP)との関係はどうなるのか
→確かにMDRPの基準にIPMのMICが16μg/ml以上というのがあります。これとは少しというか大きな差があります。今回、基幹定点報告から全数把握に変更される耐性アシネトバクターも同じですが、腸内細菌の方が検出頻度も高くより厳しい基準になっているのかもしれません。

全てが捕まらないかもしれないが、どこかで基準を決めて今後蔓延しないように監視すること、大きな病院へ精査が偏ることなく地方衛生研究所でもしっかりと精査が可能になるように法整備をすることが目的とされているように思います。

3 CLSIカルバペネムワーキング資料より転載。

日本では微生物検査室がしっかりと検出し、感染防止対策に貢献していることもあり耐性菌は他国より少ないことも考えられています。しっかりと日常から耐性菌の検出を行うことは大切ですが、より微生物検査室にかかる負担が大きくなり、国もその辺はしっかりとフォローして欲しいと思います。

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グラム陰性菌」カテゴリの記事

コメント

師範手前様

遅ればせながら厚労省ホームページを拝見しました。早速検査部内に情報提供しましたが・・・
IPM≧2、CMZ≧64となると、当院にお住まいのEnterobacter属の中に、本基準に合致してしまうものが散見されます。おそらくβラクタマーゼ(AmpCと思われますが)の過剰産生菌と予想しております。となると、かなりの数コメント付けて報告することになりそうです。測定機器のせいでしょうか?師範の施設はどうでしょうか?また、CMZをCREの判定に用いている理由が分りません。ご教授願います。

投稿: ゆうがぱぱ | 2014年9月16日 (火) 17時45分

ゆうがぱぱ様。

色々なことがありますが細かいことは恐らくこの届出には関係は無く、単純にどこかのポイントで切ってどの程度あるのか動向を見て行くことが主旨となっているのでは無いでしょうか。

確かにEnterobacterのようなAmpCHypの場合はIPMのMICが2を超えるものがあると思いますが、そうそうは出てこない訳で。また中にはMBLも混在している可能性もあり届出自体はそれほど問題では無いかと思います。カルバペネマーゼ産生菌かどうかを問うものでは無く、カルバペネムに対してある一定基準を満たしたものを報告することになりますので、耐性菌蔓延の監視にもなることを期待しているのだと思います。

MHTですが、ご存知の通り偽陽性がありこの点については精査はPCRを除いて完璧なものはありませんので、どこの施設でも出来るかどうかを考えた場合は採算度外視の大学しか対応が出来ないことが予想されます。それでは全てできないので法律を作り保健所でも出来る(させる)ようにする意味もあるかと思います。

Proteusの場合はIPMのMICが4まで上がるものが散見されますし(感受性の限界)。腸内細菌のくくりで行くと難しいところもあります。

Enterobacterもそうですが、E. coliやKlebsiellaのような日本で検出頻度の高いCREについて対象にすることは大切です。その場合はCMZがRになる機会も多く、IPMの検出に加えて判断材料とするのは間違っていないとは思います。また、全てが正しいとは言えません。

投稿: 師範手前 | 2014年9月17日 (水) 19時27分

師範手前様

丁寧な解説ありがとうございます。

今後の対応については思案中ですが、現状ではMEPMを、将来的にはFRPMなどをCRE報告基準の材料にしようと思っています。
これからも情報提供よろしくお願いします。

投稿: ゆうがぱぱ | 2014年9月18日 (木) 18時13分

ゆうがぱぱ様

ありがとうございます。
つけくわえて言うのであれば、FRPMはCREを捕まえやすくするためのスクリーニング薬剤であると思いますが、あくまでも酵素産生の有無を見るためのツールにしかすぎないので、今回の感染症法の考えとは異なることになります。

例えば、MEPMで規定の数値を満たしたがFRPMで満たさない場合で届出をしなかった場合は罰則が生ずると思います。一応、その辺は最寄りの保健所と相談下さい。
ご存知とは思いますが、FRPMも良いスクリーニング薬とは思いますが、その検討については2年くらい前から色々な報告者がしています。感度は100%では無く、例えば日本での検出例は少ないですがOXA-48では偽陰性になることもあります。特異度は100%では無いので偽陽性も多く出てきます。
J. Clin. Microbiol. 2013, 51(6):1881

まだ、EUCASTやCLSIでも推奨されたものでは無くエクスパートオピニオンに当たる状況です。EUCASTについては耐性菌の動向もありますが、今はテモシリンを使われていると思います。
EUCAST guidelines for detection of resistance mechanisms and specific resistances of clinical and/or epidemiological importance Version 1.0 December 2013

日々進歩しておりついて行くのがやっとですね。

投稿: 師範手前 | 2014年9月18日 (木) 18時46分

師範手前様

いつも(ではありませんが)道場に通わせていただいております。
今回の対応に関してですが、
私の施設で使用しております自動機器の判定基準が未だにM100-S19です。
(カルバペネムの感受性BPは4μ/mlです。)
今回の対応に合わせようとすると、
MICが2or4と出た場合は感受性と報告しているにもかかわらず「カルバペネム耐性腸内細菌なので届出を・・・」という矛盾した報告になってしまいます。
メーカーにバージョンアップをお願いしてますが梨のつぶてです(皆さんのところでもそうでしょうか??)。
菌種や耐性機構を考える以前の問題ではありますが、
皆様おっしゃるようにどこかのポイントで切るしかないのでしょうか・・・。

投稿: よしゆき@見習い | 2014年9月25日 (木) 15時49分

よしゆき@見習い様

判定基準が前のものをお使いですか。
当院もまだ以前のパネルを使用しているものもあるため耐性の判定は前のもので機械は出してきます。
当院は全て目視し、実際の判定と照合をしてから結果入力をして報告するようにしていますので今のところ問題は発生していませんし、MICの低いCREも検出することがあります。
おそらく新しい基準のパネルはメーカーごとに置いていると思いますのでパネル変更するか、部門システム側で数値変換や警告が出るようにユーザー側で少し弄ることで対応できそうですが如何ですか?

今回の感染症法の名称にカルバペネム耐性という名前があり、その定義がしっかり明記されているため、自施設で感受性と判定されようが届出は必要です。
CLSIの判定には微生物の耐性メカニズムも入ることがあり、以前から感受性の値ですが耐性と変換してきたものもありますし、以前は感受性でしたがBPの見直しで耐性になってしまったものも多くあります。CLSIのS19をお使いでしたらESBLの基準も旧基準と思いますが如何でしょうか?
問題はあり、BPパネルで旧パネルを継続使用している場合ですがMICが4が最低ラインの場合は漏れてくることはあります。この場合でMIC4に発育してきた腸内細菌は届出対象になると思います。

法律で縛っていますが少々の漏れは出てきますが、基準が異なるため漏れることについて罰則は無いと思います。しかし、法律が変更されたことに遵守する必要性があることを検査室から上長に伝え、施設として必要な措置(例えば自動機器を更新するとか、変更するとか)を取ることを検討するのは必要では無いでしょうか?微生物検査を担当して情報入手されていますので、伝え方はありますが、しっかりコメントすることが責務と考えています。

投稿: 師範手前 | 2014年9月27日 (土) 17時37分

以前からこちらのブログの記事にはお世話になっておりましたが、本日初めてコメントさせていただきます。

本記事の内容と若干ずれる点があるかとは思うのですが、Proteus属の菌に関して、カルバペネマーゼ産生以外のメカニズムでIPMのMIC値がMEPM、DRPMに比較して高く出てしまう株が存在するということが言われております。

この件に関して、実際私の検査室でも多くの株がIPMに対して「I」の結果(つまりMIC値が2ug/mL)を示しておりますが、上司から「Proteusはもともとそういう傾向があるから、報告の際はSに変えて報告するように」と教育されてきました。(ProvidenciaやMorganellaも同様です)

しかし個人的にこれには違和感を感じております。
カルバペネマーゼ産生以外の原因でも、菌の性質としてIPMが耐性寄りの結果を示すのであればそれはそのまま報告すべきなのでは?と思ってしまいます。
それとも検査上は(すなわち in vitroでは)I または R の範囲に入りがちだが臨床上は効果があるため S に変えるべきものなのでしょうか。

その上司に訪ねても、本人も講習会?等で得た知識であり、本質まで理解できているわけではないためわからないとのことでした。

もしこの件に関してご存知の事があれば、ご教示いただきたく存じます。
何卒よろしくお願いいたします。

投稿: Q | 2015年11月18日 (水) 23時18分

Q様

コメントありがとうございます。悩ましいことですよね。

ご存知の通り、ProteusやProvidencia、MorganellaのようなPPA(フェニルピルビン酸)産生菌→検査ではIPA(インドールピルビン酸反応)陽性 菌の場合はIPMのMICが偽高値になります。

そのため、PPAの影響を受けにくいMEPMの判定を考慮して結果を出す必要があります。カルバペネマーゼ産生菌があまり出無いので問題にならないため、CLSIではMICが上昇しても感受性で返して良いということになっています。

とは言え、判定を返して欲しいと言われると返したくなりますEUCASTには下記の内容が記載されています。

Low-level resistance is common in Morganella spp., Proteus spp. and Providencia spp.

どうしても気になる場合はカルバペネマーゼが無いことを確認することが必要と思いますが、MEPMのMICを見ながらで十分だと思いますが。

Journal of Medical Microbiology (2012), 61, 1270–1279にはカルバペネマーゼを出さないけどカルバペネムが耐性になるよ という論文があります。これを参考にしてみてはどうでしょうか。

色々な腸内細菌について記載があります。

如何でしょうか。もう少し突っ込んだ内容が必要でしょうか。

投稿: 師範手前 | 2015年11月21日 (土) 00時27分

師範手前様

ご返答ありがとうございます。
とりあえずはMEPMの測定結果を見てカルバペネマーゼ非産生であることが推測できればSとして返しても何も問題なさそうですね。
これまで少し不安に思いながら結果を返していたので、大変助かりました。

ご紹介いただいた論文も是非、目を通してみようと思います。

これからもこちらの情報参考にさせていただきますね。

投稿: Q | 2015年11月21日 (土) 22時01分

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