それって結石ないですか?
尿のグラム染色結果で至急対応ってのがたまにあります。
急性腎盂腎炎の場合で症状が重い事は良く経験することでしょう。
尿のグラム染色所見を見る上でポイントとなるのが腸内細菌の分布と菌数、菌種の数です。
尿路感染症では大腸菌から始まって、大腸菌に終わるほど大腸菌感染が多いことが知られています。他には肺炎桿菌や腸球菌もありますが、病態が複雑になるにつれてProteusや緑膿菌の占める割合が増えてきます。病態が複雑になるというのは神経因性膀胱や尿路変更、尿路閉塞があったりとどうしてもカテーテル留置が必要なケースがあります。
このProteusや緑膿菌はカテーテルに関連して出てくる菌として良く知られています。
グラム染色所見ではどう見えるんでしょうか?
Proteusも緑膿菌も集塊状に見えることが多いと思います。理由は分かりません。バルン留置に伴う膿尿のせいでしょうか?菌の外膜の構造上の特徴でしょうか。緑膿菌の外膜は脆弱しているので塊易いと聞いた事があります。
私信でうすが、Proteusと緑膿菌の違いほど、属レベルの菌種を区別しづらいものは無いと思っています。私も良く間違えます。良く見れば菌の太さや集塊の大きさに若干の違うがありそうですが、確信をつくためにそういう時は画像所見を活用したり、医師に『これ結石無いですか?』と聞いたりします。
結石とProteus...何の関係が?
微生物検査をされている方は良く知っていると思いますが、Proteusは尿素分解反応が陽性の菌です。尿路に出来る結石の主成分は尿素ですので尿路結石による複雑性尿路感染症の場合はProteusが関与することが散見されます。
尿にProteusが出てくるのが確実に分かる現象もあります。紫尿バック症候群がそれですよね。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23359394)
Proteusの中でも分離例が多いのはP. mirabilisと思いますが、このP. mirabilisは元々テトラサイクリンを除いてどの抗菌薬も感受性が良いことが知られています。テトラサイクリンに関してはtet遺伝子という能動的排泄機序による耐性化がありますので効かないということです。最近気になる事はこのP. mirabilisのESBL産生菌分離率が上がっていることです。
2002年のイタリアの報告では52%であったと驚異的な数値報告(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC140357/)があります。日本ではどうか?2003年から2004年にかけて中村らが近畿地区調べたところ5%であったと報告(http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800030231.pdf)がありますが、最近の報告では金山らが37.8%であったと報告(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20609568)しています。着実に市中での増加傾向を辿っていますが、P. mirabilisのESBL産生菌はdomesticな拡がりを見せているようで特定の地域や医療施設での分離が多く目立っているようです。
既にESBL産生菌が蔓延しつつあるProteusですが、患者背景に注意しながら治療にあたらないといけないようです。施設内のアンチバイオグラムなどを参考にしながら対策を進めていくと良いでしょう。
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