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2014年3月31日 (月)

日本薬学会134年会に参加してきました

先日、日本薬学会134年会のシンポジウムで話する機会を頂きました。

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メインテーマは『MRSAをみつめてたたく』~MRSAの実態と対応策~

私は『MRSAの報告時に考えること』というタイトルで話をさせて頂きました。

元々、基礎系の研究者が多い学会だそうで、その中で臨床の話を取り上げる機会が少ないそうで、今回は臨床検査技師という更に貴重な職種として参加することになりました。

学会の規模は非常に大きく、参加者が約1万人だそうです。環境感染学会の8千人も多いなあと思いましたがそれをも凌ぐ学会だそうで、宿泊施設も争奪戦だったと聞きました。

さて、話した内容は下記の通りです。

1.検査室でMRSAをどの時点で推定、または決定して報告しているか?

臨床現場で起こるMRSA感染症のうち、重要な疾患はいくつも存在するが、菌血症(敗血症)は合併症を含めて最重要となる感染症の一つです。

例えば、血液培養陽性となった場合にどのようにMRSAと決定していくのでしょうか。

機械で血液培養陽性のシグナルが鳴ると、まずは培養液を直接グラム染色します。ブドウ球菌は名前の通りグラム染色所見でブドウ状の陽性球菌となります。同じ陽性球菌でもStreptococcusやEnterococcusはレンサ状に確認できるので、この時点でStaphylococcusの可能性が示唆されます。問題はS. aureusかCNSかですが、当院はバクテアラートを使用しているので、S. aureusは好気ボトルで小さい大きな集塊を確認することが多く菌種推定に役立ちます(J Clin Pathol 2004;57:199–201)。培養液はそのまま寒天培地に塗布して発育した集落を同定感受性検査の結果でMRSAと判定します。MRSAの確定はセフォキシチン(オキサシリンは少し感度低くなっている)の感受性を確認することで確認検査は不要です。更に、感受性検査まで待てない緊急度の高い状況ではセフォキシチン含有のスクリーニング培地を用いたり、PCRでmecAの確認をしたりとしています。何事もそうですが、早期に適切な治療を開始することが大切です。

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2.VCMのMICが2μg/mlの株は本当に多く存在するのか?

VCMが2μg/mlの株はVCMが使えないという話がある。これは通常投与量でVCMのAUC/MICが400を下回ると治療効果が落ちるという裏付けからきています(CID,2004; 38:1700-5,AAC, July 2007, p. 2582–2586など数々)。確かに近年のPK/PD理論からそう言えます。VCMのMICが2μg/mlのものがそんなにあるのでしょうか?また年々増加しているのでしょうか(MIC Creep)?

当院の結果ではVCMのMICが2μg/mlを示したものは2012年は12%。2011年は8%なのでVCMのMICは少し分離率が上がっていると思います。ちなみに当院の2012年のAUDは7なのでそれほど多く使っているとは思えません。2013年にはMRSA感染症に対して何例か使用をしましたがVCMで治療成績が悪かったものはありませんでした。感染事例として認められたものは全てMICが1μg/ml。中にはCA-MRSAやPVL陽性株も混在していました。VCMを長期間使用していたので副作用で継続使用出来なかった事例については感受性結果を見ながら代替え抗菌薬で全て治癒しました。

果たしてMIC2μg/mlのMRSA感染症は難治化するのか?ということに対して結論づけることが出来ませんでしたが、今のところ当院ではVCMの初期治療で問題となるMRSA感染症は少ないということは分かりました。
問題はVCMのMICが2μg/mlのMRSAが本当にどの程度存在するのか?です。例えば、Etest法を使うとMICが高く出る、自動機器によって高く検出されるという報告あります(AAC, Dec. 2008, p. 4528,JCM,July 2009, p. 2013–2017など)。

実際、MICが2μg/mlとなったMRSAの感受性をしっかり測り直すと3%しか無かったよという報告もあります。そもそもディスク法だけでVCMの感受性を測定し続ける施設もまだまだあるようですが、CLSIでは既にディスク法のカテゴリーはMICとの相関が取れないので測らないようにとなっていることが知られていない現実があると思います。MRSAの感受性は実際どの方法で実施されているのか?確認をする。特に治療が奏功しない場合には再検討することが必要と考えます。

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3.DAPの感受性は正しく報告されているのか?

日本で一番新しい抗MRSA薬としてダプトマイシン(DAP)がある。この抗菌薬はCaイオン濃度に依存するため、感受性試験においてはCaイオン濃度が正確に保たれている必要があります。ディスク法での感受性は確立されていないので、全てMICの測定により判定を行うことになります。MICの測定は微量液体希釈法のみ推奨されていますが、Caイオンが50μg/ml以上添加されていることが条件になります。こうするとこのために微量液体希釈法を採用しないといけないのか?という難問が出てきます。簡易的にMICを測定する方法にEtest法がありますがMICが低めに出るという報告があります(AAC, June 2006, p. 2126–2129)。低めに出る要素として菌量が少なかったり、寒天培地が合わなかったりするようです。菌量の調整を目視で行う場合にはかなりバラツキがでるので、しっかり濁度計で測定することで少しは改善されるようですが、かなり菌量測定をシビアにしないといけないようです。また、寒天培地はCaイオン濃度がしっかりと添加されているものかどうかの確認が必要で、

DAPのストリップに含有されているCaイオン+寒天培地に含有されているCaイオン≧50μg/ml

ということが前提になるようです。S. aureusの場合はDAPのMICが1管差バラツキが生じるようですので、感受性の判定については問題視されませんが、ただしMIC2μg/mlの以上の株(耐性株)が2μg/ml以下(感受性)と判定されることだけは避けなければいけません。
http://products.sysmex-biomerieux.net/product/pdf/DPC2AG027 

DAPを長期間使用することで菌表面の電荷が変化して耐性化しますが、VCMのようなペプチド系抗菌薬の使用でもその現象は起こるようです。今後も注意深く確認していく必要があるようです。

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4.同一の抗菌薬を使用し続けると耐性化しないのか?

CLSIでは長期間使用をすることで耐性化の可能性がある菌と抗菌薬の組み合わせがあります。例えば、Enterobacterは第3世代セフェム、P. aeruginosaは全ての抗緑膿菌薬、そしてS. aureusはニューキノロンとVCM。VCMの場合は低用量で使用を続けると細胞壁が肥厚してMICが上がることが知られています。CLSIではこのような現象を確認することは必要で、3-4日間に1回程度感受性を確認することと記載されています。当然、奏功する場合は菌も分離されませんが、投与にも関わらず菌が継続して分離される場合は確認をすることは検査として大切でしょう。

他の発表者の方々の内容も新鮮で、やはり同じ内容ですが、少し角度を変えて研究している方々の内容を聞く事は非常に大切だと思いました。まだまだ、話せないことが多いですが、自分が一番勉強できたのでは無いかと思っています。このような機会を作って頂きましたことを幸せに思います。

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ところで、今回は36年ぶりに薬学会が熊本で開催されました。個人的ですが熊本は自分の第二の故郷です。小学生の頃に親の転勤に嫌々ついて行き、地元以外で3年間過ごした土地です。学会の合間を縫って過ごした場所を見てきました。

学会場となった熊本大学は夏目漱石も教壇に立った場所

漱石は旧制第五高等学校の熊本大学(黒髪地区)の英語の先生だったようです。ハーン(小泉八雲)から引き継いだそうです。

Photo_2 夏目漱石 先生の銅像

通った楠小学校

熊本市立楠小学校ですが、33年前となんら変わらない校舎とグラウンドがありました。関西弁を話していて良くからかわれたこと、野球部で先頭打者ホームラン打って賞状貰ったこと、喧嘩をして怪我ばかりしていたこと、木の実やみかんを放り投げて生活指導の先生に怒られたりしたのを思い出しました。元々医療に興味が無かった自分が臨床検査技師になるとは微塵も思っていませんでした。

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熊本城

結局見に行けず。次回トライします。

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神戸から熊本までは新幹線で直通。3時間も掛からないので非常に便利になりましたね。

 

当時は飛行機(B747)で行った思い出があります。

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2014年3月13日 (木)

3月16日は福岡県病院薬剤師会学術大会でお話です

ほぼ1ヶ月間も新規記事の掲載が出来ていませんでした。皆さん申し訳ありません。

言い訳ですが、年度末になると色々と忙しくされている方も多いと思いますが私もその一人でございます。

Facebook版でしたらゆるーく呟いていますので興味のある方はそちらもご覧下さい。

https://www.facebook.com/GramStainGym

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さて、16日は第6回福岡県病院薬剤師会学術大会の中でお話をさせて頂く機会を頂きました。

詳細はこちらで:http://www.minc.ne.jp/kabyoyaku/siryou%20file/140316%20fukuoka.pdf

当然のことながら感染症を適切に治療していくためには医師の器量もあると思います。薬剤師さんと微生物検査技師さんは感染症診療支援を行う上では切っても切れない関係だと思います。

Antimicrobial Stewardship:http://cid.oxfordjournals.org/content/44/2/159.full

全ての事例で当てはまるとは言えませんが、感染症診療の中で適切な治療を行う上で必要なのは原因微生物の特定およびそれに適した抗生剤の選択と治療だと思います。

原因微生物を特定するにしても時間がかかってしまっては良くありません。もし重症になりそうな患者さんが居て、適切な抗菌薬選択を迫られた場合はどうしますか?

尿路感染症であった場合は原因菌が大腸菌のことが多いので、まずは大腸菌を標的とした抗菌薬選択になることが多いと思います。『最近はキノロン耐性の大腸菌が問題になっているから、セフェムが良いんじゃないですかね。』と安易に考えると、腸球菌が原因菌で奏功しなかったという事例はありませんか?腸球菌はセフェムが自然耐性なので抗菌力は期待できませんので、治らないなあと考えて培養出してやっとこさ治療が遷延している理由が分かったりします。

グラム染色愛好家の皆さんならそうはないでしょう。尿のグラム染色をしてグラム陽性の連鎖球菌が見えたら腸球菌の尿路感染症は推定できると思います。ローカルファクターにもよりますが市中感染の場合は殆どE. faecalisになるのでペニシリンが選択されるということになり、前述した治療が遷延する危険性は低くなります。

Raffinosus600 ×尿

じゃ、広域抗菌薬を選択すれば良いじゃないか?と考えてしまうのはあまりにも短絡的な発送です。広域抗菌薬を投与しているのに治療効果が悪いじゃないか・・・。耐性菌の可能性があるので更に広域の抗菌薬、または他の抗菌薬を併用してやれというのは本当の意味で乱用だと思います。確かに、尿路感染症の治療を遷延させる理由として結石などの閉塞機転があったり、水腎症や腎膿瘍があったりと菌と抗菌薬以外の理由もあるでしょうが、最初にグラム染色をしているだけで菌と抗菌薬が原因となっているのでは無いということっは分かりますのでグラム染色をする意義は高まります。

グラム染色は少しだけ時間を貰い確認するだけです、僅か15分ほどで完結します。未だ体験していない方はやってみる、自分で出来なければ検査室に依頼することで治療の選択幅が大きく増えるでしょう。

尿路感染症だけでこれだけのパフォーマンスを得ることが出来ます。

さて肺炎の場合はどう考えますか?尿路感染症と違うのは原因菌が色々ありますので、グラム染色が無ければ、抗菌薬を絞ることは非常に難しいと思います。

皆さんグラム染色を活用して良質な医療を提供していきませんか?

16日はグラム染色を活用して初期治療にどう活かすのか一緒に考えていきたいと思っていますので宜しくお願いします。

Photo ×尿

グラム染色を極めるとこういうのも可能です。

丸いのがE. faecium(ペニシリン耐性)で、楕円のがE, faecalis(ペニシリン感受性)

という究極の鑑別も可能です。

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