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2013年5月23日 (木)

時間切れ(兵庫県臨床検査技師会研修会にて)

21日は地元で話する機会を頂き張り切って講演に臨みました。2時間もの時間をたっぷり頂いたのにも関わらず時間切れとなりました。

ストーリーとして

  1.グラム染色の原理と手順

  2.染色が上手くできそうなコツ

  3.鏡検で確認される菌を推定する

  4.グラム染色の感度

  5.グラム染色による病態把握

  6.その他

を考えていましたが、3.までで終わっちゃいました。

最初に聞いたところ、微生物検査室が無いけどグラム染色を実施しているので聞きに来たという方々も沢山居られたようで初歩的な話を中心にして、ゆっくり進めた結果このようになりました。招聘して頂きましたK先生他、関係者の方々にはご迷惑お掛けしました。

グラム染色に纏わる話は技師学校で習っているようで習っていないと思います。私も学生時代はそうだったように思います。卒後教育でもその内容についてガッツリとしているのも無いので恐らく皆さん独学で来たのではないでしょうか。

脱色一つについても奥深く、グラム染色は1に脱色、2に脱色、3,4が無くて、5,に脱色というくらい脱色操作が大切です。そもそも染色操作は、原理は理解されているのかどうかも不明なのでそこから話を進めました。

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肝心なのは菌の推定です。グラム陽性球菌と言ってもブドウ球菌とレンサ球菌で大きく対応が異なるのは前から言っていますが、そんなことは学校では教えてくれません。

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そうなんです。どういう菌が確認されたかどうかで診断もそうですが、使用する抗菌薬が大きく変わります。培養を待って・・・って翌日まで待てないことも多々あると思います。だからグラム染色をするんです。

菌を推定するにはその菌の特徴を掴む事が大切です。人間に個性があるように菌にも個性があります。その個性を見抜いてやることで初めて菌が推定可能になります。敵を欺くにもまずは味方からとは言いますが、まずは菌と仲好くしてその菌がどういうものか考えることが大切です。

染色でどんな風に染まるのか、形は?大きさは?分裂の方法は?などなど個性をパターン化してあげることで菌の的中率は高くなるでしょう。

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この個性を見る場合の注意点は、検査材料により若干形態に変化が生じることがあること。普段、血液培養の像を念頭に置いて他の材料を見た場合は若干違和感が生じることでしょう。少し注意しながら見ることが必要です。

しかし、一部例外はありますが、殆どのブドウ球菌はどの材料からもブドウ状に見える、レンサ球菌はレンサ状に見えます。クラスターの大きさは若干変わりますが1つ1つの菌体に注目もしながら見てあげるのがコツです。

また、当日は少し培養・同定への進め方、結果の解釈についても含めました。

血液培養でレンサ球菌が確認された場合は菌の同定に必要な情報収集をしたり、今後の同定・感受性の方向性を確認することも大切です。

1_2 2_2

そうです。グラム染色はシンプルですが奥が深いのです。

4.から以降はまた話する機会を頂きましたのでご期待下さい。ややベテラン向けですが初級者にも分かり易くしたいと思います。

 

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コメント

恐縮ながら、大変共感を得たので、コメントさせていただきます。
検査技師養成大学で微生物を担当している教員です。
といっても、身分は助手ですし、臨床経験もあまりないまま、異動してきてしまいました。

実習や授業を通じても、学生は抗菌薬を覚えるのは苦手ですし、実習時間も限られていて菌の同定で半期のほとんどが終わってしまう。しかし、卒後の微生物検査の重要ポイントは抗菌薬使用を中心とするものになっていきます。卒前教育と卒後のGapに悩まされながら、できるだけ解決したいと思いながら、歯がゆい毎日を送っています。
と同時に、昨年の実習では腸球菌や腸内細菌科の自然耐性くらいは覚えてほしいなと思い、実習に組み込みました。
今年の実習では、グラム染色アトラスの解説などを改革していこうと思っていますので、そのときにはグラム染色と抗菌薬の関わりについても触れようと思います。
よりよい卒前教育のため、病院の先生方と協力していくことも必要と考えております。

最後に、いつも楽しく拝見させていただいています。
今後とも、いろいろと勉強させてください。
乱文、失礼しました。

投稿: チョコビ | 2013年5月24日 (金) 12時49分

チョコビ様

コメントありがとうございます。学校の先生ですか。
それはお疲れ様です。

MTになりたいと思い、MTの学校に来る人は少ないと思いますが、如何にこの学問を好きになって貰うかが学校の先生の手腕にかかって来ます。母校は国立なのですが、そういう意識が低く、検体をヒトとして扱う学生は少なくて悲しいことも多いです。

さて、学校では何を教えるのか?ですが自動化が進み近代的になってきているので合わせた内容も必要でしょうが、私としては菌の同定を確実に行えるスキルや、簡単な作業をしっかりと覚えさせて頂けるとありがたいです。

例えば無菌操作が分からないとか、ピペッティングがままならない学生さんも見ます。先生のところはそうでないと思いますが、菌の同定をしっかりしてこそ1人前のMTではないかと昔から考えています。

抗菌薬はその次でも良いと思いますが、4年生の特別講義にその辺を組み込んで頂けると分かり易いのかなあとは思います。

昔、母校でTDMの話をしましたがどの程度役立ったか定かではありませんかり基礎医学は偉大です。

これからも立派な後輩をどんどん輩出させて下さいね

投稿: 師範手前 | 2013年5月25日 (土) 01時04分

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