カルバペネム耐性腸内細菌は五類感染症になるぜよ
明日から高知であるHICA医療関連防止セミナーに伺います。初めての会なので不安とわくわく感の錯綜です。
http://www.jsmi.gr.jp/sterilization/HICA2014kouchi.pdf
それはそうと9/9の官報でカルバペネム耐性腸内細菌感染症が感染症法での届出疾患になることが報告されていました。実際には9/19から発生した感染症は届出対象になります。経緯はここが参考になります。(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044962.html)
他には、水痘(入院を必要とするもの)、耐性アシネトバクター感染症、播種性クリプトコッカス症の4つが追加になります。
詳細は http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html
詳細は http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html
定義は「メロペネムなどのカルバペネム系薬剤及び広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌科細菌による感染症である。」と記載されています。今回はメロペネム耐性が一つのポイントになっています。
詳細な基準としては、検出される検査材料別に分けられ、血液や髄液のような無菌材料は全てになりますが、喀痰や尿などは医師より感染症と診断されたものになります。
こういうのは発生数は少ないですが対象となります
感受性の基準は以下の通り
ア)MEPMのMICが2μg/ml以上、または阻止円が22mm以下となるもの。
または
イ)IPMのMICが2μg/ml以上(阻止円が22mm以下)のもので、かつCMZのMICが64μg/ml以上(阻止円が12mm以下)のもの。
IPMは検出感度が悪いことが以前から指摘されていますので今回はCMZとの組み合わせで少し検出感度を上げることになりそうです。MICや阻止円はCLSI基準でも新しいものが採用になりMICは2μg/mlでカットオフにされています。
少し疑問点が出てくると思います。
・MBLやKPCのような耐性機序の確認は必要なのか?
→カルバペネム耐性腸内細菌はMBL、KPC、OXAといった大きく異なる酵素を持ったものが混在しているため1つの方法では耐性菌かどうかのスクリーニングは困難である。また中小規模の施設ではPCRでの確認も困難であるので問われていない可能性がある。カルバペネムのような最終的な治療薬に対して耐性化した腸内細菌が問題になる。
来年からCLSIに掲載されるCarbaNP法はこちら(http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/carbanp-2f1b.html)
・MICが2μg/ml以下のカルバペネマーゼ産生菌もいるのでは無いのか?それは対象にならないのか?
→確かに耐性機序を調べる目的でスクリーニングするとMICが2μg/ml以下のものは検出されることがあります。現段階では耐性化どうかが焦点になっているので耐性機序については確認されても定義を満たさなければ報告対象にはなりません。ただし、それで感染対策をしなくて良いのか?というものでは決してありません。感染症法の届出疾患と治療と感染対策は少し別に考えていかなければなりません。
・カルバペネムの感受性は測らないといけないのか?
→測ると殆ど感受性になるので、初めから測らない施設もあると思いますが、測らないと引っかかりません。今や15年前は認知度が低かったESBL産生腸内細菌は毎日のようい見るようになりました。腸内細菌は健常者にも多く存在し、カルバペネム耐性菌の多くはプラスミドにより耐性遺伝子の授受が行われます。緑膿菌のMBL産生菌の場合は日和見感染菌であり、腸内細菌には遺伝子を授受しにくかった傾向もあり伝播は院内でしてしまうことが多かったのですが、腸内細菌はそのようにはいきません。少し危機感を持って対応するためカルバペネム耐性かどうかはしっかり把握する必要があります。
・MICが2μg/mlを超えるものであってもカルバペネマーゼを出さないものがあるのではないか。
→確かにグラム陰性桿菌の中にはβ-ラクタマーゼを多量に産生(ペリプラズムの部分に酵素を多量に貯留することが指摘されています)するものがあり、カルバペネマーゼを産生しなくても2μg/mlを超えるものは散見されます。スクリーニングをしても例えば変法ホッジ試験でも陽性反応に出てしまい判定が難しくなります。
・多剤耐性緑膿菌(MDRP)との関係はどうなるのか
→確かにMDRPの基準にIPMのMICが16μg/ml以上というのがあります。これとは少しというか大きな差があります。今回、基幹定点報告から全数把握に変更される耐性アシネトバクターも同じですが、腸内細菌の方が検出頻度も高くより厳しい基準になっているのかもしれません。
全てが捕まらないかもしれないが、どこかで基準を決めて今後蔓延しないように監視すること、大きな病院へ精査が偏ることなく地方衛生研究所でもしっかりと精査が可能になるように法整備をすることが目的とされているように思います。
日本では微生物検査室がしっかりと検出し、感染防止対策に貢献していることもあり耐性菌は他国より少ないことも考えられています。しっかりと日常から耐性菌の検出を行うことは大切ですが、より微生物検査室にかかる負担が大きくなり、国もその辺はしっかりとフォローして欲しいと思います。
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