平成26年度兵庫県臨床検査技師会 微生物検査研修会 終わり
昨年に続き地元で講演する機会を頂きました。
昨年は初級者からベテランまで幅広く網羅する内容でしたが、今回は初級者のみを対象として菌の分別を中心に話をしていきました。
最近は世代の移り変わりもあり、自分が班長をしていた時代とはメンバーも様変わりしてきました。細菌検査をする上で必要なのは、スキルや機器も必要ですが最も大切なのは経験です。実際、遭遇したことが無い菌種と対面した時は本当に解らないことが多いと思います。
幸い、当院は検体数も年々増加してきて市中病院ですが年間約20,000件(血液培養抜き)処理をしています。そのためか色々な症例に出会います。昨日は色々とグラム染色像を交えながら、鑑別時のコツやスナップショットツールとして使っている患者さんの情報の取り方についても推論を交えて細かく解説していきました。あっという間の2時間でした。
グラム染色は現在61点の保険点数が付いています。平成20年度の保険点数改訂では20点でしたが今や約3倍の保険点数になっています。平成26年度も消費税率アップにも関わらずグラム染色の点数はアップしました。これは熟練した高い技術が評価された結果と言われています。今は呼吸感染症のガイドラインにもグラム染色について細かく記載されるようになりました。
グラム染色は高い機器も必要ありませんので、どこの病院でもスペースさえあれば可能です。試薬代も安く、複数菌であっても菌種推定は可能ですし、複数人で情報共有化することも可能です。一種のコミュニケーションツールにもなっています。
まあ、TV番組に例えて言えば、ママチャリで疾走する桐谷さんのようでは無いかと思っています。安価でフレキシブルに、全力で駆け抜けて目的を果たすような感じです。高い高級車で疾走しても渋滞すると自転車の方が速かったりしますよね(昨日は桐谷さんを引き合いに出しどん引きに会いましたが)。
グラム染色は細菌検査や治療方針のある方向性を示すことができるツール(武器?)であるため丁寧に解釈すると非常に有効活用ができます。
ただし、グラム染色で微生物を絞り込むことはある程度可能ですが限界もありますし、当然外れることもあります。期待通りの結果にならないこともあります。
あくまでも推論であり、当たりくじではありませんのでその辺を厳粛に解釈することも考えないといけない場面も多いと思います。特に、臨床現場に出向く機会の少ないラボの人間では当たり前のことですので、出来る限り臨床現場に介入することが肝要です。グラム染色をきっかけにすることも一つの案でしょう。
推論を高めるためには菌の分別をより確実なものにする必要があります。イレギュラーな染色に遭遇してもそれが鑑別できれば、より良いものになると思います。
例えばStreptococcus pyogenes(A群溶連菌)ですが、教科書的にはレンサ状のグラム陽性球菌と記載がありますが、陰性に見えることは無いでしょうか(下段写真の右上)?膿瘍形成を起こした材料では染色像が上手くでないこともあり、赤い球菌で確認される場合があります。レンサ状?と思いきや材料の直接グラム染色では単体もしくはペアで観察される菌として確認されることがあります。良くアトラスなどで溶連菌として紹介される写真は血液培養などリッチな環境で発育した菌の染色像で、それが皆さんの脳裏にイメージ化されている可能性もあります。非日常的な出来事は衝撃であると同時に自分自身の無力さが解ります。1例目では鑑別ができなくでも、2例目以降はしっかり捉えられるように修練を惜しまず学ぶことは必要でしょう。また、そのためには自分の見た染色像と培養結果を照合して次に繋げることも大切です。
昨日は教科書にも載らないようなスライドを多く使用しましたので重宝すると思います。
また何か解らないことがあれば質問頂ければ幸いです。
人間は考える葦である(by パスカル)
良く言ったものですね。
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