11月9日、10日と広島県で日臨技中四国医学検査学会が開催されます。
感染制御部門のシンポジウムに呼んで頂き『匠からの提言』というタイトルでお話させて貰います。
http://www.hiroringi.or.jp/~jamt46chushi/
基調講演に感染症医
匠からの提言として
・グラム染色
・抗酸菌検査
・嫌気性菌検査
が盛り込まれています。
一応、サブタイトルに『菌も病気も染め分けろ』というものを入れさせて頂きましたが、グラム染色なので菌を染め分けできるのは当たり前の話なので、匠がなせる技ということで、今回は病態まで踏み込んで介入をするために必要な情報って何か?という臨床現場での経験論を中心に話します。
例えば、グラム陽性球菌を見る場合はある程度、菌の形態的特徴が分かり易いものが多く推定菌は掴みやすいと思います。一方、グラム陰性桿菌はどうでしょうか?
雑誌や参考書によってはグラム陰性桿菌の推定は困難であるとか、できないとか書かれています。本当にそうでしょうか。
検査には可能性と限界が背中合わせであり、可能性は個人の能力や経験により高さが規定されてきます。そういう時はいつもこの言葉が過ります。そう、スラムダンク安西先生の言葉。

臨床検査には全て限界は付き物で深追いするのも怖いですが、推定菌まで特定できるのであれば情報は欲しいものです。
それは培養検査に繋がる、診断に繋がる、抗菌薬適正使用に繋がるからです。
酷く言えば、分かっているのに情報として提供していないのはある意味イジワルかもしれません。提出医と検査者との信頼関係がどれだけ良いものを築いているのかというものもあるかもしれませんが、分かっているものは情報として伝える(またはこちらから状況を伝え臨床症状とマッチングさせる)ことは必要だと考えています。
元に戻りますが、匠の技ってなんでしょうか。
染色して菌を推定して原因菌を予想する。これだけで十分に匠の技なのでしょうか。
菌種が推定できて、その菌による感染を示唆するまでいくと匠の技でしょうか。
恐らくそれはその現場に居る人しか分からないと思います。
たまに、『それは起炎菌でしょうか?』、とか『起炎菌など塗抹で得られる情報で有用なものは何かあるでしょうか?』とか、聞いていて脇汗を搔くような高度の質問が来る場合がありますが、その質問をしているということはそれだけ困っているからでしょう。
やはりその期待には応えてナンボで、その瞬間にだけ匠の技を発揮出来れば良いと思います。
原因菌かどうかの判断材料として貪食(細胞質内に存在する菌体)像というものがあります。良く見ると貪食しているのか、または白血球にくっ付いているだけなのか迷うことがありますよね。匠の技ではありませんが、私がしている技の一つにピントをずらす技術があります。それにより貪食かどうか判断できることが割合多いと思います。
ここで格言;グラム染色は2D(平面)で確認するものではなく、3D(立体)像として確認する。

薄いスライドガラスの中にも厚みがあります。その中まで読めるとグラム染色は一段階ステップアップできていると思います。
スメアは薄いですが入っている臨床情報は多分にあり、スライドガラスから菌の声や患者さんの声が聞こえます。強い訴えであれば薄いスメアも厚みがあるものになり、それをフィードバックすることは十分な情報となるに違いありません。重症であるほど丁寧にスメアを観察して、症例と突き合わせるのがスキルアップの一番の近道だと感じています。
中四国はグラム染色を見る目に長けている技師さんが多いので毎回内容を変えて挑みますが、今回は最後の提言をさせて頂いています。

高い位置からで恐縮ですが、当日は宜しくお願いします。
最近のコメント