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2014年6月30日 (月)

第19回神戸グラム染色カンファレンスの開催

 梅雨の候、皆様方におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
 さて、今回下記の内容にて第19回グラム染色カンファレンスを開催する運びになりました。日常的に感染症診療の一環で行われている『グラム染色』から得られる感染症情報を活用し、どの様に感染症診療へ切り込んでいくのか、医師・臨床検査技師がそれぞれの立場から考え、活発なディスカッションを行おうという新しいスタイルの会であります。

お忙しいとは存じますが、ご出席賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

グラム染色に興味のある方でしたら、医師や臨床検査技師以外の職種でも参加は可能です。

日 時;平成26年7月10日(木)18:50~
場 所;三宮研修センター 6階 605号室
〒650-0002 神戸市中央区八幡通4丁目2-12  
TEL:078-232-0081
http://www.f-road.co.jp/kenshu/access/

参加費 ; 500円

プログラム

司 会 
神鋼病院 感染症科  香川 大樹 先生
住友病院 臨床検査技術科兼感染制御部 幸福 知己 先生

①「急激な背部痛」
神戸市立医療センター西市民病院 総合内科 井上 貴文 先生

②「ありのままじゃダメ ~冷静と情熱の間~」
神戸大学医学部附属病院 感染症内科  浅川 俊 先生

※ 当日は、軽食を用意しております。

写真は先日、便のグラム染色所見で確認したClostridium tertium(またはC. ramosum)。特徴は、菌体は細く、芽胞は卵形で先端にあること。Clostridium tetaniに良く似ているが菌体はやや太め。
Clostridiumtertium2 ×1000
Clostridium difficileは芽胞は亜端在で卵円形なので全然違います。また、菌は太いし。
グラム染色で菌を推定するのは面白いです。ちなみに、喫食歴まで当たりました。
Cdvcm ×1000

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2014年6月25日 (水)

ぐっとくる診察記事とグラム染色

当院でグラム染色所見を確認する場合に行っていることは主に下記の通りです。

・患者のサマリー(現病歴や既往歴、社会歴など)
・身体所見の確認
・検査所見(臨床検査、画像所見など)の確認


医師だと当たり前の行為かもしれませんが、臨床検査技師は検査室が中心の活動であり、現場に立ち会う機会が少ないため、この辺の重要な内容を情報として得ないことが多いのです。

グラム染色を見ていると、推定起炎菌が確認される局面が出てきます。
肺炎球菌のように明らかにこれだろうというものは良いのですが、中々そこまでは自信が無い場合もあると思います。

「グラム染色の結果を急いで欲しい」という要望も多く貰っていますが、そこに診察で得た情報が多ければ多いほど推定起炎菌の情報は出しやすいと思っております。

先日も診察記事に「反跳痛+、筋性防御-」という情報の記載がありました。

細菌検査室の中で「これが意味していることは何でしょうか?」という質問をしましたが明確な答えは返ってきませんでした。当たり前です、学生の頃もそうですが、卒後教育の中でそのような言葉を仕事の一部として使うことは無かったからです。

これは主に腹部の状態を表しているものです。腹痛といっても胆嚢から大腸、穿孔も含めると色々な病気が隠れています。まあ、外科で開腹手術をするとなると確認も出来て早いのですが、そうはいきませんよね。

・反跳痛(rebound tenderness):お腹を押して離した時に痛みが出ること。普通は押している時に痛いのですが、そうでは無く離した時の方が痛いという所見です。これは腹膜刺激症状の一つであり、腹膜まで炎症が波及したかどうか確認するものです。ちなみに虫垂炎の時の反跳痛はブルンベルグ(Blumberg)徴候と言います。

・筋性防御(muscle defence):腹膜の炎症が更に酷く(汎発性腹膜炎)なり、腹部が板のように硬くなるものです。即手術が必要なサインです。

以上より、腹膜炎があることが解りますが、内科的な治療継続をするのか、手術適用かどうかはこれから精査ということになります。

子宮内膿瘍が採取された場合にも、このような所見を確認した上でグラム染色像の確認をします。

400 ×1000

複数菌種が確認され、嫌気性菌を疑うような所見が確認されます。大腸との癒着や穿孔などを考える良い検査結果になるかもしれません。

こういうことを知った上で、診察記事を読んでいるだけで緊張感が高くなりませんか?
普段より会話や記事記載があるが何となくしか解っていないより、このような大事な記載を解釈することもグラム染色を読む上では大切な内容と思います。色々と知るとグラム染色も発展するかもしれませんね。

参考に良く書かれているものとして

・髄膜炎のチェックをしている所見(髄膜刺激症状の確認):項部硬直、jolt accentuation(ジョルトサイン)、ケールニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候など 
>項部硬直:寝転がり首を持ち上げると肩から上がる(顎が胸に着かない)。
>jolt accentuation(ジョルトサイン):頭を振り、頭痛が増強するかどうか確認するもの。

Photo ×1000 髄液Cryptococcus

・腎盂腎炎、水腎、腎結石、腎膿瘍のチェックをしている所見:肋骨脊柱角叩打痛(CVA tendeness)
>こぶしでコンコンと叩く(ダンダンと叩かない)と痛い。尿路系の異常を確認する。
更に興味を深めたい方はねじ子先生の本がお勧めです。本屋の回し者じゃありませんので。

Gbs6002 ×1000 腎盂尿Streptococcus agalactiae

「ねじ子のぐっとくる体のみかた」
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=84798

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2014年6月16日 (月)

ご無沙汰しております

今年度と次年度の計画づくりなどこの時期は忙しく、また梅雨入りに伴って毎年恒例の体調不良も重なりブログ更新が上手くいっておりませんでした。

お会いする方々からブログに対する応援メッセージを頂きますが、最近は催促されたりと色々と迷惑をかけております。また色々と要望なども頂ければと思います。
今週始まる感染症学会でお会いできることを楽しみにしております。
さて、細菌検査は検体を依頼され、その材料中の病原菌を的確に同定して、併せて治療に適した抗菌薬を選んで頂くために感受性検査を報告するのがミッションです。
検査を依頼されて、材料に見合った寒天培地を選択して翌日検出菌をピックアップする。その前にある程度増えた菌はグラム染色で確認が出来るので、依頼されたその日のうちに報告する。こういうプロセスで進めています。
検体が来た場合に、材料の質などもチェックします。それは適切な条件で採取された材料なのかどうかのチェックです。まあ、無いとは思いますが、髄液として頂いた検体を顕微鏡で見ると扁平上皮が沢山あり、複数菌種確認された。つまり、喀痰を示唆するグラム染色像が得られたが、普段見ている像とは違うことに気付きます。こういった場合は、材料が適切に採取されていないことやラベルを貼り間違えて依頼されたなどミステイクが理由の場合があります。しかし、病態によりこのような状況は可能性として0(ゼロ)では無いので、主治医に採取条件を聞いたり、カルテ上で患者の状態を検索したりする訳です。
こんな状況はどうですか?
外来から20歳代前半男性の尿が出てきました。スメアは下記の通りです。

Photo ×1000
通常、年齢、性別、材料から想像するとこんなのが出てくると予想されるので、そのマッチングを行うと思います。
2 ×1000 (N. gonorrhoae)

600×1000 (E. coli)
おかしいなと思い、カルテを除いて採取条件を確認すると、患者さんは下半身の稼働障害がある方でした。寝たきりのため、排尿が満足に行えず尿路感染症を繰り返し、一部尿路変更をしているようです。
そうすれえば、複数菌感染もあり得るし、緑膿菌の可能性も出てくる。
また、閉塞は強い場合などは嫌気性菌の尿路感染症も可能性として残る。人工物留置の場合は閉塞していることもある。
私たちが年齢と材料で判断していると思わぬ落とし穴が存在します。普段と異なる状況がスメアで確認された場合は、そのまま直ぐに報告せずに、一度カルテに目を通してみてはどうですか。培養や判定の条件も少し変える必要も出てくるかもしれません。

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