グラム染色、合唱
長崎の研修会で少し話をさせて貰いました内容です。
グラム染色の技術を習得する場合に必要なのは個人の努力もそうですが、指導する人がどれだけ上手に教えるかにかかってきます。
勿論、指導者が居ない場合はほぼ独学でそれを行う機会が多いのですが、そこはグラム染色の研修会や感染症セミナーに参加したり、アトラスを見たり、このブログを見たりとしている人は多いはずです。
推定起炎菌の読み方や背景を含めた総合的な所見の読み方は自分すら危ういことが多いのに新人教育なんてもっと難しいはずです。
私は個人的に新人さんを含めた方々には『所見は具体的に声に出して読むように』ということをしています。声を出して読むことで、脳内に残り易いということは受験戦争の時にいやほど教えられたと思います。論文にもなるくらいですので確信できる内容だと思います。
http://www.psychologytoday.com/blog/ulterior-motives/201005/say-it-loud-i-m-creating-distinctive-memory
読むことでどうなるのか?
1.指導者とその内容が共有できる
2.塗抹結果が翌日の培地判定の際に記憶が蘇り、注意して見るようになる(検出率がアップする)
3.翌日培養で発育してくるか不安だけど、それが的中すると自信になる。なんとなく快感(こんな感じです)。
3.については、まとめてみると結局自分の眼がどれだけのもの捉えているか分かります。推定起炎菌の正解率が高い場合は、次に同じ像に出会った場合に正解する可能性を示唆するものになります。
例えば下記のスメアです。由来は筋膿瘍です。
筋膿瘍なんて黄色ブドウ球菌ばかりだろうと思われているあなたはこのスメアは読めないかも知れません。スメアにはグラム陽性球菌が見えます。ブドウ球菌もグラム陽性球菌じゃないか、なのでブドウ球菌で良いじゃないかとなるのですが、プロであればもう少し具体的な解釈が必要なので合唱しましょう。
・グラム陽性球菌である
・一部連鎖状に見えるところがある
・染色性が悪い部分が見える
前にも申しましたが、ちゃんと染色手技が担保されるのであれば、染色性が悪いのは嫌気性菌の可能性が高くなります。
嫌気性菌でグラム陽性のレンサ球菌===Streptococcus anginosus groupの可能性が高い。
ということに辿りつきます。筋肉からS. anginosus?と思うと更に不思議に思うので、このスメアが得られた病態は少し尋常なものでは無いと考えることもできます。S. anginosusは上気道の常在菌なので横隔膜上臓器に何か障害は無いのかなど考察することが必要で、時に歯性感染、頚部膿瘍、脳膿瘍、感染性心内膜炎などは合併症の鑑別に上がってくると思います。
でも探せば普通にあるんですね。勉強が足りませんね。もっと精進します。
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs15010-009-6002-9
皆さん、出来れば声に出して顕微鏡を覗いてみましょう。ただし大き過ぎると変人扱いになるのでご注意ください。
長崎では企画して頂きました諸先生始め、遠いところ足を運んで頂いた受講者の方々ありがとうございました。
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