2013年4月から感染症の届出基準が変更になります
ご存知の方もいらっしゃると思いますが来月から感染症法の届出疾患で基準が一部変更になります。
五類感染症(主にヒトからヒトに感染するもの)のうち侵襲性肺炎球菌感染症と侵襲性インフルエンザ菌感染症の2つが追加となります。また、髄膜炎菌感染症が侵襲性髄膜炎菌感染症へと変更になります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html
さて、『侵襲性肺炎球菌感染症』とは何を指すのでしょうか。今まで基幹定点の施設の場合ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の報告は実施されてきました。これに変わるものになるのでしょうか?答えはNoです。今までの基幹定点で行っていたペニシリン耐性肺炎球菌感染症はそのまま残ります。7日以内に届出が必要になります。
『侵襲性肺炎球菌感染症』とは、侵襲性肺炎球菌感染症のうち血液や髄液から肺炎球菌が検出された症例(確定症例)となります。ますます微生物検査室の役割は重要になってきます。
届出について http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-09-02.html
1.血液と髄液の培養検査で菌が証明された場合
2.血液と髄液のPCRから遺伝子が証明された場合
3.髄液だけですが検体から直接行ったラテックス凝集法またはイムノクロマト法で陽性となった場合
3についてはイムノクロマト法とは何を指すんでしょうかね。尿中肺炎莢膜多糖体抗原検査(NOW肺炎球菌とか)でしょうか。(JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,Aug. 1998, p. 2346–2348)、肺炎球菌細胞壁抗原検査(ラピラン肺炎球菌)のことでしょうかね。はっきり明記されていないので4月に質問したいと思います。保険収載が今後通るという事前連絡でしょうか?少し疑問が残る基準ですね。PCRはこういうのがあります。(Journal of Medical Microbiology (2004), 53, 595–602)
つまりこういうことでしょうか。
これを参考に『侵襲性インフルエンザ菌感染症』は同じことで、侵襲性インフルエンザ菌感染症のうち血液や髄液からインフルエンザ菌が検出された症例(確定症例)となります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-44.html
1.血液と髄液の培養検査で菌が証明された場合
2.血液と髄液のPCRから遺伝子が証明された場合
肺炎球菌にある3の部分は迅速検査が普及していないのかインフルエンザ菌にはありません。
ご存知と思いますが、重症肺炎球菌感染症は小児から高齢者まで幅広く分布しているため、小児に多いインフルエンザ菌感染症と比べて届出例が多くなると思いますし、検査室にかかる責任も大きくなると思います。小児期の肺炎球菌ワクチンとHibワクチンの定期接種も開始されますので当分はこのワクチン効果を感染症の発生事例として統計をとって評価するのでしょう。米国においては既にワクチン接種は定期化され(既に13価ですが)社会的な効果は十分証明されていますし、日本においてもここ数年間は血液培養陽性例は減ったように感じます。
今後問題になるのはこのワクチンでカバー出来ない血清型を有する侵襲型感染症(19Aなど)であったり、ワクチンや感染による抗体産生が弱い血清型(6Bなど)だけになるのでしょうかね。(Epidemiology and Infection,Vol. 138,2010,61-68, Clinical Infectious Diseases 2009; 49:e23–9)
小児では4月から集団保育を新しく開始される方々が増えます。集団保育をすると保育時間に伴って肺炎球菌とインフルエンザ菌の保菌者が増加することが知られています。侵襲性の高い血清型が流行した場合はその曝露を受けて感染症を発症する小児も増えると思います。(小児感染免疫19(4),399,2007,感染症誌 86: 7-12, 2012)
肺炎球菌やインフルエンザ菌を含めて、児の重症化予防のためにもワクチンは積極的に接種して欲しいと願っています。
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