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2013年9月27日 (金)

迅速診断キットの選び方

グラム染色と同じく迅速な結果を得るために汎用されているのがイムノクロマト法を原理とした迅速診断キットでしょう。

今は、対象微生物の種類が増えたこと、1つの微生物に対していくつもの商品が市場に出回っていることもあり、一つに絞り難くなっています。

皆さん、ふと疑問に思うことがあるでしょう。

『どこのキットを購入しようか?』

この問題についての攻略本も無ければ、教えてくれる人も少ないので選ぶ場合に困りますね。大よそ下記の理由のどれかだと思います。

・メーカーやディーラーさんが薦めてくれるままに受け取る

・オピニオンリーダーからのお墨付きを頂く

・自分で検討して納得したものを選ぶ

・検出率の高いものを選ぶ

・手技が簡単なものを選ぶ

・安いものを選ぶ

まあ、出来るだけ安く納入できて、検出率が高くて、なお且つ手技が簡単なものに越したことはないのでしょう。

インフルエンザの迅速診断キットなどは現在20種類もあります。本当に困ったもんです。

私の個人的な拘りを述べますと以下の通りになります。

1.感度・特異度が高いもの

2.最小検出感度が高いもの

3.標的となる微生物をしっかり捕えるための抗原抗体反応が起こるもの

4.流通量が確保できて需要が急激に多くなった場合でも入手が確実にできるもの

5.操作が簡便なもの

6.値段は安いに越したことは無いが

1.に関してですがこれは当たり前です。感度と特異度を算出し1番良い場所に落とし所を考えてキットは生産します。また表を渡された場合は必ず比較となる標準データの検査方法やデザインを見ていきます。

2.の最小検出感度はどうでしょうか?インフルエンザの迅速診断キットを例に取るとキットによりバラツキがあり、特にB型の最小検出感度には大きな開きが出てきています。

最小検出感度の比較:Sensitivity of Influenza Rapid Diagnostic Tests to H5N1 and 2009 Pandemic H1N1 Virus.J Clini Microbio 2010;48:2872.

3.は1番拘りたい部分です。エピトープの確認、抗原をしっかり捕えるための抗体が選択されているか?標識抗体は何を採用しているか?金コロイドでもどこの金を採用しているのか?検体の希釈方法は正しいのか?検体希釈液の拡散力は良いのか?などです。 

インフルエンザウイルスのエピトープの選択:Improvement of rapid Diagnosis Kit to Detection Either Influenza A or B Virus Infection.J Vit Med 2006;68:35.

中でもエピトープの確認や標識抗体の種類、検体希釈液の拡散力(これは分解をして確認をします)に要点を置いて検討します。

Photo

4に関しては流通ができなくなったので代替えのキットでお願いしますとか言って勝手に変えられるかのうせいがある。本当に勝手です。自社製品でない場合は年間の販売個数が予め決まっている場合もあり、大流行した場合は流行期にキットが無くなるってことは想定内ですね。

4、6はメーカーやディーラーの協力が無くては成り立ちませんので限界が出てきます。

5.は反応時間のこともありますが、結果が出るのが早いので良いですよと言われても、早い時間であれば検出感度が下がることがある。

このような内容を考えながらキットの購入を検討します。

え!? めっちゃ面倒臭いでしょう。でも、皆さんが家電製品を購入する場合を例にすると、適当に選んでるでしょうか?非常に悩んで購入するでしょう。それと一緒です。患者に良いデータを返すのであればこれくらいは何の苦労もありません。

あまり臨床現場では問題無いのかもしれませんね。現場では検査前確率を上げること方が重要かも知れません。

最近はマイコプラズマ抗原の迅速診断キットが出てきましたね。

・リボテストマイコプラズマ:http://www.asahi-kasei.co.jp/shindan/ribotest/feat.html

特徴:L7/L12の菌種に固有な領域を識別し高感度。感染症で陽性、コロニゼーションで陰性を示す。

・プライムチェック マイコプラズマ抗原:http://www.alfresa-pharma.co.jp/products/poct/poct21.html

特徴:P1抗原の検出。有機複合金コロイドの採用で高感度化

皆さん絞り込みはもうお済みでしょうか?

こういうことを訪ねられると、菌の判定の方がよっぽど簡単で良いわあと思います。

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