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2014年5月 4日 (日)

久々の稽古でござる(答え)

先日の稽古の模範解答です。
http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-80c6.html

菌種は以下の通りです。

Streptococcus constellatus
Fusobacterium nucleatum
Prevotella melaninogenica

好気培養で菌の発育は認めず。
よって、3菌種でした。

1)菌の推定
菌は形態的な特徴を考慮すると3つに分類できると思います。

・グラム陽性球菌
小さく、染色性は悪く(たまに陰性に染まる)、連鎖球菌である。
このことから嫌気性グラム陽性球菌の可能性が高い。

・グラム陰性桿菌
①細く、両端が尖っている、染色性が悪い(うまく染まらない)
両端が尖っている菌はF. nucleatumやCapnocytophagaが知られています。頻度としてはFusobacteriumが圧倒的に多く、検体は悪臭を伴っていることを考えるとFusobacteriumの可能性大と考えることができる。

②短く、染色性は比較的しっかりしている
太く、染色性は良い、莢膜様の染色は見られないことから、腸内細菌や嫌気性菌、Haemophilusが推定できる。Haemophilusについては部分的に見られるより、感染を起こすと菌量が極端に増えることが多いので、腸内細菌や嫌気性菌と比べると少し違うように思う。緑膿菌については医療曝露が少ないので可能性はかなり低いと考えることができる。

以上から、S. anginosus+嫌気性菌±腸内細菌と推定できる。

1×1000

2×1000

3×1000

4×1000
2)病気の背景
膿胸の多くは肺炎に伴い発生するもの、外傷により発生するものや胸郭や縦隔の手術後などである。今回は何の医療曝露も無いので肺炎に伴う膿胸で血行性か経気道的な肺炎(誤嚥性肺炎など)から発生したものと考えることが出来る。検体は悪臭を伴うため嫌気性菌の関与が考えられ、誤嚥性肺炎や肺化膿症が起因になった膿胸の可能性を推定します。

3)抗菌薬の選択
β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン、第2、第3世代セフェムで初期治療をすることが多くなります。患者の重症度や緑膿菌が検出されるリスクを考えながら抗緑膿菌作用の抗菌薬まで拡大するのか考えることがあります。今回は重症では無いようで、医療曝露は無いので抗緑膿菌作用を持つ抗菌薬は翌日の培養結果を参照しながら経過を考えます。FusobacteriumやPrevotellaを想定する菌種がグラム染色で見えているのでβ-ラクタマーゼ阻害剤を追加するのですが、ABPC/SBTで十分対応できることが予想されます(緑膿菌が出そうな場合はPIPC/TAZでも可)。セフェムを使用する場合はCLDMやMNZを追加することも検討がいるかもしれません。

治療期間については、複数菌で嫌気性菌が関与しているので、ドレナージをしたり、ドレナージ出来ない場合は胸水の量にもよりますが30日程度必要になりそうです。経口薬では用量が不足するので最初は注射薬による治療が必要です。

膿胸の場合は嫌気性菌が多く関与するので、嫌気性菌に対して活性が無い(アミノ配糖体)、または低い抗菌薬(キノロンの一部)は避ける方が良いでしょう。

膿胸の治療に対するグラム染色の位置づけは高く、鏡検する場合は菌が見えるか見えないかだけでも十分に有用な情報となる。更に、胸水中に存在する白血球は多核白血球なのかどうかコメントするとより有用な情報となる。菌が確認された場合は、菌体の特徴を掴みながら菌種推定することが出来れば良いでしょうが、出来ない場合でも、嫌気性菌を疑う菌が見えるのか、また何菌種存在するのか丁寧に見るだけでも有用な情報となるでしょう。

・肺炎を起こした場合40-60%で胸水が発生する。
・胸水が発生した5-15%で膿胸になる。
・グラム陽性球菌ではStreptococcus anginosus group,Staphylococcus aureusが多い。グラム陰性桿菌ではEscherichia coli,Klebsiella pneumoniae,Pseudomonas aeruginosa,Haemophilus influenzaeなどが多い。
・嫌気性菌は76%の症例で検出される。嫌気性菌だけの膿胸は14%認めている。
・嫌気性菌はFusobacterium、Prevotella、Peptostreptococcusなどが多い。

前述したように肺炎が原因となっていることもあり、喀痰グラム染色所見も参考になりそうですが必ずしも同じ菌種が確認できるとは限らないようです。グラム染色をせずに抗菌薬をブロードなものを選択してしまう場面もあるでしょうが、膿胸の診断治療を考えた上で、抗菌薬投与前に胸水を採取し、グラム染色をするように心がけたいものです。

引用文献
・Clinical Infectious Diseases 2005; 40:915–22
・Clinical Infectious Diseases 2005; 40:923–5
・N Engl J Med, Vol. 346, No. 25,1971-1977
・Thorax 2003;58(Suppl II):ii18–ii28
・European Journal of Cardio-thoracic Surgery 32 (2007) 422—430
・Journal of the Royal Society of Medicine Volume 87 August 1994,466-470

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コメント

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投稿: カルティエ 店舗 | 2014年5月21日 (水) 11時34分

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