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2013年2月19日 (火)

検査材料の遠心について

グラム染色のお話をしていると遠心操作ついてコメントすることがあります。

微生物検査の中で遠心操作は必要なのか?という疑問があります。遠心機が近くに無い状況でも遠心を省略して良いのでしょうか。遠心した方が菌が集まるので全て遠心した方が良いのでしょうか。考えてみました。

1)塗抹や培養の感度を上げるため

これは遠心で集菌効果を期待し塗抹や培養の感度を上げるためである。代表的なのが髄液培養ですが、髄液のような無菌的な体液検体は材料中に存在する菌が少ないことが多く遠心をすることで感度を上げるようにしている。グラム染色の最小検出感度も10の5乗個/mlから10の4乗個/mlと10倍感度が上がることが知られています。(Journal of clinical microbiology,1982,1025-1056)

ただし、尿は集菌することで周囲の雑菌を検出する可能性も高くなり通常は非遠心検体を用いてグラム染色をする。血液は無菌であるが検体中の菌量は非常に少ないため遠心しても最小検出感度に達しないのでグラム染色では見えないことが多いです。

Photo 尿を遠心すると周囲の雑菌が多く見える(同一検体)

結核菌をはじめとした抗酸菌は感染菌量も少ないので喀痰も遠心して塗抹と培養に用いるようです。

不要な有形成分の除去

上清を抗原検査に用いるため有形成分は不要になる場合は遠心することがある。髄液の迅速抗原検査などがあります。

遠心にはそれぞれ材料の検査目的による違いがあるので何を検査したいのかで考えることになります。そこで覚えておきたいのが遠心する条件は材料や目的菌によって違うことです。

遠心の条件について標準的なものはあるのでしょうか?

遠心の条件については色々あり、遠心時間だけでも上記の文献を参考にすると関節液や胆汁、胸腹水については遠心時間は5分、髄液や透析液は10分必要になります。髄液は5ml採取し1000gで15分間遠心し、3mlは捨て残りの2mlをグラム染色をすると書かれていますが、Manual of Clinical Microbiologyには1500gで15分遠心すると記載があります。まとめてみると髄液の場合は1000-1500gで15分遠心することになります。

また結核菌の場合はどうでしょうか。Manual of Clinical Microbiologyには3000gで15分という記載があります。つまり更に遠心力を高めて集菌する必要があるということです。結核菌は、脂質成分が多く、比重が低い(0.79-1.07)ため、一般細菌を目的とした遠心条件ではしっかりと沈まない可能性があります。結核菌検査の場合は最近では塗抹検査は遠心集菌法で行わないといけないようになっています。

通常の直接塗抹の最小検出感度は10,000個/mlですが、遠心集菌法の場合は100個/mlまで感度アップできることが知られてます。ただし、結核菌の場合は感染の危険性もありバイオハザード対策をしっかりする必要性があります。

遠心機は冷却装置が付いたものでなければならないのはあまり知られていないかもしれません。菌は遠心することで物理的なダメージを受けて死滅することが知られています。更に結核菌検査の場合はアルカリ処理を行うために化学的なダメージを受けるので死滅する菌数は増えます。冷却装置が無ければ遠心で発生した熱によるダメージが更に加わるので更に死滅する菌が増えることが知られています。冷却装置が無い遠心機で20分間遠心した場合には結核菌は40%も死滅したと報告されています。塗抹だけなら良いかも知れませんが、培養まで継続して行う場合は冷却遠心機が必要になります。(PUBLIC HAELTH MYCOBACTERIOLOGY,A Guide for the LevelⅢ laboratoryより)

最近は遠心機を使わずに集菌できる試薬もありますので遠心機が無くても感度を上げることができるようです。

Photo_2遠心集菌法とマグネットビーズ法(蛍光染色法)

 http://www.yashimachem.co.jp/iPadweb/%E6%A5%B5%E6%9D%B1%E8%A3%BD%E8%96%AC/%E6%A5%B5%E6%9D%B1TB-Beads%E8%B2%A9%E4%BF%83%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

たかが遠心、されど遠心。手技にも色々と培ってきた内容が反映されている訳です。

 

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コメント

グラム染色道場をいつも拝見しております、某大学病院で検査技師をしている者です。
教えて頂きたいのですが、胸水、ドレーン排液、など液体検体の遠心時間、回転数などについての文献を探しています。先生がご記述されている文献(Journal of clinical microbiology,1982,1025-1056とManual of Clinical Microbiology)で検索いたしましたが見つからなかったため、詳しい文献情報を教えて頂けないでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、ご指導宜しくお願い致します。

投稿: 原 稔典 | 2014年4月25日 (金) 08時51分

原先生コメントありがとうございます。現在海外でしょうか。

さて、JCMの文献ですが開始ページが間違っていました。1025- では無く、1052-です。
http://jcm.asm.org/content/16/6/1052

Manial of clinical microbiologyですが、7thではp47のTABLE3
結核に関してはp554の下段に記載があります。

胸水に関しては:Thorax 2011;66:658e662. doi:10.1136/thx.2010.157842

腹水に関しては:JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, OCt. 1989, p. 2145-2147 ちょっと遠心条件が凄い。

PD排液については:Peritoneal Dialysis International, Vol. 30, pp. 393–423

が参考になります。

概ね3000rpmで15分です。

投稿: 師範手前 | 2014年4月25日 (金) 15時02分

西神戸医療センター
山本 剛先生御侍史

この度は、突然コメントしたにも関わらず、詳細に教えていただき、ありがとうございました。
また、お礼が遅れたことを心よりお詫び申し上げます。
ちなみに、わたしは、コメント記載当初も国内におりました。
先生が教えてくださった情報をもとに、再度、文献を検索してみたいと思います。
早急な回答ありがとうございました。

投稿: 原 稔典 | 2014年4月30日 (水) 18時19分

原先生 失礼しました。
遠心の条件について根を詰めて討議したことは無いと思いますので検討してみるのも良いと思います。
今後とも宜しくお願いします。

投稿: 師範手前 | 2014年5月 4日 (日) 02時56分

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