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2013年1月17日 (木)

もうすぐ臨床微生物学会

毎年1月末から2月始めにかけて臨床微生物学会総会が開催されます。

今年は24回目の開催で、2月2、3日の2日間にパシフィコ横浜で開催されます。

今回のメインテーマは『多剤耐性菌への挑戦』ということです。

私は一般演題にエントリーすることにしました。

要望演題の『塗抹検査の活用法』ということで誤嚥性肺炎の診断について発表することにしました。この要望演題にエントリーできた兵どもは僅か6名です。グラム染色で有名なN田さんも控えていますよね。今から緊張してきます。

私のテーマは恐らく喀痰グラム染色で誤嚥性肺炎を診断することは永遠のテーマになるのでは無いかと個人的に思っています。日常的にそうじゃ無いかなと思うスメアに出会った時に臨床診断と合致する症例はどれくらいあるのだろうと思っていたのでそれを形にしました。

例えば、誤嚥性肺炎と推定するのはどういう時でしょうか

1000×1000

・嫌気性菌と推定される菌が多く見つかる

・膿性痰にも関わらずGeckler分類で低いグレードとして分類される

・口腔内常在菌と思われる多数菌が見られ貪食像がある

などなど。

今は風説のように誤嚥性肺炎と推定することがありますが一体どうなんでしょうね。自分自身も解釈に困っているので皆さんで意見をして欲しいと思っています。

過去にASMのポスターセッションでRobinson氏が誤嚥性肺炎の診断を下記のように行っています。Cumitechにも載っています。

 ・扁平上皮 10個/視野(100倍)

 ・多核白血球 25個/視野(100倍)

 ・口腔内常在菌 50個/視野(1000倍)

上記を満たした場合に感度79%であった。

当たっているようでどうなんだろうという感触ですね。

今回はこれに対抗するようなデータを提示したいと思いますが、恐らく会場の方は今の私の感触と同じようになるのでは無いでしょうかね。

でもジックリ診ると誤嚥にも種類があり、逆流性誤嚥や肺膿瘍など多彩な染色所見はグラム染色で展開されます。

1

やはりグラム染色なしでは肺炎の診断は語れないのであろう。

皆さん宜しくお願いします。

追伸;小さな夢ですが、今回ではありませんが、この学会の前夜祭としてグラム染色カンファレンスをしてみたいと思っておりますがどうでしょうか。

 

 

 

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2013年1月 7日 (月)

カンジダ食べる

1ヶ月間もブログ更新しておりませんでした。

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。 

年末年始は細菌検査は休むことが出来ないので、当直+αと仕事を頑張っている方々が多いと思います。元々少人数でしている検査室なんか年末年始を海外で過ごすなんて夢のようなことですね。

来月には臨床微生物学会もありますしテンションあげて頑張りましょう。

年末年始は当直体制を引くために検査室もそうですが、診療科も手薄になってしまいます。

普段相談しながら進めているものも気軽に相談ができないため悩む機会も多いと思います。ただし、ルチンワークが少ないのでジックリと考える時間が取れることが年末年始の良いところです。

例えばこんなスメアに遭遇したとします。

Vap2×1000

Vap3_3×1000

膿性痰でカンジダと思われる酵母様真菌の貪食像がキレイに見られた場合ですが、肺炎の原因菌と捉えてしまうのでしょうか。

カンジダは口腔内常在菌ですので口腔内に定着しています。健常者でも定着する菌ですが入院患者の方がその頻度は高くなります。入院患者では内因性や外因性の要因がそれぞれ関与し、長期入院や抗菌薬の長期使用などがその因子に含まれます。宿主の免疫状態もまた理由の一つになります。

そういった菌が膿性痰で貪食がある⇒⇒⇒原因菌?という疑問が湧いてきますよね。

いつも言っていることですが、貪食があるから原因菌であるという推論は正しいのでしょうか。当然、貪食が無くても原因菌として治療しないといけないケースは沢山あります。貪食は生体反応を体外で確認できる、貪食されていないものよりかは貪食がある場合は真の原因菌に近くなることは言えるでしょう。しかし、貪食像=原因菌は必ずしも成り立たないことなのでは無いでしょうか。

参考書や教科書にはカンジダ肺炎は極めて稀な疾患であり、殆どが血行性に肺に病巣を形成することで起こり、経気道感染はさらに稀な疾患になります。なので、膿性痰にカンジダが見えたからと言ってそれが肺炎の確定診断には繋がる事はありません。

カンジダ肺炎の頻度は剖検7725例に対して351例(4.5%)でprimaryな症例は31例(0.4%)しか無かったとあります。31例の中で48%はステロイド投与歴があり、29%は好中球減少(<1000個/μL)があったという報告があります。(Medicine Baltimore.1993;72(3):137-140.)

喀痰でカンジダを確認し治療した場合と治療しなかった場合を比べた場合に死亡率は有意差が無かったという報告もあります。

簡単に言うと、宿主の要因が非常に限られた場合にカンジダ肺炎を起こしやすく好中球減少症や長期間のステロイド投与歴がある、先天性免疫不全症、T細胞リンパ球の抑制状態が持続する病態などがあり、カンジダが膿性痰から検出される場合は一考が必要になるのでしょう。また、広域抗菌薬で治療しても効果が無い(侵潤影の増強、低酸素状態など)もその指標の一つになるでしょう。また、血行性播種を想定し、血液培養やβグルカンの測定も補助診断に用いることもあると思いますが。

検査としては最大のポイントは採取条件になります。吸引チューブによる吸引痰はしばしば口腔内の常在菌を多く反映し、真の下気道感染の原因菌が検出されない場合があります。なので、必要な場合は気管支鏡下採痰や気管支洗浄液によりカンジダを証明することが必要になってきます。Ann Intern Med. 2000;132:621-630.

貪食がある⇒原因菌!?と悩む前に一度採取条件の確認をすることは大切な臨床的意義を産みだすことになると思います。

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