2014年4月21日 (月)
2014年4月 3日 (木)
グラム染色を始める貴方に
4月に入り新入生が入って来ました。新社会人として色々な期待を一身にこれから活躍されることと思います。
細菌検査室に配属される貴方、感染症診療を始める貴方、そして異動でグラム染色がなければ診療できない状況におかれた貴方。グラム染色をしたことが無いためにストレスになっていないでしょうか?
グラム染色で何が分かるのか?と考えると答えが浮かばないので慎重になってしまったりしていませんか?先輩から推定菌名や検出が予想される菌名を連呼されて、それがグラム陽性なのか、陰性なのか、球菌なのか、桿菌なのか想像も出来ずに撃沈していないでしょうか。
怖いことは色々ありますが、大事なのは経験です。何も言わずに染めましょう。顕微鏡を覗きましょう。今まで見た事の無い世界が拡がるはずです。
どうしてグラム染色をするのでしょう?
やはり感染症の原因菌を素早く推定することができるからです。慣れてくると病態も把握できるようになってきます。もうそこまで進むとグラム染色無しでは検査や診察は出来なくなると思います。
PCRを使って菌を素早く確実に確認する方法もあるでしょうが、PCRは複数菌を同時に検出できないこともあります。PCRは標的が分かっている場合は有用ですが、標的が定まらない場合はかえって分からなくなることもあります。
POCTを使えば良いじゃないか?と思いでしょうが、POCTも標的が定まらない場合は陽性に成りませんので、検査しても残念な結果と遭遇します。もちろん偽陰性のことも多い。
肺炎球菌尿中抗原が陰性になった肺炎球菌性肺炎の喀痰グラム染色
特に肺炎は色々な細菌が起炎菌に成り得るので、どの菌による感染かをグラム染色で確認することは大切です。合わせて良い喀痰(白血球が多く、扁平上皮が少ない)かどうかの確認をグラム染色で確認することで起炎菌の推定により近くなります。
尿路感染症なんかは一般定性で確認することで診断できるんでは無いか?と思う人も居るでしょうが、尿中白血球や亜硝酸塩還元試験にしても100%の性状ではありません。バルン挿入者は白血球は常に出てきますし、亜硝酸塩還元試験陰性の細菌も居ます。やはりグラム染色は迅速に菌種を特定できる迅速検査です。
尿路感染症の多くは大腸菌に代表される腸内細菌群ですが、腸球菌も一部存在します。腸球菌の場合はセフェムに自然耐性なので、初期治療でセフェムを選択されていると奏功しないことがあります。最初にグラム染色をすることでその無駄な期間を短縮することが可能になります。
皆さん、春はグラム染色の始まりです。グラム染色で良い感染症診療を目指しましょう。
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