CarbaNPテストをしてみました
先日、K大学のT先生とM先生、I先生のご厚意でCarbaNPテストをする機会を頂きました。
カルバペネムは絶対的な抗菌活性を示す抗菌薬として位置づけされることが良くあります。特にグラム陰性桿菌に対しては殆ど感受性を示すので最終兵器として臨床現場でも使われることが多いと思います。また、一般的にはグラム陽性菌+グラム陰性菌+緑膿菌+嫌気性菌の複合感染菌が疑われたり、重症患者であったりと使う場面を限って使われる機会も増えてきました。
1990年代からカルバペネマーゼを検出するためのスクリーニング法が色々と出てきました。
・チオール化合物を利用し阻害反応を見るもの:2-MPA法、SMA法
・キレート剤で亜鉛活性を無くす方法:EDTA法
・カルバペネム活性の低下を肉眼的に観察するもの:変法ホッジ試験
いずれもディスク拡散法を利用した方法です。
変法ホッジ試験は数年前からCLSIのドキュメントにも記載されているスクリーニング方法で、E. coliのATCC株を用いて、ミューラーヒントン培地とカルバペネムのディスクを使い、カルバペネマーゼの産生を見るものです。クローバーリーフ試験とも言い、カルバペネマーゼ産生菌であれば阻止円が歪みクローバー状の切れ込みができると陽性と判定する方法です。
感度と特異度が90%を超えるため良いスクリーニングには向いているとされています。
ただし、中央に置くディスクはエルタペネム>MEPM>IPMの順に検出率が向上します。エルタペネムは現在日本で使用されていない抗菌薬ですが、ディスクは既に販売されていますので購入することは可能ですなようです(すいません調べていません)。
最近は色々な相談を受けて実際してみますが、MBL産生菌であれば綺麗に陽性反応を示しますが、ESBLやAmpCが過剰産生された菌に関しても陽性反応が出てしまう傾向があるようです。少し技術が無いと判定が難しくなります。
複合酵素を同時に産生している場合は偽陽性、偽陰性となる例も出てきます。偽陰性については亜鉛含有量を増やすと良くなるという報告もあるようですが市販培地を使うのであれば対応が困難になりそうです。
先日、CLSIの来年度のドキュメントの概要が臨床微生物学会のHPに掲載されていました。カルバペネマーゼ産生菌についてはCarbaNP法の掲載が決まったようです。
(http://www.jscm.org/kokusai/2014_clsi.html)
(http://www.jscm.org/kokusai/2014_clsi.html)
少し調べてみました。フランスの研究者であるNordmanさんとPoirelさんがカルバペネム耐性菌を見つけるスクリーニング方法として考えた方法です。反応原理は極めてシンプルです。(EID,vol18,No.9,2012,1503-1507)
pH指示薬であるフェノール赤による色の変化でカルバペネマーゼの産生を確認するものです。細菌検査をされる方であれば、身近にTSI培地というものがありますがあの色の変化です。陰性は赤のまま、陽性は黄変するのを肉眼的に観察します。
菌は1白金耳に溶菌剤を混和して30分間インキュベーション。上清みを採取して指示薬+イミペネムを混合した液体と混和して2時間以内に判定をするものです。
反応時間が2時間以内と書いていますが、酵素活性が高いものは5-15分もあれば十分に見ることができます。また、1度に複数検体の処理をしても手間はかからないこともあり大量処理も可能です。
ムコイド株の場合は反応が遅く出ることがあり2時間は必要であるとか、カルバペネマーゼの種類によっては偽陰性になることがあるという報告もありますが、今のところ日本で検出率が高いIMP型の場合はESBLやAmpCが混合していても検出可能なようです。(Antimicrob. Agents Chemother. September 2013 vol. 57 no. 9 4578-4580)
・遺伝子検査の場合は機材の導入や技術が必要になる。遺伝子の存在=耐性とは限らない。
・変法ホッジ試験も少し熟練技が必要。また複合酵素産生株は判定が難しくなる。偽陰性もある。
・SMA法はMBLの特異的な検出法であり、KPCの検出には向いていない。
どの臨床検査も100%の成績を保持することは困難であり、色々な検査法を検討してより確実な結果が出せるようにしていくべきだと思います。
CarbaNP法ですが、実際やってみての感想です。少しだけコツがありますが、これなら細菌検査室がある施設であれば可能かと思います。皆さんも機会があればトライしてみてください。
本日は誕生日に更新できて光栄です。皆様、ブログを今後ともご愛顧下さい。よろしくお願いします。
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