3月16日は福岡県病院薬剤師会学術大会でお話です
ほぼ1ヶ月間も新規記事の掲載が出来ていませんでした。皆さん申し訳ありません。
言い訳ですが、年度末になると色々と忙しくされている方も多いと思いますが私もその一人でございます。
Facebook版でしたらゆるーく呟いていますので興味のある方はそちらもご覧下さい。
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さて、16日は第6回福岡県病院薬剤師会学術大会の中でお話をさせて頂く機会を頂きました。
詳細はこちらで:http://www.minc.ne.jp/kabyoyaku/siryou%20file/140316%20fukuoka.pdf
当然のことながら感染症を適切に治療していくためには医師の器量もあると思います。薬剤師さんと微生物検査技師さんは感染症診療支援を行う上では切っても切れない関係だと思います。
Antimicrobial Stewardship:http://cid.oxfordjournals.org/content/44/2/159.full
全ての事例で当てはまるとは言えませんが、感染症診療の中で適切な治療を行う上で必要なのは原因微生物の特定およびそれに適した抗生剤の選択と治療だと思います。
原因微生物を特定するにしても時間がかかってしまっては良くありません。もし重症になりそうな患者さんが居て、適切な抗菌薬選択を迫られた場合はどうしますか?
尿路感染症であった場合は原因菌が大腸菌のことが多いので、まずは大腸菌を標的とした抗菌薬選択になることが多いと思います。『最近はキノロン耐性の大腸菌が問題になっているから、セフェムが良いんじゃないですかね。』と安易に考えると、腸球菌が原因菌で奏功しなかったという事例はありませんか?腸球菌はセフェムが自然耐性なので抗菌力は期待できませんので、治らないなあと考えて培養出してやっとこさ治療が遷延している理由が分かったりします。
グラム染色愛好家の皆さんならそうはないでしょう。尿のグラム染色をしてグラム陽性の連鎖球菌が見えたら腸球菌の尿路感染症は推定できると思います。ローカルファクターにもよりますが市中感染の場合は殆どE. faecalisになるのでペニシリンが選択されるということになり、前述した治療が遷延する危険性は低くなります。
じゃ、広域抗菌薬を選択すれば良いじゃないか?と考えてしまうのはあまりにも短絡的な発送です。広域抗菌薬を投与しているのに治療効果が悪いじゃないか・・・。耐性菌の可能性があるので更に広域の抗菌薬、または他の抗菌薬を併用してやれというのは本当の意味で乱用だと思います。確かに、尿路感染症の治療を遷延させる理由として結石などの閉塞機転があったり、水腎症や腎膿瘍があったりと菌と抗菌薬以外の理由もあるでしょうが、最初にグラム染色をしているだけで菌と抗菌薬が原因となっているのでは無いということっは分かりますのでグラム染色をする意義は高まります。
グラム染色は少しだけ時間を貰い確認するだけです、僅か15分ほどで完結します。未だ体験していない方はやってみる、自分で出来なければ検査室に依頼することで治療の選択幅が大きく増えるでしょう。
尿路感染症だけでこれだけのパフォーマンスを得ることが出来ます。
さて肺炎の場合はどう考えますか?尿路感染症と違うのは原因菌が色々ありますので、グラム染色が無ければ、抗菌薬を絞ることは非常に難しいと思います。
皆さんグラム染色を活用して良質な医療を提供していきませんか?
16日はグラム染色を活用して初期治療にどう活かすのか一緒に考えていきたいと思っていますので宜しくお願いします。
グラム染色を極めるとこういうのも可能です。
丸いのがE. faecium(ペニシリン耐性)で、楕円のがE, faecalis(ペニシリン感受性)
という究極の鑑別も可能です。
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